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第17話 アリスを救え!
しおりを挟む大きな弧を描いたアリスの体はどさりと地面に打ちつけられた。静寂が辺りを包み込み、誰もが息を呑んだ。ある者は目を背け、ある者は涙を流し、そしてある者は天を仰いだ。人々の希望は打ち砕かれた。だがそれよりも魔王に果敢に立ち向かった少女のあまりに悲惨な最期に胸が締め付けられた。横たわるアリスはぴくりとも動かない。わずかに立ち込める砂埃が虚しく彼女を包んでいった。
「まだだ……まだ彼女は生きてる」
騎士団長のロビンが呟いた。彼の目にはアリスの指先が微かに動くのが見えた。
「全員に告ぐ!! これより少女の救出に向かう!」
騎士団長のロビンが剣を掲げ、声を張り上げた。魔物の数はかなり減っていた。だが無論、騎士団とて無傷ではない。傷つき倒れる者も多く、すでに皆満身創痍の有様だった。近くにいた騎士の一人が息を切らしながらロビンに進言する。
「しかし団長、あの傷ではもう……それに魔王もまだ倒せていない……」
確かに傷を負ってはいたが未だその覇気は衰えた様子はなかった。アリスを打ち負かした事で、顔には余裕の笑みすら浮かべている。この戦いはすでに敗色濃厚だ。誰もがそう落胆し始めていた。だがそれでもロビンは皆に向かって檄を飛ばした。
「あの少女がいなければ王都はとっくに落ちていた! 彼女の戦いを無駄にするな! 今こそ騎士の誇りを見せろ!! 彼女の勇気に続け!!!」
彼らは思い返す。決して逃げず、決して恐れずに戦い続けた少女の姿を。多くの騎士がロビンの声に頷いた。歯を食いしばり立ち上がり、そして剣を構えた。
「絶対に彼女を死なせるな!! なんとしてでも救い出すぞ!!!」
「応!!」という雄叫びが大地を震わした。アリスの元へとロビンが先陣を切って走り出す。続けとばかりに彼の後ろから次々と騎士達が走り始めた。
「諦めの悪い奴等じゃのう」
彼らの行く手を遮るかのように、魔王の放つ魔法が次から次へと降り注ぐ。それでも彼らは決して足を止めなかった。ある者は盾となり、身を挺してそれを食い止める。一塊となった軍勢はひたすら前を目指した。後方から魔法師団も加勢した。少しでも時間を稼ごうと魔王に攻撃を仕掛ける。
だがやはり魔王の強さは異常だった。彼らがいくら束になってかかろうとも全く太刀打ち出来なかった。剣でも魔法でも、魔王に傷のひとつすらつけることも出来ない。それでも彼らはアリス救出を諦めようとはしなかった。
「しつこいぞ。羽虫どもめ」
魔王が右手を大きく振りかざす。広げた掌に現れた炎が一気に膨れ上がった。魔王の狙いはアリスだ。
「救うべき者が消え去れば、おまえらも諦めがつくだろう?」
あの爆炎が当たってしまえば今度こそアリスは助からない。少しでも彼女に近づこうとロビンは腕を目一杯伸ばしたがその距離は遠かった。魔王は倒れ込むアリスに狙いを定めると、その腕を振り下ろした。だがその刹那、眩い光の一閃が魔王の目の前で弾けた。
「ぬおぉぉっ!!」
魔法もろとも右手を弾き飛ばされ、魔王はよろめき膝をついた。だらりと伸ばした腕からは血が流れ、苦痛でその顔を歪めた。一瞬の出来事にロビンたちも思わず立ち止まり、今の光がどこから飛んできたのかと辺りを見渡した。するとフードを被った何者かがアリスの足元へと空から舞い降りてきた。
その謎の人物はゆっくりとアリスを抱き起すと、彼女の胸元にそっと手を当てた。するとどうだろう、ぼんやりとした柔らかな光が溢れ、次第にアリスの体を包み込み始めた。その光はみるみる彼女の傷を癒し、血の気の失せていたアリスの顔もほんのりと赤みが戻った。
「あれは……? まさか光魔法か?」
ロビンの問い掛けに応える者は誰もいなかった。彼らは皆、ただ呆然とそれを見守るしかなかった。
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