【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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2章

83 慟哭③

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「一緒に夜会や舞踏会に出ていても最初しか一緒にいなかった」

「それは社交が私たちの役目だからですわ。ジョッシュ殿はエスコートさえしませんでした。レイヴン様とは違います」

 アリシアがそういうと、レイヴンは哀しそうに笑った。

「一緒にいても社交はできるよ。この前の舞踏会で初めてずっと一緒にいたよね。あの日は楽しかった。初めて舞踏会が楽しいと思ったよ。…その後嫌なことがあったけどね」

 この前の舞踏会とは、ジョッシュとエミリーが一緒にいるのを見た時だ。
 あの舞踏会では初めてファーストダンスが終わった後もレイヴンと一緒に過ごしていた。
 ……確かに、一緒にいても社交はできていた。

「2人で一緒に出掛けたこともない。学生時代、婚約者がいる者は放課後一緒に街へ出掛けたりしていたのに、僕たちは一度も出掛けなかった」

「学生時代は妃教育がありましたもの。王妃様のお茶会でお会いしていましたわ。妃教育がない時は一緒にパーティーや晩餐会に出ていましたでしょう?」

「…それはデートじゃないよ」

「デート?」

 アリシアが目をぱちくりさせる。

「デートっていうのはね、恋人が一緒に過ごして愛情を深めたり、確かめ合ったりするんだ。お互いが好きなことを知ったり楽しいことを共有したりするんだよ。パーティーや晩餐会でそんなことはできないよ。母上のお茶会でも僕たちはそんな話をしなかった」

 確かにその通りだ。
 妃教育の後に行われていたお茶会にレイヴンが参加することはよくあった。
 元々レイヴンとアリシアの交流を深める為に、マルグリットがレイヴンを呼ぶようになったのだ。

 だけどそこで実のある話をしたことはない。
 そこで交わされる会話は常に表面的であり、互いに笑っていながらも本当に楽しかったことなどなかったように思う。

「公爵邸にアリシアを訪ねたこともない。僕はアリシアが妃教育の無い日に寝込むほど疲れていたなんて知らなかった」

 1度でも休みの日にアリシアを訪ねていれば。
 アリシアはいつも頑張りすぎなほど頑張っていると知っていたのに。

「あら。レイヴン様、いらっしゃっていましたわ」

「それはレオナルドに会う為だろう?アリシアを訪ねたことはないよ」

 本当はアリシアに会いたかったのだけれど。

 あの時のアリシアは疲れて横になっていたのにレイヴンを出迎える為に身支度を整えていたのか。
 それなのに優しい言葉1つ掛けないなんて、マリアンが怒るのも無理はない。
 少しでも話をしていればーー休日をどのように過ごしているのか訊いていればわかったはずだ。

「ジョッシュ殿も侯爵邸を訪ねてエミリー嬢とばかり過ごしていた。僕と同じだよ」

「レイヴン様が一緒に過ごしていたのはお兄様ですわ。お兄様ではなく、お姉様ならいけないことだったかもしれませんが…。ジョッシュ殿とは違いますわ」

「学園で噂が流れても否定しなかった」

「あれは…。噂を否定した方が邪推して騒ぐ方もいるものです。何もしないことが最良のこともございますわ」

 レイヴンはくすっと笑う。

「本当にアリシアは優しいね。そうやって何でも許してくれるんだね」

 レイヴンのアリシアへの態度は婚約者として最低のものだった。
 それを今日、はっきりと認識することができた。
 だけどアリシアはそれをすべて否定する。
 それはそんなことでは傷つかない程、レイヴンに興味がないからだ。



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