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不器用な二人 4
しおりを挟む『わかった。迷惑じゃなくて、心配した』
『…心配?』
『そう。でもそうさせたのは俺。勘違いで傷つけてごめん』
『勘違い…婚約者候補のことですか?』
『それは俺も知らなかった。ゼルネストとのこと』
その言葉に無意識に強張ったウルスナの手をリグリアーノが宥めるように撫でてくれる。
『次の日ゼルネストから聞いた。店で泣いていた理由』
あの時ウルスナは興奮しながら自分の気持ちを吐露してしまっていた。
『誰を想って性交しているか。あの時それがゼルネストだと思った』
あの場面でリグリアーノが怒った理由にウルスナは焦って文字を書く。
『違います。相手はゼルネストさんではありません』
『うん。わかってる』
わかってる。何をだろう。
何故ゼルネストだからリグリアーノは怒ったのだろう。友人が道具と関わることが不快だったからだろうか。
『性交相手を俺だと思いながらやっていたの?』
「っ…」
書かれた言葉にウルスナは思わず手を引こうとするが、手をしっかりと持たれ優しく擦られる。
(思ったことを書くと私は言った。…最後かもしれないのなら)
道具としてしか居られないウルスナが唯一今だけ『人』になってしまっても良いのではないだろうか。
人の想いを育んでしまった哀れな道具として最後くらいちゃんとけじめを付けてしまおうとウルスナは少し震える指を動かす。
『はい。道具の私が人になることはないので、せめて頭の中だけでも自由でありたいと身勝手に想像してました。気持ち悪くてごめんなさい』
リグリアーノの手が今度は止まる。
ウルスナはもう書いてしまったこととはいえ、嫌われるのは苦しいなぁと思いながらも、大丈夫だと書こうとするとリグリアーノの指が動く。
『ゼルネストが相手だと思った俺は勘違いしてお前を滅茶苦茶に犯した。お前が俺を好きだと思っていた分逆上した。ずっと自惚れていた。お前は俺のだって』
ウルスナは首を傾げた。
『私はずっとリノさんのもので道具でした。今までの性交相手がリノさんだとわかって喜びましたし最後の時も道具として居られなくなることは辛かったけど、リノさんと性交出来たことが嬉しかったくらいです』
突如唇に何かが触れる。
指よりも温かくて柔らかい何か。
そして目隠しがゆっくりと外された目の前に見えるのはぼやけたリグリアーノの顔。
「っ…!」
「俺の為に目隠ししてくれたの?」
少し離れたリグリアーノの顔を見たウルスナは今起きたことが信じられなくて目と口をまん丸くしてしまう。
「え、今…」
「うん?これ?」
そう言ったリグリアーノの顔が近づきちゅっとリップ音を立てて口づけをされたウルスナはポカンと口を開けてしまう。
そんな顔を見たリグリアーノは僅かに眉を下げて口元が緩むのを目の前で見てしまったウルスナは目も口もまん丸くしてしまう。
「俺が勝手に感情を暴走させて勘違いで無体な事して本当に悪かった」
「無体…」
「そう。お前の言い分も聞かずに言葉と行動で傷つけた。あまりに自己中心的過ぎた」
リグリアーノがウルスナの頬を包む。
「誰かに心を持っていかれることなんてなかったから、どうして良いかわからなかったし、ずっと抵抗して…あの時も頭に血が昇って道具として終わりだって言い捨てた」
包んだ頬を引き寄せたリグリアーノは額をくっつける。
「…一角獣族は執着が獣人随一だと言われている。一人を想うとそれしか考えられなくなる。おかしくなる。…だからずっと敬遠してた―――けど抗えなかった」
それは一体どういうことなのだろう。
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