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18 最後のお茶会
今日で最後の殿下と2人きりのお茶会だ。最後の晩餐会には一番のドレスを着ていくが、昼間に着るドレスの中でもとびきり綺麗な鮮やかな青に白いリボンとフリルの着いたドレスを着てお茶会に向かった。
イリア様からお借りした宝飾品は晩餐会までお預けなので、せっかくだからと自分で用意していた晩餐会用の宝飾品を身に付けた。アクセサリーは昼も夜もあまり関係無く身に付けられるのでちょうどいい。
自分の髪に合わせた銀の台座の瑠璃をはめたネックレスとイヤリングを身に付け、最後だと思うと少し気合の入ったお化粧をしてもらい、髪も綺麗に結い上げてもらって、お茶会の場に向かう。
今日はいつものサロンの窓を開け放ち、外にテーブルを持ち出して、陽の光の下でランドルフ殿下は待っていてくれた。
見間違いじゃなく、しっかりと笑顔だ。最初からずっと無表情の鉄面皮だったあの方の笑顔を始めて見て、私は思わず胸を抑えた。
息を呑む程美しい。それでいながら、なんて優しい視線だろう。
彼は入口で固まってしまった私に笑顔のまま首を傾げ、自ら私の為に椅子を引いて出迎えてくれた。
いつまでも待たせる訳にはいかないので近付いて御礼を言って腰掛ける。その時に、あのカフスボタンを身に付けてくれているのが見えて、余計に私は変な顔になってしまう。
(嬉しいけれど、何故かしら、なんだか恥ずかしくてたまらなくなってきたわ……)
嘘を吐かなくても穏やかでいられる、という状況はこれまでもあった。それはそれで素晴らしいことだけれど、ここに来てからは『リリィクイン』として競争することが決まっていて、気を張っていたのもある。
だから、こうして素直に、穏やかな空気の中で好意を持った男性と一緒にいるということに……変な照れが出てしまう。
「今日のソニア嬢はとびきり美しいな。瑠璃色の薔薇のようだ」
「……殿下。あの、まだ殿下の笑顔になれていないうちに、そのようなことを言われると……真に受けてしまいます」
「真に受けてもらいたくて言っているんだ。私は、ソニア嬢のそういった表情が見たいようだ」
笑顔なのに、少し意地悪だ。照れているのを見たいだなんて。
頬紅を乗せなくてもよかったかもしれない、と思う程頬が紅潮している気がする。
「……君にもらったカフスボタン、今日も着けているこれだが……」
「はい」
殿下は大事そうに袖のボタンに手を添えて目を伏せた。今日は、ずっと笑っている。
「兄のことを、思い出した。冷たく棺に収まった兄ではなく、笑って私の相手をしてくれていた優しい兄を。……恥ずかしいが、初めて兄が居なくなってから、泣いた」
「殿下……」
何と声を掛けていいか分からなかった。私は祖母が亡くなった時には小さくて、ただただ寂しくて大泣きした記憶しかない。殿下はもしかしたら、兄の死をやっと受け入れたのかもしれない。
「私の気持ちはもう定まった。ソニア嬢、君なら分かってくれると思う。だから、今日は楽しい話をしよう」
また、胸の奥がぎゅっと詰まる。それは私を選んでくれるという意味なのか、兄の死を乗り越えたことである種の人間性を捨てて国に尽くす王になる決意をしたという意味なのか。
前者ならばいいのに、とは思う。けれど、私にそれを口に出す勇気はなかった。
ただ、このお茶会をいい思い出の一つにして欲しいと思う。初めて恋をした相手への、私の素直な気持ちだ。
「はい、殿下。祖母から聞いた異国の話をしてもよろしいですか?」
「それは是非聞きたいな」
うまく笑えているだろうか。大丈夫だ、私は、嘘を吐くのが得意だから。
楽しいお茶会にしようと、私は祖母から聞いた異国の話を素直に口にした。
イリア様からお借りした宝飾品は晩餐会までお預けなので、せっかくだからと自分で用意していた晩餐会用の宝飾品を身に付けた。アクセサリーは昼も夜もあまり関係無く身に付けられるのでちょうどいい。
自分の髪に合わせた銀の台座の瑠璃をはめたネックレスとイヤリングを身に付け、最後だと思うと少し気合の入ったお化粧をしてもらい、髪も綺麗に結い上げてもらって、お茶会の場に向かう。
今日はいつものサロンの窓を開け放ち、外にテーブルを持ち出して、陽の光の下でランドルフ殿下は待っていてくれた。
見間違いじゃなく、しっかりと笑顔だ。最初からずっと無表情の鉄面皮だったあの方の笑顔を始めて見て、私は思わず胸を抑えた。
息を呑む程美しい。それでいながら、なんて優しい視線だろう。
彼は入口で固まってしまった私に笑顔のまま首を傾げ、自ら私の為に椅子を引いて出迎えてくれた。
いつまでも待たせる訳にはいかないので近付いて御礼を言って腰掛ける。その時に、あのカフスボタンを身に付けてくれているのが見えて、余計に私は変な顔になってしまう。
(嬉しいけれど、何故かしら、なんだか恥ずかしくてたまらなくなってきたわ……)
嘘を吐かなくても穏やかでいられる、という状況はこれまでもあった。それはそれで素晴らしいことだけれど、ここに来てからは『リリィクイン』として競争することが決まっていて、気を張っていたのもある。
だから、こうして素直に、穏やかな空気の中で好意を持った男性と一緒にいるということに……変な照れが出てしまう。
「今日のソニア嬢はとびきり美しいな。瑠璃色の薔薇のようだ」
「……殿下。あの、まだ殿下の笑顔になれていないうちに、そのようなことを言われると……真に受けてしまいます」
「真に受けてもらいたくて言っているんだ。私は、ソニア嬢のそういった表情が見たいようだ」
笑顔なのに、少し意地悪だ。照れているのを見たいだなんて。
頬紅を乗せなくてもよかったかもしれない、と思う程頬が紅潮している気がする。
「……君にもらったカフスボタン、今日も着けているこれだが……」
「はい」
殿下は大事そうに袖のボタンに手を添えて目を伏せた。今日は、ずっと笑っている。
「兄のことを、思い出した。冷たく棺に収まった兄ではなく、笑って私の相手をしてくれていた優しい兄を。……恥ずかしいが、初めて兄が居なくなってから、泣いた」
「殿下……」
何と声を掛けていいか分からなかった。私は祖母が亡くなった時には小さくて、ただただ寂しくて大泣きした記憶しかない。殿下はもしかしたら、兄の死をやっと受け入れたのかもしれない。
「私の気持ちはもう定まった。ソニア嬢、君なら分かってくれると思う。だから、今日は楽しい話をしよう」
また、胸の奥がぎゅっと詰まる。それは私を選んでくれるという意味なのか、兄の死を乗り越えたことである種の人間性を捨てて国に尽くす王になる決意をしたという意味なのか。
前者ならばいいのに、とは思う。けれど、私にそれを口に出す勇気はなかった。
ただ、このお茶会をいい思い出の一つにして欲しいと思う。初めて恋をした相手への、私の素直な気持ちだ。
「はい、殿下。祖母から聞いた異国の話をしてもよろしいですか?」
「それは是非聞きたいな」
うまく笑えているだろうか。大丈夫だ、私は、嘘を吐くのが得意だから。
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