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「結城は友達。な?」
初めて好きになった男の子は周囲から“王子様”と慕われていた。顔立ちが整っているのはもちろん、文武両道でパーフェクトな彼。
「当然でしょ。ビー太郎が彼氏なんて嫌よ」
対する私は、柔道一筋の武道一家の末娘。あだ名はその体型から“ゴリラ”と呼ばれる始末。
王子様とゴリラ。
何故かウマが合い、教室ではよく話す。だけど、自分でもちゃんと分かってる。
それが釣り合ってないことを。
だからこの恋は一生の秘密。
心の奥に閉まって、いつしか存在そのものが無くなればいい。
そう思っていたのに。
「結城さん、週末の会食リスケして」
「承知しました」
二十年以上経った今、彼と私は上司と部下。彼の秘書をしている。毎日顔を合わせるせいで、閉じ込めた想いが時々儘ならない。
おまけに、
「ビー太郎、あれはないわ」
「だよなー」
「何がだよなー、よ。フォローする私のことも考えなさいよ」
彼とは気の合う飲み仲間。
お互い、恋人はいてもいなくても、そのラインは崩れない。
「やっぱ結城といるのは楽だわ」
「それは同意ね」
いつか来るその時まで。
彼に似合う女性が彼の隣に立つその日まで。
どうか、このまま彼を想っていたい。
それ以上は決して望まない。
主な登場人物
結城綾乃(ゆうきあやの)秘書
木下雅(きのしたみやび)副社長
二十年以上も拗らせた初恋は果たして………?!
※他社サイトに掲載した作品を改稿してアップしております。
文字数 128,638
最終更新日 2021.06.30
登録日 2021.03.13
レイラ・キャストレイは貴族では珍しい、恋愛結婚の両親の元に生まれた。
父は、イーディルス王国の宰相であり、王が最も信頼をおく男だった。
五つ上の兄マリウスと国一番の美女といわれる、母と誰もが羨むような家族で、仲睦まじく暮らしていた。
だが、幸せはそう長くは続かなかった。
レイラが7歳の時、母が亡くなった。
母を愛していた父は憔悴し、仕事に手がつかなくなるほどだった。
兄は学院入学と共に寮に入ることになり、レイラは祖父母のいるキャストレイ伯爵領に一時的に住むことになる。
だが、それからわずか、一年も経たずに父が再婚した。
父の再婚相手、ベラは美しい女性だったが、レイラはベラを好きになれなかった。
おまけに連れ子のエミリアは、レイラの持ち物を何でも欲しがり、レイラが断れば義母に泣きついた。
父の再婚を機に王都に戻ったレイラだったが、次第に家に居場所がなくなっていく。
頼みの綱だった父ですら、レイラに冷たくなり、ついにレイラの話すら聞いてくれなくなる。
そんな中、兄マリウスだけがレイラの味方だった。
マリウスはレイラの弱い立場に気づき、週末には寮から帰省するようになった。
母親譲りの美貌と父親譲りの頭脳を持つレイラ。
マリウスはなんとかしてこの家から連れ出したかった。
だが、レイラは次期王妃候補として城に上がることが度々あった。
奥妃教育も始まっており、王都から離すことは出来なかった。
十二歳になれば、マリウスもいる学院に入学できる。
それまでの辛抱だとレイラは部屋に閉じこもるようになった。
そして、十二歳になる誕生日の夜。
事件は起こった。
文字数 15,004
最終更新日 2021.04.20
登録日 2021.03.13
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