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1章
21 金色の懐中時計①
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翌日、アリシアは悩んでいた。
昨日レイヴンから贈られた、大量すぎる仲直りの贈り物。
非のないレイヴンがあれだけ贈ってくれたのに、アリシアが何もしないわけにはいかない。
だけど何を贈ればいいのだろうか。
レイヴンは。アリシアがいつも素敵なものを贈ってくれていたと言っていたが、それは違う。
アリシアがこれまで贈ってきたものに、レイヴンを思って選んだものはない。
確かにアリシアにも最初の2・3年はレイヴンに気に入って欲しい、喜んで欲しいという気持ちがあった。
だけどそれがどんなに悩んで選んだものだとしても、それを表面には表さず、気づかせないことこそが重要なことだったのだ。
互いに儀礼的な態度で手渡し、儀礼的な態度でお礼を言われておしまいである。
そもそも王太子であるレイヴンが、欲しいと思ったもので手に入らないものなどない。
レイヴンは、アリシアが用意することができるどんなものよりも素晴らしい品を自分で手に入れることが出来るのだ。
そんな相手に何を贈っても同じことだ。
早々にそんな考えに至ったアリシアは、レイヴンの好みを気にすることを止め、世間的に見て貴族令嬢が婚約者に贈ってもおかしくないと思えるものを選ぶようになった。
気に入らなければわからない様に処分してくれればいい。
そんなことを思っていた。
レイヴンは、お菓子などの、形が残らないものしか贈れなかったと悔やんでいたけれど、レイヴンが贈ってくれていたものは、アリシアが用意していた形が残るだけで少しも相手のことを考えていない贈り物より、よほど素晴らしい贈り物だった。
今選んでいるものが、初めて本当の意味での贈り物といえるだろう。
「…困ったわ」
「殿下はアリシアに贈られたものならなんでも喜ぶと思うけどね」
レオナルドは2日続けて夫婦の贈り物選びに付き合わされていた。
昨日のレイヴンは、「アリシアに似合いそうだ」と目についたものを次から次へと購入し、今日のアリシアは何も選べないでいる。
まったく困った夫婦である。
レオナルドは、アリシアがレイヴンへの贈り物を必死に選んでいた時、傍についていた。
アリシアとレオナルドでは、レオナルドの方が早くからレイヴンと交流がある。
レイヴンへの贈り物に悩むアリシアには良い相談相手だったのだ。
レオナルドは、「殿下はどんなものがお好きかしら?」「何色がお好きなのかしら」と頭を悩ませる妹を、微笑ましく見守っていた。
それなのにアリシアは、次第にレイヴンの私的な部分に興味を示さなくなり、贈り物も貴族令嬢として相応しい物を如才なく選ぶようになっていった。
これは良い変化なのかな?
眉根に少ししわを寄せて、真剣に悩んでいるアリシアを見ると笑みが漏れた。
「これはどうかな?」
並べられたものの中から1つを手に取り、アリシアに見せる。
「懐中時計?」
それは金色に輝く懐中時計だった。
つるりとした帳面は光沢のある金色で、手渡されるとしっかりした重みがある。
蓋を開くと高級感のある文字盤に、12の数字の代わりに緑色の石が埋められていた。
小さいがエメラルドだ。
「殿下は気に入ると思うよ。実用的だし、いつも身につけていられるしね」
「…他の色は?」
一緒に並んでいた銀色の懐中時計には紫の石が使われていた。
アメジストのようだ。
「それじゃ駄目だよ。わかってるよね?」
レオナルドがそう言うと、アリシアは目を伏せた。
金色はレイヴンの髪の色で、緑はアリシアの瞳の色だ。
レイヴンの色の中に自分の色がついたものを贈るのは、独占欲を見せているようでお気に召さないらしい。
「蓋を開けないとエメラルドは見えないから、人目に触れることはあまりないと思うよ」
まずはこれくらいからだろう。
開いた距離は徐々に縮めるしかない。
アリシアはしばらく躊躇った後、その懐中時計に触れた。
渋る気持ちは残るものの、レオナルドを信じてその懐中時計に決めた。
昨日レイヴンから贈られた、大量すぎる仲直りの贈り物。
非のないレイヴンがあれだけ贈ってくれたのに、アリシアが何もしないわけにはいかない。
だけど何を贈ればいいのだろうか。
レイヴンは。アリシアがいつも素敵なものを贈ってくれていたと言っていたが、それは違う。
アリシアがこれまで贈ってきたものに、レイヴンを思って選んだものはない。
確かにアリシアにも最初の2・3年はレイヴンに気に入って欲しい、喜んで欲しいという気持ちがあった。
だけどそれがどんなに悩んで選んだものだとしても、それを表面には表さず、気づかせないことこそが重要なことだったのだ。
互いに儀礼的な態度で手渡し、儀礼的な態度でお礼を言われておしまいである。
そもそも王太子であるレイヴンが、欲しいと思ったもので手に入らないものなどない。
レイヴンは、アリシアが用意することができるどんなものよりも素晴らしい品を自分で手に入れることが出来るのだ。
そんな相手に何を贈っても同じことだ。
早々にそんな考えに至ったアリシアは、レイヴンの好みを気にすることを止め、世間的に見て貴族令嬢が婚約者に贈ってもおかしくないと思えるものを選ぶようになった。
気に入らなければわからない様に処分してくれればいい。
そんなことを思っていた。
レイヴンは、お菓子などの、形が残らないものしか贈れなかったと悔やんでいたけれど、レイヴンが贈ってくれていたものは、アリシアが用意していた形が残るだけで少しも相手のことを考えていない贈り物より、よほど素晴らしい贈り物だった。
今選んでいるものが、初めて本当の意味での贈り物といえるだろう。
「…困ったわ」
「殿下はアリシアに贈られたものならなんでも喜ぶと思うけどね」
レオナルドは2日続けて夫婦の贈り物選びに付き合わされていた。
昨日のレイヴンは、「アリシアに似合いそうだ」と目についたものを次から次へと購入し、今日のアリシアは何も選べないでいる。
まったく困った夫婦である。
レオナルドは、アリシアがレイヴンへの贈り物を必死に選んでいた時、傍についていた。
アリシアとレオナルドでは、レオナルドの方が早くからレイヴンと交流がある。
レイヴンへの贈り物に悩むアリシアには良い相談相手だったのだ。
レオナルドは、「殿下はどんなものがお好きかしら?」「何色がお好きなのかしら」と頭を悩ませる妹を、微笑ましく見守っていた。
それなのにアリシアは、次第にレイヴンの私的な部分に興味を示さなくなり、贈り物も貴族令嬢として相応しい物を如才なく選ぶようになっていった。
これは良い変化なのかな?
眉根に少ししわを寄せて、真剣に悩んでいるアリシアを見ると笑みが漏れた。
「これはどうかな?」
並べられたものの中から1つを手に取り、アリシアに見せる。
「懐中時計?」
それは金色に輝く懐中時計だった。
つるりとした帳面は光沢のある金色で、手渡されるとしっかりした重みがある。
蓋を開くと高級感のある文字盤に、12の数字の代わりに緑色の石が埋められていた。
小さいがエメラルドだ。
「殿下は気に入ると思うよ。実用的だし、いつも身につけていられるしね」
「…他の色は?」
一緒に並んでいた銀色の懐中時計には紫の石が使われていた。
アメジストのようだ。
「それじゃ駄目だよ。わかってるよね?」
レオナルドがそう言うと、アリシアは目を伏せた。
金色はレイヴンの髪の色で、緑はアリシアの瞳の色だ。
レイヴンの色の中に自分の色がついたものを贈るのは、独占欲を見せているようでお気に召さないらしい。
「蓋を開けないとエメラルドは見えないから、人目に触れることはあまりないと思うよ」
まずはこれくらいからだろう。
開いた距離は徐々に縮めるしかない。
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