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外道の心を折る方法 2
しおりを挟む数日後。
イアンはとある施設の地下に来ていた。
そこは端から見たらちょっとした大きな屋敷のように観えるが、警備は王宮レベルで厳重だ。そこに無能な破落戸や暗殺者が訪れようものなら、二度と外に戻ることはないだろう。
地下には武器倉庫や媚薬以外の違法すれすれの薬品庫、そして完全に周りから隔離された地下牢がある。地下牢は何重にも扉や仕掛けが施してあり、万が一牢から脱出した者がいたとしても外に出ることは不可能だと言われている。
イアンですら全て罠を解除して外に出るのは至難の業のレベルである。
イアンは施設の案内人に連れられて地下の何重にも仕掛けが施されている先にある一つの牢獄へ向かった。
ギギギと重い扉を開けられ、長い廊下の先に案内人に手を振られ進んでいく。
奥底から小さな唸り声とガシャンガシャンと鎖の揺れる音。
一番奥の牢獄の外に一人。中には一人の囚人とその向かいに一人。
外から中を見ていた―――エリックが視線だけ向けた。
「やあ」
「少し前に薬を投与した」
「自白剤?」
「そ」
牢の中で鎖に繋がれ全裸状態―――あの時の姿のままのアーロと薬を投与したデュークが居る。
「腕上がるんだね。あの時加減なんか微塵も考えずに思い切り蹴ったから」
「まあ辛うじて上がってはいるけど骨は砕けているでしょ」
「痛み止めは?」
「打つわけない」
「だよね」
全裸のアーロを見ると巷では整っていたという顔は無惨に腫れ上がっているが、他に傷などはない。
今のところは。
「お綺麗な顔を素敵に変えたのは?」
「俺だ。こんなものでは済まさん」
牢の中からデュークが振り向かずに低い声で端的に答える。
「デュークもあの子の兄みたいなもの」
「…そうだね」
あの時のイアンはそれどころではなかったが、フェリウスと共に彼もあの惨状を見ていたはず。声色も表情も変わらず無ではあるが、シュナをずっとあの酒場で見てきたデュークだ。エリックと共に見守ってきた。
大切にしてきた妹分のシュナに恐怖を植え付けたアーロへの怒りは計り知れないだろう。
「こちら持ちで確定?」
「許可は取った。洗いざらい吐かせればもう要らないって」
「おっけー」
もし目の前の外道をロンダース国に戻すなんてことになったなら、イアンは道中で捕縛して即座に拷問してから殺しただろう。
「頃合い」
「じゃあ始めて」
デュークの言葉にエリックが返す。自白剤の薬が効いてきたのだろう。デュークが先ずは十年前の媚薬の件から聞いていった。
アーロは初めこそ真面目に商才により着々と実力と資産を増やしていったが、性交をもっと楽しむ為に信望者の魔術師に媚薬を作らせ、それを時々女に使っていた。
それを信用ある仲間に漏らすと秘密裏に譲ってくれと言われるようになり、これを売れば莫大な財産を得られるのではないかと閃いたらしい。
当時ロンダース国はそこまで媚薬が横行しておらず、あっても効果が薄いもの程度だったらしい。そこに目をつけたアーロは媚薬の密売に乗り出した。
それが思った以上に上手く行き、仲間も次々に増えていったという。
アーロこそ十年前も今回も首謀者の中の元凶だったというわけだ。そして危機察知能力と逃げ足だけは早い彼は状況が悪化する前に上手く雲隠れしてきたとのことだった。
「弛緩剤を投入した経緯は」
その言葉に醜くなったアーロの口元が歪み恍惚の表情となった。
「―――私の、可愛い…リアの為だ」
私の、という言葉にイアンは即座にその口を縫いたくなるが耐える。今更ながらイアンが牢の中に入らないのは大正解だ。洗いざらい話す前に数え切れないくらいの拷問の果てに殺しそうだったからだ。
「…リアの為とは」
「私の愛するリアの純潔を貰った時…あの子は泣きながら興奮して舌まで噛もうとしたんだ。まだ私の愛が理解できないくらい幼かったのもあるが、何度もあっては困るし可哀想だろう?だから彼女が落ち着いて体と心を緩められる術を私が与えてあげた。その為に何とか作らせたんだ。あれはリアの為に作ったものだった。ついでに私の懐も潤った」
この時点で三人の殺気が一気に蔓延る。当の本人はそれを寒気と感じたのかぶるりと震えていた。
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