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第19話 戦のあと
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私達が地面へ降り立つと歓声と拍手が沸き起こった。皆口々に私達を称え労い、そして感謝の言葉を伝えてくれる。中には跪き、まるで私を神様みたいに拝んでくる人までいた。
「王都騎士団、団長のロビンだ。改めてお二人には礼を申し上げる。あなた達がいなかったら、きっと王都は今頃なくなっていた」
ロビンさんが深々と頭を下げると騎士団、そして魔法師団の全員がそれに倣った。
「い、いえっそんな! ただ私は婚約者に会おうと思って……魔王が邪魔でしたので……」
「婚約者? そういえばまだ名前を聞いてなかった」
「私はアリス・グレインと言います。こちらはシンシア・ブラックさん」
「グレイン? もしかしてグレイン商会の方か?」
「はい。いつも我が商会の剣をお使い頂きありがとうございます」
私がぺこりと頭を下げると騎士団の皆がざわざわと騒ぎ始めた。
「そういえばグレイン家の娘が付与魔法師だと聞いたことがある。まさか君がこの剣の魔法付与を?」
「はい。全部私が魔法を施しました。ご不備などはありませんでしたか?」
「不備なんてとんでもない! むしろこの剣がなければ相当数の騎士がやられていた。君にはいくら礼をしても足りないな」
たくさんの騎士達が笑顔で私にありがとうと言ってくれた。今まではただ工房で魔法を付与するだけの機械的な作業だった。けどそれを実際に使ってくれた人達に、直接感謝を伝えられる。初めて自分の仕事に誇りが持てたし、こんなに嬉しい事はない。ましてや多くの命を救ったかもしれないなんて、魔法使い冥利に尽きるではないか。
「シンシアさん。私……」
なぜだか自然と涙が溢れた。横にいたシンシアさんは「うん、うん」と頷きながら微笑んでいた。
事後処理のため騎士団の皆さんは方々へと散って行った。怪我人や建物の崩壊。やはりそれなりに大きな被害が出ている。これからの復興が大変だろう。
「そういえばシンシアさんはなんで王都にいたんですか? また父からの頼まれ事ですか?」
「今回は別口よ。ここの魔法省の大臣にね『娘に魔法を教えてくれ』って依頼されたんだけど――」
「シンシア先生~~!」
なんとなく聞き覚えのある甘ったるい声が聞こえた。小太りの男性を連れ立って、手を振りながらこちらへと走ってきたのはジュノだった。はぁはぁと息を切らしながらやってきた彼女は、なぜか髪がボサボサで服もボロボロだった。
「先生が魔王を倒したって聞きました! 流石は私の先生ですわ! 私も手助けしたかったんですけどちょっと気を失っていて――」
捲し立てるように喋るジュノを見ていると彼女が私の視線に気づいた。長いこと会ってなかったけど、どうやら私が誰だか分かったようだ。
「あら? あなたもしかしてアリスちゃん? どうしてこんな所にいるの?」
「えっと……」
どこから説明したものかと考えていると、今度は私の名を呼ぶ声がした。声の主はマーカスだ。いっそ彼には会わずに帰りたかったんだけど……。
「アリス! 素晴らしい戦いだった! 我が妻として誇らしいよ!」
マーカスが駆け寄って来た勢いそのままに、私に抱きつこうとしてきたのでスッと身をかわした。戦った後で力の加減が分からず、つい本気で避けてしまった。一瞬で目の前から消えたからか、彼は見事にその場にすっ転んだ。そして地面から顔を上げながら驚いた様子で私を見ていた。彼が何か言おうとした時、ジュノが金切り声を上げた。
「ちょっとマーカス! さっきの無様な戦いはなによ! 危うくオークに殺されるとこだったじゃない!」
「うるさい! あれはおまえの付与した剣がポンコツだったからだろ!」
「おまえ! 娘になんてことを!」
なぜか大臣まで参戦してきて痴話喧嘩が始まった。三人の罵り合いがしばらく続いた頃、彼らの真上から大量の水が降り注いだ。
「王都騎士団、団長のロビンだ。改めてお二人には礼を申し上げる。あなた達がいなかったら、きっと王都は今頃なくなっていた」
ロビンさんが深々と頭を下げると騎士団、そして魔法師団の全員がそれに倣った。
「い、いえっそんな! ただ私は婚約者に会おうと思って……魔王が邪魔でしたので……」
「婚約者? そういえばまだ名前を聞いてなかった」
「私はアリス・グレインと言います。こちらはシンシア・ブラックさん」
「グレイン? もしかしてグレイン商会の方か?」
「はい。いつも我が商会の剣をお使い頂きありがとうございます」
私がぺこりと頭を下げると騎士団の皆がざわざわと騒ぎ始めた。
「そういえばグレイン家の娘が付与魔法師だと聞いたことがある。まさか君がこの剣の魔法付与を?」
「はい。全部私が魔法を施しました。ご不備などはありませんでしたか?」
「不備なんてとんでもない! むしろこの剣がなければ相当数の騎士がやられていた。君にはいくら礼をしても足りないな」
たくさんの騎士達が笑顔で私にありがとうと言ってくれた。今まではただ工房で魔法を付与するだけの機械的な作業だった。けどそれを実際に使ってくれた人達に、直接感謝を伝えられる。初めて自分の仕事に誇りが持てたし、こんなに嬉しい事はない。ましてや多くの命を救ったかもしれないなんて、魔法使い冥利に尽きるではないか。
「シンシアさん。私……」
なぜだか自然と涙が溢れた。横にいたシンシアさんは「うん、うん」と頷きながら微笑んでいた。
事後処理のため騎士団の皆さんは方々へと散って行った。怪我人や建物の崩壊。やはりそれなりに大きな被害が出ている。これからの復興が大変だろう。
「そういえばシンシアさんはなんで王都にいたんですか? また父からの頼まれ事ですか?」
「今回は別口よ。ここの魔法省の大臣にね『娘に魔法を教えてくれ』って依頼されたんだけど――」
「シンシア先生~~!」
なんとなく聞き覚えのある甘ったるい声が聞こえた。小太りの男性を連れ立って、手を振りながらこちらへと走ってきたのはジュノだった。はぁはぁと息を切らしながらやってきた彼女は、なぜか髪がボサボサで服もボロボロだった。
「先生が魔王を倒したって聞きました! 流石は私の先生ですわ! 私も手助けしたかったんですけどちょっと気を失っていて――」
捲し立てるように喋るジュノを見ていると彼女が私の視線に気づいた。長いこと会ってなかったけど、どうやら私が誰だか分かったようだ。
「あら? あなたもしかしてアリスちゃん? どうしてこんな所にいるの?」
「えっと……」
どこから説明したものかと考えていると、今度は私の名を呼ぶ声がした。声の主はマーカスだ。いっそ彼には会わずに帰りたかったんだけど……。
「アリス! 素晴らしい戦いだった! 我が妻として誇らしいよ!」
マーカスが駆け寄って来た勢いそのままに、私に抱きつこうとしてきたのでスッと身をかわした。戦った後で力の加減が分からず、つい本気で避けてしまった。一瞬で目の前から消えたからか、彼は見事にその場にすっ転んだ。そして地面から顔を上げながら驚いた様子で私を見ていた。彼が何か言おうとした時、ジュノが金切り声を上げた。
「ちょっとマーカス! さっきの無様な戦いはなによ! 危うくオークに殺されるとこだったじゃない!」
「うるさい! あれはおまえの付与した剣がポンコツだったからだろ!」
「おまえ! 娘になんてことを!」
なぜか大臣まで参戦してきて痴話喧嘩が始まった。三人の罵り合いがしばらく続いた頃、彼らの真上から大量の水が降り注いだ。
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