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そしてやっと授かった第一子の後──またもや『我儘王様』のせいで凛音の父である王太子の仕事が増え、第二子懐妊もなかなか難しかった。
「……やっぱりね、『王宮で何らかの陰謀が』って父上が疑って」
「いやいやいや!単に運動不足だとか、健康なのに室内閉じ籠りっぱとか!王様の仕事ってそんなに忙しいもんなの?!王太子まで閉じ込めちゃうぐらいに?!」
「……いや、違う。俺も今『王太子』だけど、閉じ籠ってないだろう?」
「そういやそうね」
「祖父様が……前国王が、押しつけてやがったんだ、父上が王太子勉強を始めて『こいつに押しつければ楽できるぐらい、出来いいんじゃね?』って……」
「……墓穴掘って息子落した、ってことね?」
「たぶんな」
むろん母の方にまったく原因がなかったわけではないだろう。
近親婚による異常妊娠や流産の原因などすべて解明されているわけではなく、母に異常があるかないかもしっかり医学的に証明されているわけでもないのだ。
「それでも女性側は月経や体温による目診が可能だからな……俺にはわからないと思って、侍医や侍女たちが母上の身体に異常はないのに…と話していたし」
「アハハハ~………」
ここら辺は看護師勉強の頃の知識と、詩音から凛音に「男として覚えておけ!」と女性への気遣いを教え込んだ結果であろう。
シーナは空笑いをするしかないが、アルベールはそれこそ医者でもない限り女性の身体の変化を知るわけもないので、一体何のことかと王太子と愛しい人の顔と交互に視線をやった。
たぶんこの反応こそ城の使用人たちが期待するものであったろうが、リオンには前世の知識から『母体は正常』という結論を引き出させたというのは幸いである。
「それで母上にこっそり言ったんだよ、『僕はどうやって母上のお腹に来たの?』ってな…ついでに『僕が美味しいお野菜食べて元気になったから、父上にも元気になってほしいな!』って」
「うっわ!あざとっ!!」
「ふふん!子供だったからな!武器は使うに限るだろう?あれは七歳か……アルベールの後ろにルエナ嬢がちんまり隠れてて……もうふたりとも可愛くって、可愛くって……」
ハァハァと変に息を荒げて、リオンは手をワキワキとさせる。
卑猥に見えなくもないその動きをシーナとアルベールがそれぞれ引いた顔つきで見ているのに気が付くと、リオンは咳払いをして言葉を続けた。
「うぅんっ……いや、そんな『お兄ちゃんと妹』っていう姿が微笑ましくて……思わず『弟妹がいると嬉しい』と口走ってしまったのが、たぶん……その……」
「再び『健康的な生活』を定期的に送るきっかけとなって、十歳違いの弟と、十八歳違いになるはずの弟か妹の誕生を待つ今の状態に繋がる、と」
それがゲームや小説にはない『王太子の弟と妹or弟』の存在のわけ。


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