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元クズ同士尋常に勝負 3
しおりを挟む「そう言えば蜜月って誰もが取っているの?」
綺麗に整えられた寝台で二人で寛ぎながら、シュナは以前スーランから聞いたことはあったが、自分事でないからと詳しく聞くことをしなかった。
「うん。昨日から僕もしっかり取ってるよ」
「しっかり?」
「うん。本当は最低二週間は欲しかったんだけど」
「…え?」
二日の間違いではと思ったシュナは聞き返すが、イアンは「僕とフェリウスが行かないと成功率低そうな遠征があってさ。一週間は何とか確保したけど」なんて言うものだから、もう一度聞き返す。
「い、一週間もしっかり取り過ぎでは?」
「短いよ。僕もう一度取る気満々だから」
「…ぇ」
シュナとしては昨夜致した結果、これだけの腰砕け状態が一週間続くのかと密かに戦慄く。最早ほぼ毎日歩けなくなるのではないだろうか。
「イアン…あの、それって一週間毎日とか…?」
「うん?」
イアンが緩やかにシュナを抱き締めながら頭に顔を埋めラベンダーの香りを嗅いでいるのを離し、上を見上げたシュナにそれはそれは美しい笑顔で答える。
「足りないよ」
「ぇ」
「一週間毎日じゃ足りない。だからもう一度取るんだ」
「…ぇ」
「蜜月だよ?毎日愛でなくてどうするの」
イアンの美麗な顔が近づき、緩やかな口づけが始まる。
「ん、ん、イアン…あの、―――」
「…さっきのお礼もしっかりと返さないとねぇ」
突如不穏な声色にシュナはひゅっと息を呑む。
目を開けるとそこにはまあ本当に害しかない悪い笑顔のイアン。
「ほら。僕だけしてやられるなんて、ね?」
「ちょ、ちょっと待って…!そもそもあれは―――んぅ」
「ん、…ふふ。何倍にして返そうかなぁ」
そこから始まった蜜月二日目。まだ五日もあるではないか。
声すらまともに戻っていなかったシュナは残りの五日のうち半分は絶対また啼かせてやるからな!と固く固く心に誓いながらイアンの巧みな性技に呑まれていった。
シュナはある意味新たなトラウマを植え付けられた。
蜜月という名の有り得ないほどのイアンからの『愛の証』なんて名目を付けられた性交の数々に腰砕けを始め声はずっと婆のような嗄れ声を保った。
口からわざと溢して啜られる給餌は当たり前。飲み物ですら手が震えて飲めずに口移しのみという屈辱を味わった。
唯一浴室での休息のひと時も、そもそも前提が二人とも全裸なので何もないわけがない。
シュナが意識を飛ばしている時以外は基本そこでも色々と実行される。
かといって、意識を飛ばす振りなんてプライドが許さないシュナは負けん気と根性でやり返し、喜んだイアンに返り討ちにされるという流れが定着しつつあった。
がしかし。
シュナも負けてはいられない。
イアンに多大なるトラウマ返しだ。
元巷の悪女の気合いと根性は健在であり、イアンの隙をついてあの凶悪な雄へ喰い付き、仕返しで半ば半泣きにさせ、「も、……許し―――っ」という言葉まで勝ち取った。
これは後日ちゃんとスーランに武勇伝として語り継がせるつもりである。
なんやかんや二人で楽しい蜜月を過ごし、最終日は夜だけ楽しもうという話になり、ちょっと街に繰り出した。
******************
ちりんとドアベルが鳴りデュークが扉に目を向けると、―――この店では久しぶりに見る顔が二人。
一人は華やかな容貌で最近まで巷で『正統派クズ』として異名を轟かせていた孔雀族のイアンだ。
以前来ていたキャメル色のコートよりも淡く黄色がかったコートに変わっており、明らかに隣にいる伴侶の髪の色と同じである。
もう一人はこの店に化粧をしないで来ることは一度もなかった。
化粧を殆どしてない彼女―――『悪女』の異名をもつリアことシュナは、少し大人っぽくも色気を抑えたワンピースにバターブロンドの髪は下ろしている。
この姿を見ても彼女が『リア』だと気づくものはそう居ないだろう。それだけシュナの化粧後の顔は『化ける』のだ。
「デューク、久しぶりー」
「そうだな」
シュナはにこりと微笑み、カウンターにイアンと共に腰掛ける。
「ギムレットー」
「僕はネグローニ」
デュークは頷いて準備を始める。
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