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2章
89 新しい始まり③
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体中に痣があるジェーンはコルセットをつけられない。
コルセットは侍女が後ろからきつく締め上げてつけるものだ。そうするとコルセットが押し付けられた部分の鬱血が酷くなってしまう。
今回は暴力を受けていた期間が約ひと月と前回に比べて短かったことと、挙式準備を理由に邸に引き籠っていたのでほとんどコルセットをつけずに過ごすことが出来ていた。
だから前回ほど胸や背中、腹部の鬱血は酷くない。
ジョッシュとの初夜の為に、少しでもマシになるようにと努めた結果とも言える。
マルグリットは、王宮で過ごす間も怪我が治るまではコルセットをつける必要はないと思っていた。きちんとした理由があることなのだから、咎めるつもりはない。
だけど使節団の研修には礼儀作法やダンスの時間があるのだ。
礼儀作法やダンスの授業を楽なワンピースで受けても意味がない。
また、使節団のほとんどは男性だ。
成人した女性が家族でもない男性の中でラフな姿を続けるのも問題である。
野卑な目で見る者もいれば、身嗜みが悪いと嫌悪感を示す者もいるだろう。
「はい。研修にはきちんとした服装で参加致します。以前はそうしてお茶会にも参加していました」
ジェーンはそれが必要なことである以上、コルセットを付けることを厭わない。
結果として怪我の治りが遅くなっても仕方のないことだと思っている。
だけどマルグリットは絶対に駄目だと言った。
「怪我を治すのが何より大切なことよ。それに怪我をした状態で礼儀作法やダンスを習っても意味がないでしょう」
以前のジェーンが粗相の多い令嬢だと言われていたのは、怪我をしていたからだ。
アリシアたちは何も説明していないのに、時期などを考えて思い当ったのだろう。
物を落とすのは、腕が痛くて力を入れられないから。
何もないところで躓くのは、足が痛くて足をあまり上げられないから。
重心がおかしいのも、姿勢が悪いのも、痛む箇所を無意識に庇っていたせいだ。
そんな状態でレッスンを受けても正しいものは身につかない。
マルグリットの中にはジェーンの境遇への同情や、助けたいという気持ちがある。
だけど使節団の一員となる以上、国の代表として恥ずかしくない所作を身につけてもらわなければならないのだ。
「あなたには酷なことかもしれないけれど、研修を行っている講師たちにあなたの診断書を見せようと思っているの。講師たちには怪我の状態を正確に知ってもらう為よ。そして礼儀作法やダンスの授業は怪我が治ってから集中的に受けられるよう別メニューを組んでもらうわ。それまでは他の人たちが礼儀作法やダンスの授業を受けている間に語学や歴史などの座学を進めるようにしましょう」
「…そんなことが可能なのですか。可能なのであればとても有難いことですわ」
「…あなたは辛い思いをするかもしれないわ。講師や団員たちは、研修の進行を妨げていたあなたの義妹に嫌悪感を持っているし、1人だけ途中からの参加よ。更には別メニューを組んでの特別な扱いになるわ。他の団員たちから悪い感情を向けられる可能性が高いと思うの」
「私なら平気ですわ」
ジェーンを思い、暗い表情を見せるマルグリットに、ジェーンは微笑んだ。
「私はずっと理不尽に向けられる悪意の中で暮らしていました。それに比べれば、悪意を向けられても納得ができる理由です。理由がわかっていれば認めて頂けるよう頑張れますわ。皆様に受け入れて頂けるよう懸命に努めます」
ジェーンの答えにマルグリットの表情が満足そうなものに変わった。
境遇への同情やサンドラへの思いだけではなく、ジェーン自身を気に入ったようだ。
コルセットは侍女が後ろからきつく締め上げてつけるものだ。そうするとコルセットが押し付けられた部分の鬱血が酷くなってしまう。
今回は暴力を受けていた期間が約ひと月と前回に比べて短かったことと、挙式準備を理由に邸に引き籠っていたのでほとんどコルセットをつけずに過ごすことが出来ていた。
だから前回ほど胸や背中、腹部の鬱血は酷くない。
ジョッシュとの初夜の為に、少しでもマシになるようにと努めた結果とも言える。
マルグリットは、王宮で過ごす間も怪我が治るまではコルセットをつける必要はないと思っていた。きちんとした理由があることなのだから、咎めるつもりはない。
だけど使節団の研修には礼儀作法やダンスの時間があるのだ。
礼儀作法やダンスの授業を楽なワンピースで受けても意味がない。
また、使節団のほとんどは男性だ。
成人した女性が家族でもない男性の中でラフな姿を続けるのも問題である。
野卑な目で見る者もいれば、身嗜みが悪いと嫌悪感を示す者もいるだろう。
「はい。研修にはきちんとした服装で参加致します。以前はそうしてお茶会にも参加していました」
ジェーンはそれが必要なことである以上、コルセットを付けることを厭わない。
結果として怪我の治りが遅くなっても仕方のないことだと思っている。
だけどマルグリットは絶対に駄目だと言った。
「怪我を治すのが何より大切なことよ。それに怪我をした状態で礼儀作法やダンスを習っても意味がないでしょう」
以前のジェーンが粗相の多い令嬢だと言われていたのは、怪我をしていたからだ。
アリシアたちは何も説明していないのに、時期などを考えて思い当ったのだろう。
物を落とすのは、腕が痛くて力を入れられないから。
何もないところで躓くのは、足が痛くて足をあまり上げられないから。
重心がおかしいのも、姿勢が悪いのも、痛む箇所を無意識に庇っていたせいだ。
そんな状態でレッスンを受けても正しいものは身につかない。
マルグリットの中にはジェーンの境遇への同情や、助けたいという気持ちがある。
だけど使節団の一員となる以上、国の代表として恥ずかしくない所作を身につけてもらわなければならないのだ。
「あなたには酷なことかもしれないけれど、研修を行っている講師たちにあなたの診断書を見せようと思っているの。講師たちには怪我の状態を正確に知ってもらう為よ。そして礼儀作法やダンスの授業は怪我が治ってから集中的に受けられるよう別メニューを組んでもらうわ。それまでは他の人たちが礼儀作法やダンスの授業を受けている間に語学や歴史などの座学を進めるようにしましょう」
「…そんなことが可能なのですか。可能なのであればとても有難いことですわ」
「…あなたは辛い思いをするかもしれないわ。講師や団員たちは、研修の進行を妨げていたあなたの義妹に嫌悪感を持っているし、1人だけ途中からの参加よ。更には別メニューを組んでの特別な扱いになるわ。他の団員たちから悪い感情を向けられる可能性が高いと思うの」
「私なら平気ですわ」
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「私はずっと理不尽に向けられる悪意の中で暮らしていました。それに比べれば、悪意を向けられても納得ができる理由です。理由がわかっていれば認めて頂けるよう頑張れますわ。皆様に受け入れて頂けるよう懸命に努めます」
ジェーンの答えにマルグリットの表情が満足そうなものに変わった。
境遇への同情やサンドラへの思いだけではなく、ジェーン自身を気に入ったようだ。
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