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脇役・1

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「せっかくうまくいっていたと思ったのに……どこで間違えたのかしら?」
公爵令嬢は呟いた。

本来ならばあの日にディーファン公爵令嬢は婚約破棄を叩きつけられ、逆上して墓穴を掘り、見事表舞台から姿を消すはずだった。
なのに彼女は予想外の子爵令嬢おにもつを押し付けられ、長期休暇中に彼女に対して「淑女となるように教育せよ」と命じられてしまったのである。
公式に従えばシーナ嬢はとっとと王宮に閉じ込められ、ルエナ嬢は王太子からの好感度の下がりぐあいで末路が決まっているはずだったが、そちらの方はどうでもいい。
そこから先の『ゲームにはない未来』からが、モブ以下の扱いでもある『公爵令嬢』として攻略対象との逆ハーレム達成へのスタートになるはずだったのである。


彼女が自我を持って「あ、これは転生ってことね」と気が付いたのは、生後間もなくであった。

見たことのある景色。
見たことのある衣装。
見たことのある装飾。

それらはとても豪華で、その時自分はお決まりの『悪役令嬢』に転生したのだと思った。
間もなくその認識が間違いだと知ったのは、聞き覚えのない家名プラス敬称で呼ばれたためである。
しかも生まれは『伯爵家』でも『侯爵家』でもなく、『公爵家』
モブはモブでも、悪役令嬢の取り撒きにすらなれないキャラクターである。
下手すれば、ゲームの中でファーストネームさえつけられていないキャラである。
(まさか…まさか…そんな……王子に見初められることも、攻略対象とも絡みが生まれないキャラクターへの転生なんて……超最悪人生じゃん!!)
ちなみになぜ彼女がこの世界を『自分が知っているゲーム』と認識できたかといえば、『父親』が自分の顔を覗き込み「我が娘は、ダンガフ王国一の美女になるに違いない!」と叫んだためである。
ダンガフ王国──それこそ『フォーチュン・ワールド~運命の人を探して~』の舞台となる国の名。
三歳になったら初めてのお茶会に呼ばれるはずだから、そこで何としても『リオン王子』の目に留めていただかねば、いやきっと目に留まるはず。だってこんなに可愛らしいんだもの──『両親』が口々にそう褒めてくれたが、ぼやけた視界の中で動く髪色はどう見ても赤味がかった金髪っぽい。
『悪役令嬢』のルエナ・リル・ディーファンであれば、両親のどちらかは王家の血が混じらない証であるプラチナ・ブロンドであるはずだし、『公式ヒロイン』のシーナ・ティア・オインならば、めっちゃ可愛いピンク色の母のはずなのだ。
しかもヒロインはゲーム開始直前まで平民だったはずだから、こんな豪勢でぜいたくな暮らしはしていないはずである。


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