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3章
30 過保護②
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「やっぱり体が冷たいよ。戻ろう」
感情に任せてアリシアをぎゅうぎゅう抱き締めていたレイヴンがぱっと体を離した。
「何か羽織るものを」
後ろに控えていた護衛に声を掛けると、その内の1人がさっと走っていく。
部屋に戻るのなら取りに行かなくても…とは思ったけれど、口には出さない。
最近のレイヴンには少し不安定なところがある。
デミオンたちの処罰の日、怪我を知られてから初めてレイヴンに抱かれた。
情事の合間にアリシアを後ろから抱え込んだレイヴンは、アリシアの右肩から肩甲骨の辺りに手を触れながら凝視していた。
「もう何ともありませんわ」
悲しそうな顔で肩を見つめるレイヴンにアリシアは明るく声を掛けたが、レイヴンの表情は変わらなかった。
「うん。何も残ってないね…」
そう言いながらも、レイヴンは確かめるように何度もそこへ口づける。
レイヴンは、アリシアが怪我をしていたことに気がつかなかったこと、その時に気遣えなかったことを酷く気にしている。
あれ以来アリシアの身に悪いことが起こらない様にと酷く神経質になっているのだ。
護衛の数も増やされた。
これで風邪を引いたりしたら大変なことになるだろう。
先日庭園を一緒に散歩していた時に、アリシアは植えられている薔薇に触れてしまった。
その薔薇はとても美しく、アリシアは深く考えずに手を伸ばしていた。そして棘で指を切ってしまったのだ。
完全にアリシアの不注意だった。
「アリシアっ!!」
アリシアの指に滲む血を見たレイヴンがさっと顔色を変えていた。
「すぐに侍医を呼べ!!」
レイヴンの怒声に護衛の1人が走っていく。
アリシアはびっくりしてしまった。
どう考えても侍医に診せるような怪我ではない。
「少し切っただけですわ。侍医は必要ありません」
アリシアはそう言ったがレイヴンは頑なだった。
「駄目だよ、アリシア。傷が残ったらどうするんだ」
この軽い切り傷が残るとは思えない。
だけどレイヴンは本当に心配しているようでオロオロしている。
レイヴンを安心させるために治療を受けた方が良い。
そう思ったアリシアは素直に侍医の到着を待った。
護衛に連れられて駆けつけて来たのは侍医長だった。
侍医長はアリシアの指の怪我を見て呆気にとられていた。
護衛が呼びに来るくらいなので余程の大怪我だと思っていたのだろう。
だけど侍医長はジェーンの怪我や過去のアリシアの怪我のことも知っている。
「大丈夫なのか?傷は残らないか?」とオロオロしているレイヴンを安心させる為にと、しっかり治療をしてくれた。
その後アリシアは、「アリシアが怪我をするから危ない」と言って庭園から薔薇を一掃しようとするレイヴンを止めるのに苦労したのだ。
部屋へ戻ると、エレノアが室内を暖めて待っていた。
熱い紅茶を入れてくれる。
エレノアはアリシアの怪我を知らない。
それでもジェーンの怪我があり、レイヴンがアリシアの身の回りに神経質になっていることで何かがあったことを察しているようだ。
そしてあの日以来、レイヴンが過剰に口づけるせいで右肩にできた多数の鬱血痕もエレノアは知っているのだった。
感情に任せてアリシアをぎゅうぎゅう抱き締めていたレイヴンがぱっと体を離した。
「何か羽織るものを」
後ろに控えていた護衛に声を掛けると、その内の1人がさっと走っていく。
部屋に戻るのなら取りに行かなくても…とは思ったけれど、口には出さない。
最近のレイヴンには少し不安定なところがある。
デミオンたちの処罰の日、怪我を知られてから初めてレイヴンに抱かれた。
情事の合間にアリシアを後ろから抱え込んだレイヴンは、アリシアの右肩から肩甲骨の辺りに手を触れながら凝視していた。
「もう何ともありませんわ」
悲しそうな顔で肩を見つめるレイヴンにアリシアは明るく声を掛けたが、レイヴンの表情は変わらなかった。
「うん。何も残ってないね…」
そう言いながらも、レイヴンは確かめるように何度もそこへ口づける。
レイヴンは、アリシアが怪我をしていたことに気がつかなかったこと、その時に気遣えなかったことを酷く気にしている。
あれ以来アリシアの身に悪いことが起こらない様にと酷く神経質になっているのだ。
護衛の数も増やされた。
これで風邪を引いたりしたら大変なことになるだろう。
先日庭園を一緒に散歩していた時に、アリシアは植えられている薔薇に触れてしまった。
その薔薇はとても美しく、アリシアは深く考えずに手を伸ばしていた。そして棘で指を切ってしまったのだ。
完全にアリシアの不注意だった。
「アリシアっ!!」
アリシアの指に滲む血を見たレイヴンがさっと顔色を変えていた。
「すぐに侍医を呼べ!!」
レイヴンの怒声に護衛の1人が走っていく。
アリシアはびっくりしてしまった。
どう考えても侍医に診せるような怪我ではない。
「少し切っただけですわ。侍医は必要ありません」
アリシアはそう言ったがレイヴンは頑なだった。
「駄目だよ、アリシア。傷が残ったらどうするんだ」
この軽い切り傷が残るとは思えない。
だけどレイヴンは本当に心配しているようでオロオロしている。
レイヴンを安心させるために治療を受けた方が良い。
そう思ったアリシアは素直に侍医の到着を待った。
護衛に連れられて駆けつけて来たのは侍医長だった。
侍医長はアリシアの指の怪我を見て呆気にとられていた。
護衛が呼びに来るくらいなので余程の大怪我だと思っていたのだろう。
だけど侍医長はジェーンの怪我や過去のアリシアの怪我のことも知っている。
「大丈夫なのか?傷は残らないか?」とオロオロしているレイヴンを安心させる為にと、しっかり治療をしてくれた。
その後アリシアは、「アリシアが怪我をするから危ない」と言って庭園から薔薇を一掃しようとするレイヴンを止めるのに苦労したのだ。
部屋へ戻ると、エレノアが室内を暖めて待っていた。
熱い紅茶を入れてくれる。
エレノアはアリシアの怪我を知らない。
それでもジェーンの怪我があり、レイヴンがアリシアの身の回りに神経質になっていることで何かがあったことを察しているようだ。
そしてあの日以来、レイヴンが過剰に口づけるせいで右肩にできた多数の鬱血痕もエレノアは知っているのだった。
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