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転校生
①
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今日から学校だと言うのに、気が付いたら七時半だった。万夢はベッドから飛び降りると神業と言えるスピードで身支度をし、七時四十五分に食卓についた。
「何やってんの」
「新学期そうそう寝坊かよ」
同じ小学校の四年生と二年生に弟がいる。彼らはもう朝食を食べ終わりそうだ。更にその下に妹がいるが、妹と母親は既に出発したようで姿が見えない。
「喋ってる暇なんてないから!」
万夢は食卓にセットされた自分の分を猛スピードで流し込んだ。四年生の弟と万夢で、小遣い稼ぎに朝の皿洗いの手伝いをしているのだが、今日は弟に全額取られそうだ。一回五十円だから、毎日やればけっこう貯まる。
「じゃ、お先にー」
「鍵かけろよー」
弟二人は仲良く出発した。くそ。
理由はわかっている。夜更かしだ。万夢は誕生日にスマホを買ってもらったのだ。フィルターはついているものの憧れていた世界が手に入って、連日夜更かしをしていた。学校でスマホを持っている子も勿論いて、早速ラインを始めたらこれがまた面白い。必然的にみんなが寝るまでグループトークをやめられない。しかし買ってもらった時に、「生活に支障出るようなら没収する」との条件を提示された。このままじゃ確実に没収である。
学校には持っていってはいけないことになっている。出発前にラインを見ると、みんなもうとっくに登校していた。既読はつかないが、とりあえず書き込む。
《寝坊っ! 走っていくねー!》
万夢は遅刻ギリギリだな、と思いながら、スマホを置いて出発した。
学校までは徒歩十分だから、走れば五分だ。もう気温が上がってきていて、走るとどんどん体が暑くなった。汗だくで到着か……嫌だな……と思っていたら、段差に躓いて転んだ。膝に激痛が走る。擦りむいた。あーあ、本当にダメだ。ついてない。いや、自分が悪いのか? もはや間に合うことを諦め、万夢はとぼとぼと歩き始めた。もう校舎は見えているが、「転んだ」って膝を見せれば、そんなに怒られないんじゃないかなどと打算までしていた。
「おい何とろとろしてんだよ! 遅れるぞ!」
いきなり後ろから声がかかった。
「優吾」
「お先にー!」
幼馴染の優吾が、万夢をさっと追い越して行った。速い。これじゃ優吾は間に合って、万夢がアウトで格好悪い。
「待てよー!!」
万夢は再び走り出した。でも全然優吾には追い付けない。それもそのはず、優吾はクラスで一番足が速くてリレーを逃したことがない。万夢はリレーの選手になったこともない。
気付けば万夢は笑っていた。二学期に一番最初に会えたクラスメイトが、優吾だったから。
「何やってんの」
「新学期そうそう寝坊かよ」
同じ小学校の四年生と二年生に弟がいる。彼らはもう朝食を食べ終わりそうだ。更にその下に妹がいるが、妹と母親は既に出発したようで姿が見えない。
「喋ってる暇なんてないから!」
万夢は食卓にセットされた自分の分を猛スピードで流し込んだ。四年生の弟と万夢で、小遣い稼ぎに朝の皿洗いの手伝いをしているのだが、今日は弟に全額取られそうだ。一回五十円だから、毎日やればけっこう貯まる。
「じゃ、お先にー」
「鍵かけろよー」
弟二人は仲良く出発した。くそ。
理由はわかっている。夜更かしだ。万夢は誕生日にスマホを買ってもらったのだ。フィルターはついているものの憧れていた世界が手に入って、連日夜更かしをしていた。学校でスマホを持っている子も勿論いて、早速ラインを始めたらこれがまた面白い。必然的にみんなが寝るまでグループトークをやめられない。しかし買ってもらった時に、「生活に支障出るようなら没収する」との条件を提示された。このままじゃ確実に没収である。
学校には持っていってはいけないことになっている。出発前にラインを見ると、みんなもうとっくに登校していた。既読はつかないが、とりあえず書き込む。
《寝坊っ! 走っていくねー!》
万夢は遅刻ギリギリだな、と思いながら、スマホを置いて出発した。
学校までは徒歩十分だから、走れば五分だ。もう気温が上がってきていて、走るとどんどん体が暑くなった。汗だくで到着か……嫌だな……と思っていたら、段差に躓いて転んだ。膝に激痛が走る。擦りむいた。あーあ、本当にダメだ。ついてない。いや、自分が悪いのか? もはや間に合うことを諦め、万夢はとぼとぼと歩き始めた。もう校舎は見えているが、「転んだ」って膝を見せれば、そんなに怒られないんじゃないかなどと打算までしていた。
「おい何とろとろしてんだよ! 遅れるぞ!」
いきなり後ろから声がかかった。
「優吾」
「お先にー!」
幼馴染の優吾が、万夢をさっと追い越して行った。速い。これじゃ優吾は間に合って、万夢がアウトで格好悪い。
「待てよー!!」
万夢は再び走り出した。でも全然優吾には追い付けない。それもそのはず、優吾はクラスで一番足が速くてリレーを逃したことがない。万夢はリレーの選手になったこともない。
気付けば万夢は笑っていた。二学期に一番最初に会えたクラスメイトが、優吾だったから。
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