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出稼ぎします

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 「そう簡単にうまくいかないかぁ…」

 「焦らなくても大丈夫よ、マリウス様のお返事を待ちましょう」

 「そうよ。お昼は美味しいものを食べて、ゆっくり休んでそれからよ」



 昨日は冒険者ギルドで依頼を出したあと、王都の観光をした。

 旅の疲れもあるので、早めに宿に戻り、お風呂をいただきぐっすりと就寝。

 

 今朝は商業ギルドで働き口がないかと確認にきたが、どれも平民のお店ばかり。

 ちゃんとお給金を払ってくれるのであれば個人的にどこでもいいが、ケビンさんにものすごく止められてしまった。彼らは貴族の護衛依頼をよく受けるので貴族のことはある程度詳しいらしい。

 王城は基本的にコネクションがないと働けない。今は外国からも人がうようよしているので、他国の諜報員など紛れ込みやすいらしい。人手は足りないが、かといって誰彼構わず受け入れていないという。

 一番は兄からの口利きだが、昨日手紙を出したばかりのなのですぐに返事は来ないだろう。



 どうしようかと悩みながら、とりあえず王城の前まで来てみた。



 (…大きいな)



 下から上に見上げながら、ほぅ、と息をついた。

 ありきたりな感想だが、王城はとても大きい。某アニメーション映画のお城よりもなんというか現実味がある。ちゃんと人が中にいるというのがここからでもよく見えた。あちこちで人がせかせかと動き回っている。



 「あの」

 

 門番で立っていた騎士団の人らしき人に声をかけてみた。彼らから見れば私は冒険者連れの妖しい人だろう。一応屋敷にある洋服の中で一番綺麗なものを持ってきた。母のものなのでデザインなどは古いけれど、生地はいいものだ。



 「何か御用でしょうか」

 「あの、マリウス・ヴィッセというものがこちらで働いていると思うのですが。あ、マリウスは私の兄です」

 「……失礼だが、証拠はあるか?」

 「気分を悪くせんで、お嬢さん。そうやって仕事中に押しかけてくる女性たちがいるものでね」



 もう一人の門番の人が苦笑しながら教えてくれた。そう言われると証拠など見つからない。



 「どうかしたかい?こんな入口で」



 そこへ一台の馬車が入ってきた。馬車は門を通りすぎる手前で止まり、男性が窓から顔を出す。

 薄い青い瞳で黄金色の髪。そしてこの世界では珍しい眼鏡だ。歳は30歳近いだろうか。

 知的と聡明さを醸し出しながら、成人男性の色気もある。

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