VS お義母さん

沢麻

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主婦って寄生?じゃなくて共生なの?

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 ピンポーン。
 インターホンが鳴る。杏奈は赤ちゃんに授乳していたので、道子はさもここの女主人のような顔をしてドアを開けた。すると「あっどうもどうもー、波多野ですー」と四十代くらいの男が玄関に立っていた。誰?
 「ごめーん波多ピー! おっぱい終わるまで玄関でお義母さんと話しててー」
 杏奈の声が居間から聞こえる。ハタピーってなんだハタピーって……。杏奈の来客のようだが、お義母さんと話しててって?
 「あっ、お義母様ですね。私こういうものでございます」
 波多野は道子に名刺を差し出した。よくわからないので笑顔でそれを受け取る。
 《株式会社クリアード 代表取締役 波多野謙一》
 「……?」
 「さっそくなんですけども、履歴書お持ちしましたんで、記載願えますか?」
 波多野は次に履歴書とボールペンを取り出した。道子は危険を感じた。履歴書って、働くときに使うあれではないか!
 「ちょ、ちょっと待ってくださいまし」
 道子は杏奈のところへ飛んで行った。
 「ちょっと杏奈さん! なんなの? どういうことなの?」
 「お義母さんお忙しくてお仕事探す暇もなさそうでしたんで、暇な私が探してきたってわけですけど」
 「はぁ? 困るわ勝手に」
 杏奈は授乳が終わったようで手早く服を直し、玄関に向かった。
 「お義母さんの好きなお掃除のお仕事ですよ。週一からできるんで、頑張ってみましょ」
 なんていう嫁だ。道子を追い出したいからといって嫌がらせにも程がある。
 ……ただ、波多野とやらは物凄く感じのいい男性である。杏奈とはどういう関係なのだろう。
 「待ってちょうだい。私何の話か全然掴めてないの。だいたい彼は一体何者なの?」
 「うちの会社から独立した波多野さん。清掃と衣類のクリーニングやってるんです。つまり私や和馬の先輩で、仲良くしてもらってるんですよ」
 「えっ和馬が」
 杏奈は波多野を居間にあげ、改めて道子に紹介した。柔らかな物腰。波多野は間髪いれずにいきなりビルの清掃業務の説明を始める。二時間程度の仕事で週一からでもよく、場所も徒歩十五分くらいのところなので通うのも簡単。朝の時間を有効に使える。主婦の方に向いていると。
 「……」
 こんな強制連行のような手段、道子は断固拒否しようと思っていた。しかし、波多野が非常に道子の好みだったのである。
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