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2章
32 当主の役割③
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「あら、これはあなたのせいじゃないわ。すべてデミオン殿が仕出かしたことよ。公爵家はあなたなら立て直せると信じているから援助をしているの」
アリシアはジェーンへにっこり笑ってみせる。
また慌てた声を上げたのはジョッシュだ。
「侯爵家が火の車だなんて!そんなこと聞いていませんよ!!」
「婚家の財政状況を調べるなんて当然のことでしょう?あなたそんなこともしていないの?」
焦って喚き立てるジョッシュに、アリシアの視線は益々冷たくなっていく。
縁続きになる家の情報収集は、どこの家でもしている当然のことだ。
財政状況にしても時が経てば変わっていく。
婚約を結んだ時点では裕福だった家も、実際に婚姻を結ぶまでの間に傾いていることなんて、いくらでもあることだ。
それを、相手が教えてくれるまで待っているというのか。
「まあだから、ジェーンの結婚を待っていたのは事実だ。父との取り決めでジェーンが結婚し、次の当主が決まった時点でデミオン殿は当主の座を退くことになっている。財産を食い潰すばかりのデミオン殿が当主でいても良いことはないからね。それが資金援助をする条件の1つだ」
「だからあなたは、デミオン殿にとって最高の駒だったのでしょうね」
アリシアが溜息を吐く。
「当主の座を退いたら侯爵家の全権がジェーンとその夫に移ってしまって、これまでのようにお金を使えなくなるもの。その夫がしっかりしていて自分の妻をちゃんと守るような人なら、ジェーンのこともこれまでのような酷い扱いはできなくなるわ。私たちはそれを期待していたのだけど…。エミリーに誑し込まれたあなたは、当主になってもデミオン殿の言いなりだったでしょうね」
「そんなことは…」
ない、とは言えなかった。
エミリーを信じ、ジェーンを疎ましく思っていた先ほどまでのジョッシュであれば、結婚した後も義父や義母から冷たく当たられるジェーンを庇うことなどしなかっただろう。いい気味だと鼻で笑い、エミリーの腰を抱きながら眺めていたかもしれない。
それに侯爵家にはいかにも金がかかっているとわかる調度品が溢れていて、侯爵夫妻やエミリーはいつも派手な格好をしている。
結婚した後は侯爵家で自分も派手な生活が送れるのだと思っていた。
デミオンやアンジュの金遣いの荒さを咎めるどころか、一緒になって散財していただろう。
「で、ですがもう、僕は真実を知りました。決してデミオン殿の言いなりにはなりません!結婚が必要なら、このまま結婚した方がいいでしょう!!」
「ジェーン嬢が婚約を解消するなら、新しい婚約者にノティスはどうかという話がある」
「ノティス殿下?!」
レイヴンから突然出てきた名前に、アリシアとジェーンは驚いて声を上げた。
レオナルドとロバートも目を見開いている。
「まだ内々の話だが、ノティスは学園を卒業したら王籍を離れて臣籍に下ることが決まっているんだ」
アリシアはジェーンへにっこり笑ってみせる。
また慌てた声を上げたのはジョッシュだ。
「侯爵家が火の車だなんて!そんなこと聞いていませんよ!!」
「婚家の財政状況を調べるなんて当然のことでしょう?あなたそんなこともしていないの?」
焦って喚き立てるジョッシュに、アリシアの視線は益々冷たくなっていく。
縁続きになる家の情報収集は、どこの家でもしている当然のことだ。
財政状況にしても時が経てば変わっていく。
婚約を結んだ時点では裕福だった家も、実際に婚姻を結ぶまでの間に傾いていることなんて、いくらでもあることだ。
それを、相手が教えてくれるまで待っているというのか。
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「だからあなたは、デミオン殿にとって最高の駒だったのでしょうね」
アリシアが溜息を吐く。
「当主の座を退いたら侯爵家の全権がジェーンとその夫に移ってしまって、これまでのようにお金を使えなくなるもの。その夫がしっかりしていて自分の妻をちゃんと守るような人なら、ジェーンのこともこれまでのような酷い扱いはできなくなるわ。私たちはそれを期待していたのだけど…。エミリーに誑し込まれたあなたは、当主になってもデミオン殿の言いなりだったでしょうね」
「そんなことは…」
ない、とは言えなかった。
エミリーを信じ、ジェーンを疎ましく思っていた先ほどまでのジョッシュであれば、結婚した後も義父や義母から冷たく当たられるジェーンを庇うことなどしなかっただろう。いい気味だと鼻で笑い、エミリーの腰を抱きながら眺めていたかもしれない。
それに侯爵家にはいかにも金がかかっているとわかる調度品が溢れていて、侯爵夫妻やエミリーはいつも派手な格好をしている。
結婚した後は侯爵家で自分も派手な生活が送れるのだと思っていた。
デミオンやアンジュの金遣いの荒さを咎めるどころか、一緒になって散財していただろう。
「で、ですがもう、僕は真実を知りました。決してデミオン殿の言いなりにはなりません!結婚が必要なら、このまま結婚した方がいいでしょう!!」
「ジェーン嬢が婚約を解消するなら、新しい婚約者にノティスはどうかという話がある」
「ノティス殿下?!」
レイヴンから突然出てきた名前に、アリシアとジェーンは驚いて声を上げた。
レオナルドとロバートも目を見開いている。
「まだ内々の話だが、ノティスは学園を卒業したら王籍を離れて臣籍に下ることが決まっているんだ」
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