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出稼ぎします

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 「ぎぃゃああああああああああっつ!!!!」

 いつもの金庫を開けて私は愕然とした。中に入れていた弟フランの学費袋が袋ごとごっそりなくなっていたのだ。
 あの袋の中には入学金と一年分の学費が入っている。三ヶ月後に控えた入学試験にパスさえすれば支払いは確実に発生するのに、丸ごとない。

 「お、お嬢様!?」
 「どうかされましたか?!??」

 あまりにも大きな声で驚いてしまったものだから、執事のマシュウと侍女のアンナが部屋に飛び込んできた。開けっぱなしの金庫の前で座り込んみ顔面蒼白になっているだろう私を見て、彼らは何事かと思ったのだろう。

 「ふ、フランの、学費が…」
 「お嬢様…っ」
 「みんなに切り詰めてもらって貯めたお金が…っ」

 もう成人したし前世の記憶がある私でもこの時ばかりは勝手に涙が溢れてきた。
 貯めていたお金がごっそりなくなった。心臓がギューっと鷲掴みされたように胸が苦しい。
 フランの人生、この先どうなってしまうんだろうと絶望した。

 シュレンダ王国では、貴族子息令嬢は13歳になると学院に入学する。
 勉学もそうだが、男性は就職先を、女性は嫁ぎ先を見つけ、派閥を作るために通うことが目的だ。

 つまり、学院に入学しない=貴族として致命傷を負うのと同じこと。
 派閥も人脈もなくこの先お付き合いしていくのは非常に困難である。

 弟の将来がかかっているからこそ、とてもとても大切なお金だった。
 来年13歳になる末の弟フランのために、食費を削って内職をして、マシュウとアンナに頭を下げてお給料を少しカットさせてもらいながら、必死に必死に貯めたものだったのに。

 それが数日金庫を確認しなかっただけで無くなった。神隠しなのか、それとも泥棒なのか。
 泣きながら頭を抱えていると犯人はあっさりと見つかった。

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