VS お義母さん

沢麻

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さよなら、お義母さん

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 なんて勝手な奴。
 手を変え品を変え追い出そうと試みたのにしぶとく居着いた。仕方がないからお迎えメンバー、家事メンバーとして頭数に入れたらさようなら?
 「……それでね、この間会ってきたのよ。葉子の彼氏」
 「どんな奴だった?」
 和馬はそっちに興味津々で、ことの重大さをわかっていない。
 「真面目で信頼できそうな人ではあるけど、何せ忙しくてね、子育てを協力するようには見えなかったのよね……葉子も初めての子供だし、ここは私の出番よね、と思って」
 「そっか……ならしょうがないよな。いつうまれるの?」
 「九月みたいなんだけど、その前に入籍するって」
 「そりゃそうだ。じゃあもう妊娠も後半か」
 「二十代のうちに済んで、きっとよかったのよね」
 来月からは魚を食べることはなくなる。ひじきやきんぴらごぼうが冷蔵庫に常にある状態も終わる。朝ごはんはトーストやフルグラになって、ほうきやちりとりは出番を失う。
 こんなに家庭をかき回しておいて、とっとといなくなるなんて無責任だ。
 「杏奈さん、そういうことなの。今までありがとう。あと少しの間、よろしくね。出来る限りのことはするわね」
 あんなに出ていって欲しかったのに。
 「……わかりました。今までありがとうございました」
 せいせいするはずだったのに。
 
 「杏奈怒ってるの?」
 夜、寝室で和馬が訊いてきた。杏奈は言葉が出てこなくて、夕飯時からずっと黙っているのだった。
 「……どうしよう。迎えとか、熱の時とか瑠璃夏。お義母さんがいなくなったら」
 「そんなの俺たちが行くしかないじゃない」
 「掃除とかはもうほぼ無しになるよね。朝ごはんもまたセルフ」
 「仕方ないじゃない」
 「勝手だよね、お義母さんてさ。頼りにしてちょうだいとかなんとか言っといて、責任感ないよね。仕事してない奴ってこれだから」
 「もともといないでやる予定だったんだからさ。できるって、俺たち二人でも」
 勝手なことを言っているのは杏奈だ。わかっている。
 邪魔だ、嫌いだと思ってきたけれど、道子はこの短い間に杏奈にとっての家族になったのだなと思い知った。
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