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6 とんだ秘密を知ってしまった……グレアム様は正座です
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「休日にお呼び立てしてすみません、グレアム様」
「いや、ニアからの招待ならいつでも嬉しいよ。今日もお茶菓子をもってきたんだ」
入学式から1週間、土曜の午後にグレアム様をお呼び立てした。お呼び立てである、招待じゃない。どこまで補正がかかってるんだ。
あなたがせっせと私に食べさせようと毎日持ってきてくださったお菓子、日持ちがするので大事に取っておいてありますよ。
追加の証拠ありがとうございます! どうせこれもお祖母様が見たらピンクに見えてるんだろうな。私の目には普通の美味しそうなマドレーヌに見えるのに。
勿体ない……、お菓子は元々好きなので、惚れ薬入りでなければ喜んでいただくんですけど。
「あら、美味しそうなマドレーヌ。ありがとうございます。……アリサ、あなた、マドレーヌが大好物だったわよね、一ついかがかしら?」
「お嬢様……私のような使用人の好物まで覚えてくれているなんて感激です。もちろん、いただいてもいいですよね? ミスト侯爵子息様」
「だっ、だだダメだ! マドレーヌはニアも好きだったろう? ニアに食べて欲しいな」
こんな茶番でそんなに焦らないでくれますかね、これじゃ状況証拠は真っ黒ですよ。
「最近少し……お恥ずかしいのですが、ドレスがキツくなってきてしまって。私を小さい頃からお世話してくれているメイドです。ダメですか?」
目を伏せて実に残念そうに首を振る。淑女にここまで言わせておいて、さらに勧めるなんてのは失礼だ。それを見知らぬ人に分けるのでも無く、ここでお茶を淹れてくれるメイドに……しかも、小さい頃から私に仕えてくれているメイドに渡そうとしているのだ。
何もおかしい事はない。グレアム様がおかしい事をしていなければ。
「そうか……あぁ、残念だけどちょっと生焼けかもしれない。持って帰……」
「グレアム様、おひとつどうぞ。見たところ生焼けには見えません、綺麗な狐色です。さぁ」
「え゛っ?!」
真っ黒状況証拠その2ですね。持参したお菓子を勧めてから生焼け、なんて苦しい言い訳。その上勧めておいて自分は口にしたくなさそうな素振り。
そろそろ詰める所だ。
「そうそう、学友と食べられなかったので、私お祖母様とお茶にしようと思ってクッキーやらフィナンシェやらマカロンやら日替わりでいただいたものを持っていったんですよ。それで、お祖母様って昔は宮廷魔術師だったんですけどね? イチゴも使っていないのに『そんなピンク色のお菓子は食べられない、身体に悪いから食べるのもよしなさい』と言われてしまいまして。——グレアム様? 何をなさっているんです?」
私の話の途中から、テーブルに両手と頭を押しつけて固まってしまったグレアム様に、私はとぼけて返す。
ここまできたらもうしらばっくれられないのだろう。宮廷魔術師、師団に入るのにも厳しい試験と圧倒的な魔力の才能が求められる。
お祖母様の話はした事が無かったけれど、ここまで言えばグレアム様にも理解できたのだろう。
「本当にすまなかった! 俺は、俺はニアの心が離れていくのが嫌だったんだ!」
「何をされたかの所、私まだ口にしておりませんよね。——アリサ」
「ここに」
ティーセットを乗せたカートの下から貰ったお菓子の手付かずの山が出てきた。
それを見たグレアム様が顔色を悪くする。
「グレアム様、私大変怒っておりますの。とりあえず、椅子から降りて同じ格好をしていただけます?」
笑顔で土下座を要求する私に、グレアム様は「はい!」と返事をして即座に床に移った。
「いや、ニアからの招待ならいつでも嬉しいよ。今日もお茶菓子をもってきたんだ」
入学式から1週間、土曜の午後にグレアム様をお呼び立てした。お呼び立てである、招待じゃない。どこまで補正がかかってるんだ。
あなたがせっせと私に食べさせようと毎日持ってきてくださったお菓子、日持ちがするので大事に取っておいてありますよ。
追加の証拠ありがとうございます! どうせこれもお祖母様が見たらピンクに見えてるんだろうな。私の目には普通の美味しそうなマドレーヌに見えるのに。
勿体ない……、お菓子は元々好きなので、惚れ薬入りでなければ喜んでいただくんですけど。
「あら、美味しそうなマドレーヌ。ありがとうございます。……アリサ、あなた、マドレーヌが大好物だったわよね、一ついかがかしら?」
「お嬢様……私のような使用人の好物まで覚えてくれているなんて感激です。もちろん、いただいてもいいですよね? ミスト侯爵子息様」
「だっ、だだダメだ! マドレーヌはニアも好きだったろう? ニアに食べて欲しいな」
こんな茶番でそんなに焦らないでくれますかね、これじゃ状況証拠は真っ黒ですよ。
「最近少し……お恥ずかしいのですが、ドレスがキツくなってきてしまって。私を小さい頃からお世話してくれているメイドです。ダメですか?」
目を伏せて実に残念そうに首を振る。淑女にここまで言わせておいて、さらに勧めるなんてのは失礼だ。それを見知らぬ人に分けるのでも無く、ここでお茶を淹れてくれるメイドに……しかも、小さい頃から私に仕えてくれているメイドに渡そうとしているのだ。
何もおかしい事はない。グレアム様がおかしい事をしていなければ。
「そうか……あぁ、残念だけどちょっと生焼けかもしれない。持って帰……」
「グレアム様、おひとつどうぞ。見たところ生焼けには見えません、綺麗な狐色です。さぁ」
「え゛っ?!」
真っ黒状況証拠その2ですね。持参したお菓子を勧めてから生焼け、なんて苦しい言い訳。その上勧めておいて自分は口にしたくなさそうな素振り。
そろそろ詰める所だ。
「そうそう、学友と食べられなかったので、私お祖母様とお茶にしようと思ってクッキーやらフィナンシェやらマカロンやら日替わりでいただいたものを持っていったんですよ。それで、お祖母様って昔は宮廷魔術師だったんですけどね? イチゴも使っていないのに『そんなピンク色のお菓子は食べられない、身体に悪いから食べるのもよしなさい』と言われてしまいまして。——グレアム様? 何をなさっているんです?」
私の話の途中から、テーブルに両手と頭を押しつけて固まってしまったグレアム様に、私はとぼけて返す。
ここまできたらもうしらばっくれられないのだろう。宮廷魔術師、師団に入るのにも厳しい試験と圧倒的な魔力の才能が求められる。
お祖母様の話はした事が無かったけれど、ここまで言えばグレアム様にも理解できたのだろう。
「本当にすまなかった! 俺は、俺はニアの心が離れていくのが嫌だったんだ!」
「何をされたかの所、私まだ口にしておりませんよね。——アリサ」
「ここに」
ティーセットを乗せたカートの下から貰ったお菓子の手付かずの山が出てきた。
それを見たグレアム様が顔色を悪くする。
「グレアム様、私大変怒っておりますの。とりあえず、椅子から降りて同じ格好をしていただけます?」
笑顔で土下座を要求する私に、グレアム様は「はい!」と返事をして即座に床に移った。
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