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2章
2 レイヴン色のドレス②
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それから数刻経ち、アリシアの準備が整った頃レイヴンが迎えに来た。
出迎えたアリシアを見て感嘆の声を上げる。
「綺麗だよ、アリシア。本当に君は美しい…」
空色に金糸の刺繍が入ったドレスはアリシアの白い肌を際立たせていて、透き通るように美しい。
アップに纏められた髪に飾られた、金細工にサファイアの髪飾りは上品なだけではなく華やかさもみせている。纏められた髪に編み込まれた白いレースもまだ若いアリシアに似合っていて可愛らしい。
薄い水色のレースで作られたオペラグローブからは、濃紺のネイルに上品な金のラメが輝いているのが見える。
これは夜になる直前の空に星が輝いている様にも見えた。
ハイヒールはドレスと同じ空色だ。
こちらは他に飾りがなく、すっきりしている。
そして一際大きなサファイアを中心に、小さなダイヤモンドとサファイアがスパンコールの様に連なった首飾りが、大きく開いた胸元を上品に飾っている。
イアリングにも同じく金の縁にはめ込まれたサファイアが輝いていた。
上から下までレイヴンの色だ。
「ああ、なんて美しいんだろう」
夢を見ているかのように呟くレイヴンの目が潤んでいるように見えて、アリシアは驚いた。
このドレスに思い入れがあるのは知っていたけれど、そこまでのことなのだろうか。
右手のオペラグローブを外してレイヴンの目元に手をやると、その手を取られて愛おしそうに口づけられる。
レイヴンは、アリシアが持っているのがシェルツ国で作らせた扇だと気がついた。
流行遅れの扇である。
「この扇は…」
「子に伝えるものというのは、母が大切に使っていたものですわ」
なんでもないことの様にアリシアが答える。
レイヴンはドレスが着崩れないようそっと引き寄せて頬に口づけた。
レイヴンにエスコートされて会場の大広間へ進む。
「王太子殿下、妃殿下のご入場です」
入場を告げる声と同時に音楽が鳴り響く。
広間に揃った貴族たちの注目が集まるのが分かった。息をのむ声がいくつも聞こえてくる。
貴族達は、皆最近の噂を聞いている。
そこにこの上から下までレイヴン色の出で立ちである。ひそひそと囁き合う声があちらこちらから聞こえていた。
2人が王族用の席に着くと一度音楽が止まる。
「国王陛下、王后殿下のご入場です」
一際大きな声が上がり、音楽が鳴り響く。
皆の注目が入場口に集まり、国王と王妃が入場してくる。
その途中で、マルグリットはアリシアと目が合うとにっこりと笑った。
レイヴンと一緒に挨拶へ行くと、マルグリットが嬉しそうに笑っている。
「今日はとても素敵なドレスね。色々噂は聞いているけれど、仲睦まじい姿を直接見られて嬉しいわ」
「恥ずかしいですわ」
アリシアが扇で顔を隠し、恥ずかし気に視線を落とす。
その様子を見て、マルグリットは驚いていた。
「そんな表情を見せてくれるようになったのね。良かったこと。私の息子の気持ちが少しは届いたのかしら」
「母上!」
「あらあら、こちらも随分表情豊かになったこと」
レイヴンが怒ったような声を出すと、マルグリットはコロコロと笑う。
確かにこれまで2人は、決まった表情で決まった挨拶をするだけだった。
「2人とも可愛らしいこと。可愛らしい私の子どもたち」
マルグリットは嬉しそうに笑い、レイヴンは怒ったような顔をして、アリシアは恥ずかしそうに俯いている。
間違いなくこれまでにはないことで、周囲を囲んだ貴族たちは一様に驚いていた。
出迎えたアリシアを見て感嘆の声を上げる。
「綺麗だよ、アリシア。本当に君は美しい…」
空色に金糸の刺繍が入ったドレスはアリシアの白い肌を際立たせていて、透き通るように美しい。
アップに纏められた髪に飾られた、金細工にサファイアの髪飾りは上品なだけではなく華やかさもみせている。纏められた髪に編み込まれた白いレースもまだ若いアリシアに似合っていて可愛らしい。
薄い水色のレースで作られたオペラグローブからは、濃紺のネイルに上品な金のラメが輝いているのが見える。
これは夜になる直前の空に星が輝いている様にも見えた。
ハイヒールはドレスと同じ空色だ。
こちらは他に飾りがなく、すっきりしている。
そして一際大きなサファイアを中心に、小さなダイヤモンドとサファイアがスパンコールの様に連なった首飾りが、大きく開いた胸元を上品に飾っている。
イアリングにも同じく金の縁にはめ込まれたサファイアが輝いていた。
上から下までレイヴンの色だ。
「ああ、なんて美しいんだろう」
夢を見ているかのように呟くレイヴンの目が潤んでいるように見えて、アリシアは驚いた。
このドレスに思い入れがあるのは知っていたけれど、そこまでのことなのだろうか。
右手のオペラグローブを外してレイヴンの目元に手をやると、その手を取られて愛おしそうに口づけられる。
レイヴンは、アリシアが持っているのがシェルツ国で作らせた扇だと気がついた。
流行遅れの扇である。
「この扇は…」
「子に伝えるものというのは、母が大切に使っていたものですわ」
なんでもないことの様にアリシアが答える。
レイヴンはドレスが着崩れないようそっと引き寄せて頬に口づけた。
レイヴンにエスコートされて会場の大広間へ進む。
「王太子殿下、妃殿下のご入場です」
入場を告げる声と同時に音楽が鳴り響く。
広間に揃った貴族たちの注目が集まるのが分かった。息をのむ声がいくつも聞こえてくる。
貴族達は、皆最近の噂を聞いている。
そこにこの上から下までレイヴン色の出で立ちである。ひそひそと囁き合う声があちらこちらから聞こえていた。
2人が王族用の席に着くと一度音楽が止まる。
「国王陛下、王后殿下のご入場です」
一際大きな声が上がり、音楽が鳴り響く。
皆の注目が入場口に集まり、国王と王妃が入場してくる。
その途中で、マルグリットはアリシアと目が合うとにっこりと笑った。
レイヴンと一緒に挨拶へ行くと、マルグリットが嬉しそうに笑っている。
「今日はとても素敵なドレスね。色々噂は聞いているけれど、仲睦まじい姿を直接見られて嬉しいわ」
「恥ずかしいですわ」
アリシアが扇で顔を隠し、恥ずかし気に視線を落とす。
その様子を見て、マルグリットは驚いていた。
「そんな表情を見せてくれるようになったのね。良かったこと。私の息子の気持ちが少しは届いたのかしら」
「母上!」
「あらあら、こちらも随分表情豊かになったこと」
レイヴンが怒ったような声を出すと、マルグリットはコロコロと笑う。
確かにこれまで2人は、決まった表情で決まった挨拶をするだけだった。
「2人とも可愛らしいこと。可愛らしい私の子どもたち」
マルグリットは嬉しそうに笑い、レイヴンは怒ったような顔をして、アリシアは恥ずかしそうに俯いている。
間違いなくこれまでにはないことで、周囲を囲んだ貴族たちは一様に驚いていた。
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