トラウマ克服の為にクズに徹します

きるる

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拙い孔雀 2




シュナが果実水をちょびちょび飲む頃には食べ終わったイアンはヘッドボードに移り、シュナの椅子代わりになってご機嫌で後ろから腰に手を回して髪に顔を埋めていた。


「まあ今後も頑張るのは良いけど、僕と居る時くらいは弱々しいシュナもちゃんと見せてね。僕だけ何かおかしくなるの納得いかないし」


と何やら昨夜のことを根に持つ発言はこれで三度目だ。そもそもシュナの弱い所は散々見せているだろうに。


「僕が全部処理してあげるから、強いシュナは幾らでも弱くなっても良いんだからね」


これは比喩でなくあらゆる意味の処理であることはもうシュナにも分かっている。


「シュナは僕だけ捕食してれば良いんだからね」


最終奥義のように最後にこれを付け足すイアンに最早思うことは可愛いだけである。だが言葉にすると後のあれに響くので止めようとシュナは心に誓う。あの後そこそこえらい目にあったのだ。



食後少し休んだ後湯を浴びようとイアンに抱っこされて脱衣所に移動する。


「ん。なかなか良い形。シュナの執着って感じ」


洗面台の鏡を見たイアンがシュナがつけた鬱血痕を見ながらにこにこしている。その間シュナはまだ立てないので洗面台に座らせられた状態だ。

その後一緒に浴室に入り身体を半ば強制的に洗われ、悪戯を施されたり仕返しをしたり。


そしてここから驚きの連続であった。

湯船でイアンに寄りかかり一息吐いていた時、扉のノックが鳴る。イアンが応答し中に入ってきたのはメイドだった。

濃紺のメイド服にレースが少なめのホワイトブリムに顎までの長さのボブカットの色は灰色。
そして何より驚いたのは右目がオレンジブラウンで左目がスモーキーブルーという異色の瞳をもつこと以上に、無表情だが整ったメイドの顔だった。

前に会った時は色眼鏡をしていたが、風貌と真っ直ぐな姿勢はとても印象に残っていた。


「あれ…もしかしてターニャ?」
「はい。また会えました」


そう言って一礼する姿はあの謝罪の時と同じ綺麗な角度。
そしてターニャはイアンの件で突撃し助けたメイドだったというのだから驚きだ。


ここ最近、いつものイアンらしくない行動に懸念を持ったターニャはイアンから直接関わればと言われ、あの日ユニュイスに現れたそうだ。そして実際シュナと関わり知ることで、イアンが良い方向に変わっていく様にほっとしていたのだという。

そしてターニャは珍しい蠍族だという。
異なった色の瞳は蠍族特有のものらしく、昔はこの瞳と能力の高さから奴隷として囚われた過去があったのだとか。シュナより少し背が高いが細身のターニャはその辺の特殊部隊より強いのだと聞いて驚いた。

シュナは見たことがない異色の瞳をじっと見る。


「綺麗…ターニャの瞳」
「国によっては忌み嫌われていると言われてますが」
「人と少し違うだけでそうやってほざく器の小さい奴らなんて放っとけっての」
「…あまり見ないで貰えると」
「無理。こんな凄く綺麗なのに…少しくすみのある橙色と青が…香油に例えるなら―――」


ここでイアンそっちのけでずっと見ていたシュナにこの離れの主は面白くなかったらしく、シュナの目元を覆ってさっさとターニャに命令して去らせてしまった。そして寝台で暫くくっつかれて動きを封じられていた。


更に一刻後。今度は数名の足音が聞こえ「はあ、やれやれ。次から次へと…」とイアンは苦笑している。

コンコンと始めに軽くノックが聞こえたと思ったら「そんなんじゃ聞こえない!」と軽やかな女性の声が聞こえたと思ったらドンドンと大きなノック…叩く音が聞こえ「そこに居るのはわかってるのよ!開けなさーい!」と聞こえたと思ったら「そりゃここにしか居ないだろうに」と低い声で突っ込む声。

何だ何だとシュナが目を丸くしていると、傍で噴き出したイアンが「騒がしい家族」と言いながらシュナを抱っこしてそのまま扉に向かった。

そしてカチャリと扉を開けると、まるで雪崩込むように一斉に入ってきた。


「シュナちゃんね!」
「シュナちゃんだ!」
「二人とも落ち着け」
「二人とも元気だなぁ」


そこには目を瞠るほどの美男美女の四人。


「すっぴん可愛い!でも化粧映えも見たい!悪女じゃなくて淑女!いや、淑少女!」
「これが昼夜使い分けの極意!最強!」
「二人とも落ち着け」
「二人とも興奮し過ぎだなぁ」


次から次へと言葉が重なる風景にシュナはポカンとして圧巻状態だ。イアンが苦笑しながら四人へ声をかける。


「ねえ、シュナが吃驚しているから。まずは自己紹介くらいしてあげてよ」


その言葉に四人がハッとようやく気づき、先ずは一番年上だろう男性が一歩前に出る。





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