VS お義母さん

沢麻

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噂の布おむつ信仰ってこれ?

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 道子はその後、「ほうきとちりとりはないのかしら」とうろうろし始めた。そんなものはない。杏奈は大袈裟に瑠璃夏の世話をして、道子を気にしないようにした。一方クイックルワイパーを発見した道子は床を掃き始めた。杏奈は普段あまり掃除をしないので、さぞクイックル甲斐のある時間だろう。後で何を言われるのか考えるとぞっとするが、「私がやるんで触らないでください」などという大嘘も吐けないし、ロボット掃除機を一台買ったと思うことにする。髪の毛や綿ごみを一掃してくれるならこちらも余計なことは言わない方が都合がいい。
 「杏奈さん、ちりとりはないのかしら」
 ごみを集めたはいいが、クイックルワイパーだけでは回収できなくなった道子がついに話しかけたきた。杏奈が掃除機で吸うかコロコロで取るように話すと、道子はコロコロを選択し「やりづらいわ」などとブツブツ言いながらごみを取っていた。更にその後「ハァーっ、うまく切れないわ」とか言っている。杏奈は授乳中なので助けに行く気はさらさらない。
 コロコロをなんとか使い終えた疲れ果てた表情で道子は杏奈の所へやってきた。
 「杏奈さん、ほうきとちりとりを買いましょう。室内用と、玄関用が要るわ」
 そんな古風なもの買う気にならないが、杏奈は緑茶の時と同じように対応することにした。
 「え、あ、お義母さん使うなら買ってください。掃除ありがとうございました」
 「二千円くらいで買えるかしら」
 「さぁ、私詳しくないので」
 「二千円でいいかしらね」
 「さぁ……!」
 道子が目の前から動かない。これは二千円寄越せと言っているのだ。
 二千円もあれば他にいくらでも楽しめるのに、なんで欲しくもないほうきとちりとりを買うために二千円こっちが出さなきゃならないのだ。居候のくせに、どういうつもりだ。
 杏奈は道子の意図を読んだが、敢えて乗らずに授乳を続けた。すると道子も反撃を始めたのだ。
 「随分授乳時間が長いけど、母乳ちゃんと出てるのかしら? 粉ミルクを足したらどう?」
 ガーン!
 これは完全母乳の母親に決して言ってはいけないくらいのレベルの爆弾投下ではないか!
 「……あ、あははは、あ、甘えん坊なもので、あ、遊び飲みするんです」
 「へぇー。あとあなた紙おむつ使っているの?」
 「はい?」
 「かぶれないのかしら? 布おむつの方が優しい子になるっていうわよ」
 「は?」
 なんだそりゃ! 
 「楽したいかもしれないけど、最初の子なんだからちゃんと育てないとだめよ」
 「……」
 なんと、ほうきとちりとり代をすんなり出さなかったからって育児にまで口出しをするとは。杏奈は物凄くムカついて反撃した。
 「あの、うちにはうちの育児方針がありますんで」
 よそ者は口出しするんじゃねえ! と心の中で続けた。
 コロコロ片手の道子とおっぱい丸出しの杏奈の睨み合い。これが始まりだった。
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