【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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2章

45 ハンナとの再会③

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「アリシアお嬢様!王太子殿下がいらっしゃるなら教えてくださらないと…っ!いえいえっ王太子妃殿下!」

 慌てふためいて言動がおかしくなったハンナにアリシアは苦笑する。
 その後ろでレオナルドとロバートが、密かにバスケットを開けてクッキーとマフィンを食べていた。保温ポットに入れられた紅茶も飲んでいる。
 2人で頷き合うと、何事もなかったかのようにバスケットを閉じた。
 さり気なく毒見をしているのだ。

 ハンナは昔から侯爵家で下働きをしていて信頼のできる女性だが、今ここにはレイヴンがいて、アリシアは王太子妃になっている。

「ごめんね」

 ハンナに聞こえないよう小声で謝られたが、レイヴンが謝ることなどなにもない。
 少し前にアリシアは心得違いで沢山の人に迷惑を掛けてしまった。
 レオナルドやロバートは、言われるまでもなく心得ているというだけだ。
 アリシアは小さく頭を振ることでレイヴンに答えた。

「あの家の管理をしてくれているハンナですわ」

 ジェーンがレイヴンにハンナを紹介する。

「ハンナ、レイヴン殿下よ」

 こちらは紹介するまでもない。
 ハンナはがくがくと何度も頭を下げていた。

「レイヴンだ。驚かせてすまない。知っているとは思うが、アリシアの夫だよ。これからよろしく頼む」

「あわわわわっ!まさか王太子殿下にお言葉をいただく日が来るなんて…!」

 レイヴンは優しく声を掛けたが、それでもハンナには畏れ多いことだった。

 侯爵家で働いているとは言ってもハンナは下働きで、侯爵家を訪れる客人と顔を合わせることもほとんどない。
 むしろ客人の目に入ってはいけない存在である。
 最もデミオンの代になってからは、侯爵位以上の家には敬遠されているので、最近では訪ねてくる客人も稀になっているのだが。
 
「普通にしてちょうだい、ハンナ。レイヴン様が困ってしまうわ」

「そうだよ、ハンナ。殿下は今、『アリシアの夫』だと名乗れて幸せの絶頂にいるんだから、邪魔をしないようにね」

「へえっ?!」

「お兄様!おかしなことを言わないで!!」

 当然のことの様におかしなことを言うレオナルドに、ハンナが素っ頓狂な声を出して顔を上げた。
 ハンナの目の前にはレオナルドを睨むアリシアと、目元を赤く染めたレイヴンがいる。

「あらあら、まあまあ!」

 目元を赤く染めるレイヴンを見た瞬間、王太子殿下に対する畏れはどこかへ行ってしまったようだ。

「アリシアお嬢様の御夫君にお会いできる日が来るとは、思ってもみませんでした。どうかお嬢様のことをよろしくお願い致します」

「ああ。アリシアを心から大切にするつもりだよ」

 レイヴンの蕩けるような笑顔を直視したハンナは、後ろに倒れそうになっていた。

 自己紹介が終わったところで、バスケットを中心に輪になって座る。
 ジェーンはロバートが広げた大判のハンカチーフの上に座っていた。
 レイヴンがその様子を見ていると、ロバートが少し笑う。

「ここに来ると大抵こうなりますから」

 ここでは芝生の上でバスケットを広げているのが、いつも通りということである。




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