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祖父・藤原兼郞は喜ぶ
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長い軽井沢の出張を終え、「明日帰る」と家に電話を掛けると、孫の伸一郎が妻を迎えたという。
半年も前からの事実婚で、4ヶ月前に籍を入れたのだそうだ。
伸一郎は、わしがいくら縁談を持ってきても、眉一つ動かさず、ちょっと艶っぽい女を連れてきても、見向きもしなかった筈だが。
まあ、いい。これで藤原家も跡絶えまい。少し陰気だった我が家も、いくらか明るく華やいでおればいいのだがな………。
─────
家に帰って、初めて嫁の志麻を見た時は、あまりの美しさに腰をぬかすかと思った…。
「お祖父様、お帰りなさいませ」
(天使……?女神……?天国……?わし、まだ死んでないよな?)
「ただいま帰った、"志麻"と言ったかな」
「はい、志麻です。ご挨拶が遅くなり、申し訳ございません。」
「なぁに、わしが留守にしていたからね。この家に不自由はないかね?」
「不自由なんて…とんでもないです。皆さん、よくしてくださって…。幸せです。」
「それは良かった」
祖父として、大事な嫁を気遣って、威厳を持ちつつ優しく挨拶できたと思うが、内心では、心臓がバクバクしておったわい。
(えらく綺麗な顔に華奢な首と肩。それなのに、あの乳……。
なんて事だ。
伸一郎はとんでもない面食いの乳好きだったのか!
道理で縁談に乗り気にならなかった訳じゃ………。
こりゃ寂しい老人の目の保養…どころか目の毒ではないか?う~む。)
「ところで伸一郎、軽井沢の別荘地の転売の仕事を最後に、わしは隠居を決めたから、書斎で今から打ち合わせをしたいんだが。」
「分かりました。」
「志麻、夕食の時にもう少し話させてくれんか?今は伸一郎を借りるぞ?」
「はい、お祖父様」
─────
この3年間の伸一郎の仕事ぶりには、正直、度肝を抜かれる程で、20代にして生前の父親の力量を遥かに上回っていた。
一体どこでどう学んだのか?
もの凄い力を持っているのに妻を娶ろうとしない。実に勿体ない。
それでも望みは捨て切れなかった。
万が一、伸一郎の結婚が決まったら、さっさと引き継ぎを済ませようと、ずっと考えていた。
全て引き継ぎの内容を伝えて、仕事の話を終えた所で、志麻の話題にふった。
「志麻は、とてつもなく美人で、なんとも艶っぽいな。」
「はい、一目惚れしました。」
「わしが生きているうちに、ひ孫の顔は見られそうか?」
「その事ですが、もしかしたら今孕んでいるかも知れません。志麻からはまだ聞いていませんが。」
「おおっ、そうか、そうか。良い事じゃ。大事にせんとな。」
「はい、子が生まれるのは本当に嬉しくて待ち遠しいです。」
「伸一郎がそこまで……。志麻に感謝じゃな。」
「大事な時期に入ったら、志麻に無理をさせられないので、引き継ぎなどの雑務をこなすのに、ちょうどいい時期かも知れません。」
「……そんなにイイのかね?」
「はい、困った事に……。もの凄くイイです。」
「ふ~む。そうじゃろうなぁ……。
まぁ、この機会にせいぜい忙しく働くんだな。伸一郎よ。」
男同士よくわかるぞ、といった表情で、ぽんと肩を叩かれて、伸一郎は返事を返した。
「はい、そうします。」
─────
久しぶりに伸一郎と、(その妻になった志麻とは初めて)、3人で夕食をとることになった。
「お祖父様、軽井沢はいかがでしたか」
「あちらは涼しいというより、いささか肌寒い位じゃった。でも、空気は綺麗だし、気持ちの良い場所だから、今度、伸一郎と二人で旅行してくるといい。」
「まぁ、本当ですか?楽しみです。………でも、暫く先になってしまいそうです。」
「志麻、何故なんだ?」伸一郎が頬を撫でる。
「今日、お医者様に診てもらったのですけど、お腹に子ができました。3ヶ月に入ったばかりだそうです。」
「やったぞ」「でかした!」
伸一郎は、慌ててお腹にそっと触れた。
「この中に、私の子が………?」
「はい、伸一郎様」
「夢のようだな」
「ええ、夢のように幸せです。」
「なんとめでたい事か………。わしは隠居するから、ひ孫とたっぷり遊べるわい。」
「お祖父様、ありがとうございます。」
なんという幸せ。
孫の結婚、美しい嫁、ひ孫の誕生か………。
長生きして良かった。
半年も前からの事実婚で、4ヶ月前に籍を入れたのだそうだ。
伸一郎は、わしがいくら縁談を持ってきても、眉一つ動かさず、ちょっと艶っぽい女を連れてきても、見向きもしなかった筈だが。
まあ、いい。これで藤原家も跡絶えまい。少し陰気だった我が家も、いくらか明るく華やいでおればいいのだがな………。
─────
家に帰って、初めて嫁の志麻を見た時は、あまりの美しさに腰をぬかすかと思った…。
「お祖父様、お帰りなさいませ」
(天使……?女神……?天国……?わし、まだ死んでないよな?)
「ただいま帰った、"志麻"と言ったかな」
「はい、志麻です。ご挨拶が遅くなり、申し訳ございません。」
「なぁに、わしが留守にしていたからね。この家に不自由はないかね?」
「不自由なんて…とんでもないです。皆さん、よくしてくださって…。幸せです。」
「それは良かった」
祖父として、大事な嫁を気遣って、威厳を持ちつつ優しく挨拶できたと思うが、内心では、心臓がバクバクしておったわい。
(えらく綺麗な顔に華奢な首と肩。それなのに、あの乳……。
なんて事だ。
伸一郎はとんでもない面食いの乳好きだったのか!
道理で縁談に乗り気にならなかった訳じゃ………。
こりゃ寂しい老人の目の保養…どころか目の毒ではないか?う~む。)
「ところで伸一郎、軽井沢の別荘地の転売の仕事を最後に、わしは隠居を決めたから、書斎で今から打ち合わせをしたいんだが。」
「分かりました。」
「志麻、夕食の時にもう少し話させてくれんか?今は伸一郎を借りるぞ?」
「はい、お祖父様」
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この3年間の伸一郎の仕事ぶりには、正直、度肝を抜かれる程で、20代にして生前の父親の力量を遥かに上回っていた。
一体どこでどう学んだのか?
もの凄い力を持っているのに妻を娶ろうとしない。実に勿体ない。
それでも望みは捨て切れなかった。
万が一、伸一郎の結婚が決まったら、さっさと引き継ぎを済ませようと、ずっと考えていた。
全て引き継ぎの内容を伝えて、仕事の話を終えた所で、志麻の話題にふった。
「志麻は、とてつもなく美人で、なんとも艶っぽいな。」
「はい、一目惚れしました。」
「わしが生きているうちに、ひ孫の顔は見られそうか?」
「その事ですが、もしかしたら今孕んでいるかも知れません。志麻からはまだ聞いていませんが。」
「おおっ、そうか、そうか。良い事じゃ。大事にせんとな。」
「はい、子が生まれるのは本当に嬉しくて待ち遠しいです。」
「伸一郎がそこまで……。志麻に感謝じゃな。」
「大事な時期に入ったら、志麻に無理をさせられないので、引き継ぎなどの雑務をこなすのに、ちょうどいい時期かも知れません。」
「……そんなにイイのかね?」
「はい、困った事に……。もの凄くイイです。」
「ふ~む。そうじゃろうなぁ……。
まぁ、この機会にせいぜい忙しく働くんだな。伸一郎よ。」
男同士よくわかるぞ、といった表情で、ぽんと肩を叩かれて、伸一郎は返事を返した。
「はい、そうします。」
─────
久しぶりに伸一郎と、(その妻になった志麻とは初めて)、3人で夕食をとることになった。
「お祖父様、軽井沢はいかがでしたか」
「あちらは涼しいというより、いささか肌寒い位じゃった。でも、空気は綺麗だし、気持ちの良い場所だから、今度、伸一郎と二人で旅行してくるといい。」
「まぁ、本当ですか?楽しみです。………でも、暫く先になってしまいそうです。」
「志麻、何故なんだ?」伸一郎が頬を撫でる。
「今日、お医者様に診てもらったのですけど、お腹に子ができました。3ヶ月に入ったばかりだそうです。」
「やったぞ」「でかした!」
伸一郎は、慌ててお腹にそっと触れた。
「この中に、私の子が………?」
「はい、伸一郎様」
「夢のようだな」
「ええ、夢のように幸せです。」
「なんとめでたい事か………。わしは隠居するから、ひ孫とたっぷり遊べるわい。」
「お祖父様、ありがとうございます。」
なんという幸せ。
孫の結婚、美しい嫁、ひ孫の誕生か………。
長生きして良かった。
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