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30話

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 僕はレラの時のように嫌な予感がして家のベットから飛び起きる──

 とても嫌な感じだ。

 その感じを振り切るように【直感】に従って走って行く──


 そして、袋小路に到着すると──

 フィアは血塗れで地面に倒れ──

 レラは剣を突き刺されていた──

 倒れているフィアの視線と僕の視線が交差する──

「……逃……げて──」


 何が起こってるの?

 何でフィアが倒れてるの?

 何でレラに剣が刺さってるの?


「おっ、来たな。こいつらは用済みだな──」

 レラはそのままフィアの上に重なるようにドサッと投げ出される。

 血溜まりが出来上がって行く──

「フィア!? レラ!?」

 僕は2人の元へ駆け寄り、声をかける。

「ロイ……君……逃げて……」

 フィアの声に力がない。傷も酷い──

「フィアっ! 大丈夫!? 早く回復魔法を!」

「……魔力がもう無いから……無理……かな?」

「なら──シャーリーさんの所に向かおうっ! レラも重症だし、早く行こうっ!」

 僕は2人を抱き抱えるとどんどん冷たくなっていく……特にレラが──

「レラっ! 起きてよっ! いつもみたいに殴ってくれてもいいからさ! 寝たらダメだ!」

「…………」

 僕の言葉にレラは何も反応はない──

 虚な目で焦点が合っていない。

 ……死ぬ? レラが?

 嘘だよね?

「ねぇ、レラ! 返事してよ! ねぇ! ねぇってば!」

 僕の必死な呼びかけにレラが反応する。

 こっちを向き──

「大……好き……」

 目に一瞬活力が戻ったと思ったら、笑いながらそう言い──

「ロイ君……私も……愛して……います」

 フィアも僕にぎゅっと抱き着き──


 そのまま脱力して2人とも動かなくなる──

 僕は手から血が出るぐらい握りしめる。

 ……こんな事あってたまるか!

 シャーリーさんならなんとかしてくれるはずっ!

 さっさと向かわなければ──


「くっくっくっ、今度は間に合わなかったか? まぁ、生きてても──もうじき死ぬだろうな」

 この声──

 以前のBランク冒険者か。

 何だこの禍々しい感じは……。

『危機察知』が、ただ立っているだけで警鐘を鳴らしている。

 それにこいつの体中にある顔……既にこいつは魔物になっているのか?

 だけど──今は怒りが湧き上がってそれどころじゃない。だけど、優先するべきはここからの離脱だ──

 男を無視して駆け出そうとするが、僕の前に立ち塞がる。

「僕は急いでいるんだっ! 邪魔を──するなっ!」

 僕はソッと2人を地面に寝かせて、剣と盾を構える──

「良い殺気だ──さぁ始めようじゃないかっ!」

 男は問答無用で一瞬にして僕の目の前に現れて剣を真上から真っ二つにするように振り下ろす──

 攻撃に対して、盾に角度をつけて逸らすと地面に剣が衝突し、小さなクレーターが出来上がる。

 なんとか見えている。だけど、明らかに以前より速いし──力が強い。

 でも、これぐらいなら──今の僕には問題ないっ!

 砂埃が舞い上がり、お互いの視界は不明瞭になるが──

 僕は『気配察知』のお陰でどこにいるかはっきりと把握している──

 そのまま男の背中に触れ──を使う。

「──果てろっ!」

 マンティコアでも気絶させたスキルとの合わせ技なら──

「──……意識を一気に奪う力か……危険な技だな……だが──今の俺には効果がねぇな」

「──!?」

 効果が無い?! 何でだ!?

「良い顔だ。今の俺は簡単にはやられん──俺の救いはお前らの苦痛に歪む顔だけだ──」

 次々と攻撃を放ち続ける男に僕は防戦一方になる。

 隙を見つけては──

「──果てろっ!」

 ──何度も力を使うが効果が出ない。

 どうして効かないんだ!?

「無駄だ。しかし、お前とやり合うとキリがねぇな……あいつらを先に始末するか──お前ら、足止めしろ」

「ちっ、邪魔するなぁぁぁぁっ!」

 男の体にあった3つの顔が離脱して3体の異形の化け物が現れ、それらは僕に襲って来ると同時に男はフィア達に向かい斬りかかる──

 間に合わない──

 そう思った時、母さんの言葉を思い出す──

『お父さんみたいに離れた場所に盾を出現させたり出来るわよ?』

 ──魔力なんかいくらでもくれてやる!

 だから──

 父さん──

 僕の大切な人達を守ってくれっ!

 魔力を込めると腕輪は僕に応えるように光出す──

「死ねっ」

 剣がフィアとレラに当たる瞬間──半透明の盾が出現してガギンっと鈍い金属音が鳴り響く──

 なんとか守れた……だけど、このままだといつか2人が──

「──ロイド君っ! 逃げますよっ!」

「リリアさん!? 逃げる!?」

 リリアさんが現れてフィアとレラを抱えてそう言う。

 いつものふざけた呼び方じゃない。

「あれは──私達では厳しいです。今は合流する事が先決です。それに2人はこのままだと──」

「わかりました──2人をシャーリーさんの所へお願いします。僕はこいつを足止めします」

 そうだ、フィアもかなり重症だ。急がなければダメだ。優先順位は2人だ──後は僕が足止めすれば問題ない!

「ロイド君じゃ攻撃手段が無いから無理。あれは──おそらく呪われた魔剣『吸魂剣ソウルイーター』……既にあいつは人じゃないわ。あの剣で殺した魂は持ち主に移り──スキルと命を増やすわ」

「なら──尚更放っておけないです。今は2人の命の方が大事です! 頼みましたッ! 僕にはこいつを倒す事はできませんが、足止めぐらいなら出来ます!」

 このままだと被害が広がって、更に手がつけられなくなる。それにこの腕輪は魔力さえあれば盾が出せるはず──

 倒せないなら時間稼ぎをするしかない。

 リリアさんは頷き──シャーリーさん達がいる場所まで向かう──



 ◇◇◇



 男はしばらく戦闘した後──「頃合いか」と呟き何故か去った。

 僕は母さん達に合流する為に外に向かうと──

 大量の魔物の死体が並び──

 シャーリーさんを守るように血を流した母さんが仁王立ちし、倒れているレラ、フィア、師匠、ユラさんが目に入った。

「……いったい何が……あったんだよ……──母さんっ!」

 僕は呆然と見た後に母さんに呼びかける。

「ロイ……レラちゃんとフィアちゃんは無事よ……2人を連れてここから逃げなさい。敵はまだいるわ」

「嫌だっ! 僕も戦うよ!」

「リリアっ! 転移石をっ! もう時間が無いわっ!」

 母さんはを見ながらそう叫び、リリアさんに命令する。

 ──空に気配? なんだこの大きさは……

「──ドラゴン?」

 僕の意識は地上にあったので上に視線を向けると、目に映ったのは今にもブレスを放つ為に魔力を溜めながらこちらを見据えているドラゴンだった。そのドラゴンの上に人がいた。

 そいつが僕をチラッと見て口元を吊り上げた気がした。

「──ロイ──生きてね?」

 母さんは儚い笑顔を僕に向けながら魔力を込め続ける──

 母さん死ぬ気なのか!?

「──母さん!? なんだよこれ?! 僕も残る──」

 やっと、父さんの形見を使えるようになったんだ! 皆を守る為に残る──そう伝える前に視界が歪んでいく──


 ────

 ────────

 ────────────


 おそらく街の近くであろう場所に移動した僕が最後に光景は──

 街が跡形もなく消し去られる瞬間だった──


「嘘だろ……こんなの──嘘だって言ってよぉぉぉっ!」





────────────

※こんな展開ですが、ダーク色はかなり薄めですので、引き続きお読み頂けると幸いです。
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