VS お義母さん

スマホ育児って何？ 今の子育てはこんなに手抜きなの？

①

 高橋さんのご主人が、酒と煙草ばかりしていることは前から知っていたけれど、ついにこんな大惨事を招いた。高橋さん宅は全焼。ご夫婦とも無事に逃げて健在だけれど、ここだけの話、何もかも失ったのに厄介なご主人と二人でこの先生きていかなければいけない奥さんのことを考えると道子は胸が痛んだ。どうしてあんなご主人と結婚したものかと思うが、そりゃあ他人にはわからない色々な理由があるわけだし、それも奥さんの運命なのだが、それにしてもかわいそうな話だ。
 道子はというと、いずれは子供の誰かと同居するつもりで生きてきたが、これはいいタイミングだったと思うことにした。夫を五年前に亡くして、子供達も出ていった。一人では広すぎる家。しかしまだ道子は六十前だったので、まだ一人でも住めると思っていた。だが思いの外寂しいのである。家を取り壊すと思ったら悲しくなったが、それも一瞬のことで、すぐに立ち直った。夫が死んだときもそうだった。道子はあまり後に引かない性格だ。
 和馬がすぐに駆け付けてくれて、「うちに来ればいいよ」と言ってくれた。照れ屋だが、母親思いの優しい子なのだ。一番優しい。ただ、何故あの杏奈さんと結婚したのかは理解に苦しむ。最初に挨拶に来たときにまず外見にびっくりした。身長が和馬とあまり変わらないほどに大きく、短い髪の毛が茶色だった。和馬は真面目で、あんな髪の毛の女の子と地元にいるときに関わったことがない。そして和馬に対する態度がでかい。聞けば勤め先の先輩だというが、自分より下の立場の男と結婚しようと思うその考え方も理解できない。しかし結婚すれば夫を立てるのが妻というもの。きっとこの横柄な態度は改まるだろう、何せ和馬が選んだ女性なのだから、と道子は自分に言い聞かせた。
 その後食事を振る舞ったら、まず箸の持ち方が間違っており、食べ方も一皿ずつ片付けていくという常識はずれっぷりだった。道子は本当に心配になり、後で和馬に考え直してはどうかと持ちかけたくらいである。名前も日本人だか何人だかわからない感じだし、親の顔が見たい。