VS お義母さん

沢麻

文字の大きさ
14 / 34
主婦って寄生?じゃなくて共生なの?

しおりを挟む
 「ちょっと聞いてちょうだい! 杏奈さんてば私を追い出そう追い出そうとしてくるのよ。いきなりこんなものを持ってきて、働けって言うの。こんなに炊事や掃除をしているのにいつ働けって言うのよ」
 赤ちゃん絡みの用事で杏奈が出かけた土曜日の午後に、道子は昼寝していた和馬の横で杏奈が持ってきたアルバイト情報誌片手に愚痴を言った。和馬は面倒くさそうに頷いている。
 和馬はあまり自分の意見を言わない。それどころかこの家での自分の立場すら道子に話していなかった。まさかあの茶髪の杏奈の方が和馬より収入が多いとは知らなんだ。まるで働いていない人は不要と言わんばかりの傲慢な態度。何とかハラスメントと言うのではなかったか。と、最初に和馬の収入を盾にハラスメントしようとしたことなどすっかり忘れて道子は不満を募らせた。 
 「いやでも、ほら杏奈も育休なんだから家のことはできるわけだし」
 「あの子のどこが家のことできるっていうの! 一日中スマホばっかり見て何もしないのよ」
 「一人だったらきっとするんだよ。だからさ、母さんも少し出かけたほうがいいかもよ」
 「だからって働けってなんなのかしら!」
 実は道子は生まれてから一度も働いたことがないのである。六十過ぎて初めて働きに出るなどハードルが高すぎる。
 和馬は非常にめんどくさそうな顔をしている。ここは和馬が杏奈にやんわりと「母さんに家事をやってもらおう」と言うべきではないのか。
 「楽しいよ、意外と。ほらこの弁当屋とかさ、コンビニとかはどう? 清掃スタッフとかは?」
 和馬がアルバイト情報誌を捲りながら言う。道子の気持ちなどまったくわかっていないのだ。
 「和馬。あなた情けないわよ。男の癖に、一人で嫁と子供と母親くらい養えなくてどうするのよ。赤ちゃん一歳になる前に預けるそうじゃないの。ひどすぎるわ」
 「そんなこと言ったって給料は変わらないしねぇ……」
 おまけに和馬は野心もない。道子は頭を抱えた。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...