【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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2章

51 『花の王国』②

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「王太子ご夫妻がそんなにリトマインをお気に入りなら、僕の商会で扱えるようにしたいですね」

「あら、ロイ兄さまのところで仲介をしてくれるなら購入しやすくなるわ。是非お願い致します」

 今は単なる言葉遊びだが、ロバートならそのうち本当に扱うようになるかもしれない。
 アリシアは未来を思い、ふふっと笑う。
 レイヴンはアリシアの好なものを知れた喜びと、自分は何も知らないのだという実感で複雑だ。

「…アリシアはリトマインが好きなんだね」

「リトマインは憧れですわ」

 そんなレイヴンにもアリシアは笑顔だった。

「それじゃあハーヴィーはどうかな?」

「やめてくださいませ、お兄様。気分が悪くなるわ」

 レオナルドが揶揄うように言うと、途端にアリシアは顔を顰めた。

 ハーヴィーもリトマインと同じく高級な調度品を扱っているメーカーだ。
 但しこちらはデザインが派手で品が悪い。
 高位貴族よりも男爵や子爵などの、どちらかというと成り上がり貴族に人気のあるメーカーで、成り上がり貴族がその財力を誇示する為に使用していると言って良い。

 そしてハーヴィーは、アンジュが愛用しているメーカーなのだ。
 元は男爵令嬢のアンジュにはぴったりなのだろう。
 先ほど見たジェーンの婚礼調度品の中にもハーヴィーの品が多数あった。

「デミオン殿もあんな悪趣味なものをよく許すわね。とてもお父様と兄弟とは思えないわ」

「それはレイヴン殿下と同じなんじゃないかな?」

「え?」

「アンジュが好きなものは全て好きだよ」

「やめてくださいませ!!」

 レオナルドがレイヴンの口真似をして言うと、アリシアはゾッとしたように背筋を震わせた。
 一斉に笑い声が起こる。レイヴンも苦笑していた。

「そうだわ。離宮では私もジェーンの様に花の王国を作ろうかしら」

「花の王国?」

「この庭園ですわ」

 レイヴンが訊くとアリシアは楽しそうに笑うが、それでは全然わからない。
 レイヴンは困ったように首を傾げた。
 
「『花の王国』という絵本があるのですが、殿下はご存知ですか?」

 見兼ねたレオナルドが助け舟をだすが、それでもレイヴンには分らない。
 首を振ると、レオナルドは「まあ女児向けの絵本ですからね」と言って絵本のあらすじを話し出した。

『花の王国』とはこんなお話だ。


 主人公の幼い少女、ミアが自宅の庭で遊んでいると、初めて見る花びらがひらひらと舞っていた、
 ミアはその花びらを掴もうとするが、なぜか掴めない。掴もうとするとひょいと避けてしまうのだ。
 ミアはその花びらを追いかけていく。
 庭の垣根を超えると知らない森の中にいた。
 
 ミアは森の中でも花びらを追い続ける。
 やがて開けた場所に出ると、そこにはミアと同じ年くらいの少女がいた。
 少女は花冠をしていて、その少女の周りにはミアがこれまで見たことがない花々が沢山咲いている。
 その少女は花の世界のお姫様だったのだ。

 お姫様の周りでは花の妖精たちが楽しそうに遊んでいる。実はミアが追ってきた花びらも花の妖精だったのだ。
 ミアはそこでお姫様や妖精たちと楽しく遊ぶ。
 そしてここに咲いている知らない花も、世界のどこかで咲いているのだと教えられた。

 楽しい時間は過ぎてミアは家に帰る。
 その経験が忘れられないミアは自宅の庭で花を育て始めた。

 成長して大人になったミアは、あの時見た、ここでは見られない花を探しに旅に出る。
 そうして色んな国や地域を訪れたミアは、そこで見つけた花を通してその土地の人々と親交を深めていくのだ。



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