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獰猛孔雀の包囲網 1
しおりを挟む新しい家に戻ると、本日買い物した物全てが丁度良い感じに設置してありシュナは呆然としてしまう。
「取り敢えず大体で置いただけなので調整してください。湯は沸かしてあります」
ターニャはそう言って一礼して小屋に帰って行こうとしたので、多めに購入した夕食の一部を渡した。
シュナは食後、先に湯を浴び浴室始め改めて部屋を眺めてしまう。
(今日からここが私とイアンが住む家になる…)
そう思うとシュナの心の中がもぞもぞと嬉しさと幸せ、そして少しの恥ずかしさでいっぱいになる。
自分がこんなに幸せな空間に居られるなんて数ヶ月前は思いもしなかったのだ。
ほうっと溜息を吐きながら浴室を出るとイアンが首を傾げながらシュナに話しかけてきた。
「どうしたの?湯に浸かり過ぎた?」
「…何だか色々と感慨深くて」
口元がもごもごしながら勝手に緩んでしまう。その様子を見たイアンは優しく微笑みシュナの頬に口づけをする。
「間違いなく現実。僕のことを夢の住人だと勘違いしないでよ?」
誂いながら口にちゅっと口づけをしたイアンが浴室に消えていった。
頬を赤らめたシュナは冷蔵庫から果実水を取り出し飲みながらも、ついつい部屋を見渡しては心が温かくなり、その度に幸福な気持ちが募っていく。
少ししてからイアンが浴室から出てきた。まだ濡れた柔らかい髪を拭きながらタオルから垣間見える美しい顔と滴るような色気にシュナはどきりと鼓動が跳ね上がる。
「イアン…は何飲む?」
「んーレモン水」
「お酒じゃなくて良いの?」
「うん。今夜は僅かにでも酔いたくないから」
シュナはレモン水を渡しながら首を傾げた。
「酔いたくないの?」
「紋印刻むから」
その言葉にシュナはふと思い出す。
紋印。番絆や番縁を繋いだ者達が唯一の相手に性交中に噛むことで顕現する神秘の跡。
「あー何かそんなのがあったね…」
「えー忘れてた?」
「まさか自分がって思いもしなかったから」
シュナ自身そんなだいそれたことを望むなんて考えられなかった。
でも今はそれも望めるのだと思わず頬が綻んでしまう。
ふわりと身体が浮き、シュナは目を丸くする。同じ石鹸の香り…イアンが好む柑橘系の匂いと共に頬に口づけが何度も落ちてくる。
「…僕シュナの幼い笑顔が本当に好き」
イアンの少し低めの甘い声が耳元で囁かれ、シュナは腰がぶるりと震える。
そのまま寝室に連れて行かれ、ふわりと寝台に寝かせられた。
まだ湿っている髪を掻き分けたイアンは壮絶に色香が漂い、シュナは魅入られ惚けてしまう。ゆっくりと手を伸ばしたイアンがシュナの首から肩にかけてなぞった。
「ん、…イアン」
「孔雀族はこの辺りを噛む」
そう言って艶めかしい動きで首と肩を行き来するだけで、シュナの息遣いは荒くなっていく。
イアンの甘く美しい顔が目を伏せながら徐々に仄暗く…まるでこれから捕食するようなうっとりとした甘美な笑み、そして獰猛さが滲み出し鮮やかな橙色の瞳が爛々と輝いてくる。
「…イアン?」
「うん?」
「何かいつもと違う」
「そう?」
イアンの顔がゆっくり近づいてきて、美麗な微笑みを見せるがそこに甘さは無い。
「孔雀族…変異種はどうなるのかな…性交時…特に紋印の時や羽が顕現する時、…唯一と定めた伴侶に対してだけ…狂暴性が増して獰猛になるって聞いた。穏やかそうに見える父も兄もそうだったって」
イアンの手がシュナの身体に快感を植え付けるように触れていく。
「ん、…イア、ン…」
「…かーわいー…全部僕の。僕の為に生まれたような子…だね…」
そう言ってスッとシュナの目の前に顔を近づけたイアンの表情は。
完全に喰らう側の凶暴で瞳孔の開いた、とてつもなく美しくて魅了されてしまうような瞳と表情。
そして恐ろしい程に低くドスの聞いた声で耳元で囁いた。
「―――喰らうよ?シュナー…?」
腰にずんと響く声にシュナの身体が――――快感に震える。
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