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第一章 Ghost Rebellion
第二話 「俺、父さんを探しに行く」
『続いてのニュースです。グラズヘイム高等専門学校に通う男子生徒が、下級生に対して恫喝や恐喝を繰り返していた問題で、事態は新たな局面を迎えました。関係者への取材によりますと、当該生徒の両親が学校側に対し、多額の寄付金を名目に口止めを図っていた疑いが浮上。学校側は「寄付と不祥事の処理は無関係である」と説明していますが、世論の反発は必至とみられます。続きまして――』
俺はブスッとした顔でデバイスの電源を切り、乱暴に机の上に放り出した。「なんだよこれ! 俺の活躍が一つも報道されてないじゃん!」と生徒会室の天井に向かって文句を垂れる。
すると、俺の向かい側の席に座っていた生徒会長であり、幼馴染のヘリオス・シュヴェルトライテが「そりゃそうだろ」と感想を述べた。
「お前が戦ったカール・アダーの父親は軍のお偉いさんだからな。これ以上、問題が大事にならないように被害者家族に慰謝料を出したらしいぞ」
「親がお偉いさんだと札束で尻拭いをしてくれるのかよ!? あーあ、本当に羨ましい限りだぜ……ん?」
俺のデバイスが震えたので手に取って見ると、画面には『ヘリオス・シュヴェルトライテから100ドルの送金がありました』と表示されていた。
「……なんだよ、この金は?」
「報酬さ。俺の父親が軍の総司令官だって事は知ってるだろ? 俺が下手に動くと父親の評判に傷が付くかもしれない。だから、血の気盛んな後輩がいるってカールに教えてやっただけさ」
「お前の仕業かよぉぉっ!!」
俺は盛大に突っ込んだ後、机の上に突っ伏した。
自分のデバイスが再びピロリンと鳴る。視界の端には『ヘリオス・シュヴェルトライテから100ドルの送金がありました』と表示されていた。
「人聞きが悪いな。俺が幼馴染を売るわけがないだろ」
「嘘吐くな! お前が悪い顔をしてる時は何か企んでる時だけだっての!」
「元々こんな顔さ。俺もイグニスと同じで父親似だしな」
「話逸らしてるんじゃねぇよ……」
俺は気怠そうに頬杖を着き、ヘリオスを睨んでやった。
つまり、だ。俺はまたヘリオスの――生徒会長様の掌の上で踊らされていたという事だ。
学校内で起こった厄介ごとは、ぜーんぶ俺の仕事! 高等部に進級してから上級生から絡まれる事が増えたなーとは思ってましたよ!? それがまさか、ヘリオスが原因だったとは思わないじゃん!
「確かにカールの時だけイグニスの名前は出したけど、他の事は関与してないぞ? そもそも弟みたいに可愛がってるイグニスを駒扱いするわけないだろ?」
「いや、明らか駒使いじゃねぇか! つーか、さっきから何なんだよ、この金は!? ピロンピロン、うるせぇんだけど!?」
「今送ったのは賞金さ。決闘に勝利した学生は賞金を獲得できるんだ。まぁ、元を辿ればカールの金だけど」
ヘリオスの発言に俺は度肝を抜かれた。
せ、先輩のお金!? 生徒会長様が金銭のやり取りを!? 普通にアウトじゃね!? これこそ特大スクープになっちゃうじゃん!?
俺が何を言いたいのか察したヘリオスは「言いたい事は分かるが、これは我がグラズヘイム高等専門学校独自の伝統でもあり、決闘システムの醍醐味なのさ」と説明してくれた。
「歴戦の猛者達は自分の機体を強くする為に決闘システムを作り上げたんだ」
「機体強化の為に作ったシステム? なんだか物騒な伝統だなぁ……」
「まぁ、そんな顔するなよ。昔は今よりも制度が整っていなかったし、娯楽もなかった時代だ。ヴァルキリーを強くする事は経済的豊かさの象徴でもあったらしいぜ? 今はコロニーが建設されてるから、そんなに不自由さは感じないけど、当時は資源の調達も難しかったはずさ」
ヘリオスの言葉に「成程ね」と俺は渋々頷いた。
「いいか、イグニス。これはチャンスだ。決闘に出れば自分の腕も磨けるし、他校との交流戦に招かれたりもする。成績上位者になると、宇宙連邦軍の軍人として好待遇で迎え入れてくれる。パイロットにとって損になる事は一切ないぞ」
なんだかヘリオスに言いくるめられてしまったような気がする。少し悔しいが、今の話だけ聞くと確かにメリットしかない。けど、こういう美味しい話には裏がつきものだ。念の為にデメリットがあるか聞いとこう。
俺が話しかけようとしたタイミングで、ヘリオスは急に何かを思い出したようだった。「あ、そういえば……」と話題を変えられてしまう。
「イグニス。お前、進路はどうするんだ?」
「進路? そういうのは、まだ先の話じゃねぇの?」
「いや、この時期になると高等部の生徒宛にアンケートが送信されるはずだ。念の為、メールをチェックしてた方がいいぞ」
ヘリオスに言われて俺はメールを確認すると確かにあった。
第一希望から第三希望まで入力して、メールを送り返せばいいのだろう。けど、ろくに目を通さずにデバイスの電源を落とし、俺は少し俯きがちに「なぁ、ヘリオス」と話しかけた。
「俺、この長期休暇を使って――」
「行方不明になった父親の足取りを探しに行く……か?」
ウッと言葉に詰まってしまった。
視界の端で少し呆れた顔をしているヘリオスの目を直視できず、俺は膝の上で拳を握る。意を決した俺は椅子から立ち上がり、前のめり気味に話を切り出した。
「じゅ、十年前に起こった襲撃事件がもうすぐ時効を迎えて、行方不明者達が死亡者リスト入りになる! 俺、納得できないんだ! 父さん以外の人間も見つかってないし、俺の母さんだってそうだ! 空っぽの棺桶に向かって墓参りするだなんて馬鹿げてる! そんなんで父さん達が死んだなんて認められるかよ!」
俺の父さん――シンラ・ヒビキは天才パイロットだった。敵の襲撃から何度も宇宙船・ブラズニルを救ってくれた正真正銘の英雄であり、俺のヒーロー。『絶対にお前の元に戻ってくる』と約束してくれた父さんが、そう簡単に死ぬわけがない。
「……イグニス。俺もあの大規模襲撃事件で母と兄を失ってるから、お前の気持ちは理解できる。けど、もしも兄さん達が生きてたらさ。とっくに俺達の元へ帰って来てると思わないか?」
「そうかもしれないけど! あんな大きな機体がどこにも見つからないだなんて、普通あり得ないだろ!?」
「俺達はもう十五歳だ。聞き分けのない子供じゃないんだから、現実を見た方が――」
「戦った形跡はあったのに機体の残骸が見つからないなんて、おかしいと思わないか!? この事件は絶対に誰かが裏で手を引いてる! だから、俺は……今でも父さんが生きてるって信じてるんだ!」
俺は鞄を手に取り、ヘリオスの静止を聞かずに生徒会室を飛び出した。
廊下を全力で走り、遠回りして職員室に向かった。担任の先生がいない事を小窓から確認し、俺は鞄から目薬を取り出す。
無事、涙目になったところで補助ロボットに「S1Aのシンラ・イグニスです。身体の調子が悪いから早退したいんだけど……」と話しかける。
――現在の体温は三十七度。目も潤んでいる事から、熱が上がってくる可能性あり。出席率、成績共にA。シンラ・イグニスの早退を許可する。
「ありがとう! じゃあ、また明日!」
俺は手を振り、急いで学校を出た。
向かう先はとある機体が安置されている格納庫。今から俺はその機体と共に立入禁止宙域へ向かうつもりだ。
「ヘリオスは大人の階段を登り始めてるから、現実を受け入れられるんだ! だったら、俺が十年前の大襲撃で何が起こったのか暴いてみせる!」
俺はブスッとした顔でデバイスの電源を切り、乱暴に机の上に放り出した。「なんだよこれ! 俺の活躍が一つも報道されてないじゃん!」と生徒会室の天井に向かって文句を垂れる。
すると、俺の向かい側の席に座っていた生徒会長であり、幼馴染のヘリオス・シュヴェルトライテが「そりゃそうだろ」と感想を述べた。
「お前が戦ったカール・アダーの父親は軍のお偉いさんだからな。これ以上、問題が大事にならないように被害者家族に慰謝料を出したらしいぞ」
「親がお偉いさんだと札束で尻拭いをしてくれるのかよ!? あーあ、本当に羨ましい限りだぜ……ん?」
俺のデバイスが震えたので手に取って見ると、画面には『ヘリオス・シュヴェルトライテから100ドルの送金がありました』と表示されていた。
「……なんだよ、この金は?」
「報酬さ。俺の父親が軍の総司令官だって事は知ってるだろ? 俺が下手に動くと父親の評判に傷が付くかもしれない。だから、血の気盛んな後輩がいるってカールに教えてやっただけさ」
「お前の仕業かよぉぉっ!!」
俺は盛大に突っ込んだ後、机の上に突っ伏した。
自分のデバイスが再びピロリンと鳴る。視界の端には『ヘリオス・シュヴェルトライテから100ドルの送金がありました』と表示されていた。
「人聞きが悪いな。俺が幼馴染を売るわけがないだろ」
「嘘吐くな! お前が悪い顔をしてる時は何か企んでる時だけだっての!」
「元々こんな顔さ。俺もイグニスと同じで父親似だしな」
「話逸らしてるんじゃねぇよ……」
俺は気怠そうに頬杖を着き、ヘリオスを睨んでやった。
つまり、だ。俺はまたヘリオスの――生徒会長様の掌の上で踊らされていたという事だ。
学校内で起こった厄介ごとは、ぜーんぶ俺の仕事! 高等部に進級してから上級生から絡まれる事が増えたなーとは思ってましたよ!? それがまさか、ヘリオスが原因だったとは思わないじゃん!
「確かにカールの時だけイグニスの名前は出したけど、他の事は関与してないぞ? そもそも弟みたいに可愛がってるイグニスを駒扱いするわけないだろ?」
「いや、明らか駒使いじゃねぇか! つーか、さっきから何なんだよ、この金は!? ピロンピロン、うるせぇんだけど!?」
「今送ったのは賞金さ。決闘に勝利した学生は賞金を獲得できるんだ。まぁ、元を辿ればカールの金だけど」
ヘリオスの発言に俺は度肝を抜かれた。
せ、先輩のお金!? 生徒会長様が金銭のやり取りを!? 普通にアウトじゃね!? これこそ特大スクープになっちゃうじゃん!?
俺が何を言いたいのか察したヘリオスは「言いたい事は分かるが、これは我がグラズヘイム高等専門学校独自の伝統でもあり、決闘システムの醍醐味なのさ」と説明してくれた。
「歴戦の猛者達は自分の機体を強くする為に決闘システムを作り上げたんだ」
「機体強化の為に作ったシステム? なんだか物騒な伝統だなぁ……」
「まぁ、そんな顔するなよ。昔は今よりも制度が整っていなかったし、娯楽もなかった時代だ。ヴァルキリーを強くする事は経済的豊かさの象徴でもあったらしいぜ? 今はコロニーが建設されてるから、そんなに不自由さは感じないけど、当時は資源の調達も難しかったはずさ」
ヘリオスの言葉に「成程ね」と俺は渋々頷いた。
「いいか、イグニス。これはチャンスだ。決闘に出れば自分の腕も磨けるし、他校との交流戦に招かれたりもする。成績上位者になると、宇宙連邦軍の軍人として好待遇で迎え入れてくれる。パイロットにとって損になる事は一切ないぞ」
なんだかヘリオスに言いくるめられてしまったような気がする。少し悔しいが、今の話だけ聞くと確かにメリットしかない。けど、こういう美味しい話には裏がつきものだ。念の為にデメリットがあるか聞いとこう。
俺が話しかけようとしたタイミングで、ヘリオスは急に何かを思い出したようだった。「あ、そういえば……」と話題を変えられてしまう。
「イグニス。お前、進路はどうするんだ?」
「進路? そういうのは、まだ先の話じゃねぇの?」
「いや、この時期になると高等部の生徒宛にアンケートが送信されるはずだ。念の為、メールをチェックしてた方がいいぞ」
ヘリオスに言われて俺はメールを確認すると確かにあった。
第一希望から第三希望まで入力して、メールを送り返せばいいのだろう。けど、ろくに目を通さずにデバイスの電源を落とし、俺は少し俯きがちに「なぁ、ヘリオス」と話しかけた。
「俺、この長期休暇を使って――」
「行方不明になった父親の足取りを探しに行く……か?」
ウッと言葉に詰まってしまった。
視界の端で少し呆れた顔をしているヘリオスの目を直視できず、俺は膝の上で拳を握る。意を決した俺は椅子から立ち上がり、前のめり気味に話を切り出した。
「じゅ、十年前に起こった襲撃事件がもうすぐ時効を迎えて、行方不明者達が死亡者リスト入りになる! 俺、納得できないんだ! 父さん以外の人間も見つかってないし、俺の母さんだってそうだ! 空っぽの棺桶に向かって墓参りするだなんて馬鹿げてる! そんなんで父さん達が死んだなんて認められるかよ!」
俺の父さん――シンラ・ヒビキは天才パイロットだった。敵の襲撃から何度も宇宙船・ブラズニルを救ってくれた正真正銘の英雄であり、俺のヒーロー。『絶対にお前の元に戻ってくる』と約束してくれた父さんが、そう簡単に死ぬわけがない。
「……イグニス。俺もあの大規模襲撃事件で母と兄を失ってるから、お前の気持ちは理解できる。けど、もしも兄さん達が生きてたらさ。とっくに俺達の元へ帰って来てると思わないか?」
「そうかもしれないけど! あんな大きな機体がどこにも見つからないだなんて、普通あり得ないだろ!?」
「俺達はもう十五歳だ。聞き分けのない子供じゃないんだから、現実を見た方が――」
「戦った形跡はあったのに機体の残骸が見つからないなんて、おかしいと思わないか!? この事件は絶対に誰かが裏で手を引いてる! だから、俺は……今でも父さんが生きてるって信じてるんだ!」
俺は鞄を手に取り、ヘリオスの静止を聞かずに生徒会室を飛び出した。
廊下を全力で走り、遠回りして職員室に向かった。担任の先生がいない事を小窓から確認し、俺は鞄から目薬を取り出す。
無事、涙目になったところで補助ロボットに「S1Aのシンラ・イグニスです。身体の調子が悪いから早退したいんだけど……」と話しかける。
――現在の体温は三十七度。目も潤んでいる事から、熱が上がってくる可能性あり。出席率、成績共にA。シンラ・イグニスの早退を許可する。
「ありがとう! じゃあ、また明日!」
俺は手を振り、急いで学校を出た。
向かう先はとある機体が安置されている格納庫。今から俺はその機体と共に立入禁止宙域へ向かうつもりだ。
「ヘリオスは大人の階段を登り始めてるから、現実を受け入れられるんだ! だったら、俺が十年前の大襲撃で何が起こったのか暴いてみせる!」
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注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。