【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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2章

63 アリシアの秘密②

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 ジェーンがアンジュに不当な扱いを受けていること。
 父親のデミオンもそれを咎めないこと。
 そしてそんな2人をルトビア公爵家の2人の夫人が嫌っていること。

 元々デミオンが結婚直後からアンジュを囲っていた経緯もあり、アンジュは社交界で嫌われている。
 その上ルトビア公爵家の2人の夫人に嫌われているのだ。これは公爵家自体に嫌われていると言っていい。

 この時からアンジュは、上位貴族の社交場から完全に弾き出された。
 アンジュがお茶会や夜会に参加していても常識のある者は避けて通る。話し掛けてくるのは黒い噂がある者や下心のある低位貴族だけになった。
 
 そしてルトビア公爵家に嫌われたデミオンと商取引をしたい貴族もいない。
 これまで取引を持っていた貴族もどんどん手を引いていき、デミオンの事業は破綻した。
 元々天候不良が重なって領内でも大きな災害が続いていた。
 キャンベル侯爵家の財政は急激に悪化していたのだ。
 
 サンドラへの嫉妬、社交界での孤立、財政の悪化。
 それらのストレスがジェーンへの暴力として現れたのだった。

「祖母もこのことについては反省していました。デミオン殿とアンジュへ罰を与えるつもりのことが、ジェーンに被害を及ぼすとは思っていなかったのです」

 それはレイヴンも同じだった。
 エミリーとジョッシュを引き離す為にエミリーを使節団へ入れることにした。
 それがジェーンへの暴力へと繋がった。

 不満が家の中の弱者へ向けられる。
 育ちの良い彼らは、家の中でそんなことが起こるとは考えが及ばないのだった。

「今回のことは僕たちにも責任があります。デミオン殿はあの時2度とアンジュに暴力を振るわせないと誓っていました。アンジュの身の安全や資金援助が掛かっているのだからそれを破るとは思ってもみなかった…。結局はバレなければいいと思っていたのか」

 それに結婚式は迫っているので隠すのは半年程で良かったのだ。

 結婚式のドレスで人々の前に痣を晒しても、結婚と同時に爵位を譲るのだからもう関係ないと思ったのだろう。
 デミオンやアンジュの言いなりになったジョッシュなら、アダムに睨まれていても義両親を放逐することはない。
 そしてジェーンの夫へ爵位が移ったことでアダムが資金援助を打ち切ることもない。元々ジェーンが領内の財政を立て直すまで援助は続く予定なのだ。

 デミオンの思惑を悟って、レオナルドの中で腹立たしさが一層募ってきた。

「私が悪いのよ。私が間違えたのだわ…」

 アリシアの力のない声に、驚いてレイヴンたちはアリシアを見た。
 ぽろぽろと涙を落としている。

「ア、アリシア様?!」

「アリシア?!どうしたんだ?!」

 慌てるレイヴン達に視線を向けることなく、アリシアは涙をこぼし続けた。

「私があの男を信じたからだわ。あの男が2度としないと誓うから…。私はそれを信じてしまった…」

「父のことですか?あの取り決めはお祖母様や公爵様、そして私が決めたことで、皆が信じていました。アリシア様のせいではありません」

 必死に宥めようとするジェーンに、アリシアはかぶりを振る。

「そうじゃないわ。あの時…私たちが17歳の時にも、デミオン殿が誓いを破ったことがあるでしょう?」

 アリシアの言葉にジェーンの顔色がさっと変わった。




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