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3章
37 新たな噂と対処法
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「レイヴン様?どうなさったのです?」
寝室に入るとアリシアが驚いたような声を上げた。
そんなに暗い顔をしているのかな、とレイヴンは自嘲気味に考える。
だけどアリシアが心配してくれることを嬉しく思う自分がいる。
「母上のところへ行ってきたんだ」
レイヴンはベッドに座るアリシアの隣に腰掛けた。
「ごめんね、アリシア。本当にごめん…」
「…何のことですか?」
頭を下げたレイヴンにアリシアが戸惑って問いかける。
突然謝られても訳が分からないのは当然のことだ。
レイヴンとしてはこれまでのことを改めて謝りたい。
ジョッシュのことで、レイヴンはアリシアに嫌われていても仕方がないことをしていたのだと痛感していた。
アリシアはそれを責めなかったが、カナリーやマルグリットに言われたことで、また自分のしてきたことを再確認してしまった。
だけどアリシアには、これまでのことはお互い様なのだから、気に病むのは終わりにしようと言われている。
これまでのことは、これからレイヴンが1人で抱えていくべきことなのだろう。
だから違うことを口にする。
「母上から聞いたんだ。女性の継承権を認めるよう議会に諮ったのは、ジェーン嬢が僕の情婦だからだと言われているって…」
「…そうですか」
レイヴンの言葉を聞いてもアリシアは少しも驚いていない。
そのことにレイヴンは驚いた。
「…知っていたの?」
「ジェーンが謝っていましたわ」
ここで初めてアリシアが気まずそうな表情を見せた。
ジェーンがレイヴンの情婦だと言い立てているのは、主に跡取りとして婿に入っている者たちだ。
彼らは自分が次代の当主になるとこれまで信じていて、それを疑ったことなどなかった。
それが女性に継承権が認められてしまうと覆されてる。
婚家としては婿より実娘に跡を継がせたいのは当然のことだ。
婚家での扱いが微妙に変わってきているのを彼らは肌で感じている。
自らの立場に危機感を覚えた彼らが攻撃する先を求め、その切っ掛けとなったのが王太子との関係を噂される女だと知れば矛先を向けてくるのは当然のことだ。
「ジェーンにとって継承権のことは自身の望みでもありますもの、それで悪く言われても受け入れるだけの覚悟を決めています。ですがレイヴン様は巻き込まれたようなものですから、ジェーンも気に病んでいましたわ」
ジェーンはアリシアとレイヴンの仲も気にしていた。
夫が愛人の為に法を変えようとしているなんて言われては、妻として立つ瀬がない。
最近やっと上手くいきだしている2人の関係に影が差すのではないかと酷く気にしていた。
「ジェーン嬢との噂を軽く考えすぎていたんだ。事あるごとに持ち出されるとは考えてもいなかった。そもそも学生時代に噂になるようなことをしなければ良かったんだ。アリシアにもジェーン嬢にも申し訳ない」
「…学生時代のことは、レイヴン様は私のことを思ってして下さったことですもの。ですがこれからはジェーンの名誉の為にも噂を増長させることは慎まなければなりません」
「…それはわかっている」
レイヴンは自室に戻る前に執務室へ寄っていた。
そこで数人の者に会い、噂について知っていることを尋ねた。
皆気まずそうな顔をしていたが、それでも王太子からの質問に答えないわけにはいかず教えてくれた。
主にはレイヴンとジェーンが恋仲であるというものだったが、空白となっているジェーンの婚約者についての噂もあった。
ジェーンの婚約者はキャンベル侯爵家より身分が低く、王家に追従していて間違っても反逆心を持たない家から選ばれる。
何故なら結婚後、ジェーンはレイヴンの公妾となるからだ――。
侯爵家の跡を継ぐ為、ジェーンはレイヴンの側妃になることはできない。
それならば形だけの結婚をして、夫に侯爵位を継承させる。
その後、ジェーンがレイヴンの公妾となり、2人の間にできた子どもを侯爵家の跡取りとする。
そんなことが言われているそうだ。
それを聞いた時、レイヴンは吐き気がした。
話してくれた文官はレイヴンの機嫌を損ねたと青褪めていたけれど、噂を教えただけの彼には非のない話だ。
「…母上が、噂を打ち消す為にはこれまで以上にアリシアとの仲睦まじい姿を見せて、皆に認めさせなければならないと」
「そうですわね。王妃様が正しいと思いますわ」
アリシアがそっと手を伸ばし、レイヴンの頬に触れる。
レイヴンはその手に手を重ねてアリシアを見つめた。
瞳が潤んでいる。
「困った方…」
アリシアが苦笑する声が耳朶をくすぐる。
レイヴンはそのままそっと唇を重ねた。
寝室に入るとアリシアが驚いたような声を上げた。
そんなに暗い顔をしているのかな、とレイヴンは自嘲気味に考える。
だけどアリシアが心配してくれることを嬉しく思う自分がいる。
「母上のところへ行ってきたんだ」
レイヴンはベッドに座るアリシアの隣に腰掛けた。
「ごめんね、アリシア。本当にごめん…」
「…何のことですか?」
頭を下げたレイヴンにアリシアが戸惑って問いかける。
突然謝られても訳が分からないのは当然のことだ。
レイヴンとしてはこれまでのことを改めて謝りたい。
ジョッシュのことで、レイヴンはアリシアに嫌われていても仕方がないことをしていたのだと痛感していた。
アリシアはそれを責めなかったが、カナリーやマルグリットに言われたことで、また自分のしてきたことを再確認してしまった。
だけどアリシアには、これまでのことはお互い様なのだから、気に病むのは終わりにしようと言われている。
これまでのことは、これからレイヴンが1人で抱えていくべきことなのだろう。
だから違うことを口にする。
「母上から聞いたんだ。女性の継承権を認めるよう議会に諮ったのは、ジェーン嬢が僕の情婦だからだと言われているって…」
「…そうですか」
レイヴンの言葉を聞いてもアリシアは少しも驚いていない。
そのことにレイヴンは驚いた。
「…知っていたの?」
「ジェーンが謝っていましたわ」
ここで初めてアリシアが気まずそうな表情を見せた。
ジェーンがレイヴンの情婦だと言い立てているのは、主に跡取りとして婿に入っている者たちだ。
彼らは自分が次代の当主になるとこれまで信じていて、それを疑ったことなどなかった。
それが女性に継承権が認められてしまうと覆されてる。
婚家としては婿より実娘に跡を継がせたいのは当然のことだ。
婚家での扱いが微妙に変わってきているのを彼らは肌で感じている。
自らの立場に危機感を覚えた彼らが攻撃する先を求め、その切っ掛けとなったのが王太子との関係を噂される女だと知れば矛先を向けてくるのは当然のことだ。
「ジェーンにとって継承権のことは自身の望みでもありますもの、それで悪く言われても受け入れるだけの覚悟を決めています。ですがレイヴン様は巻き込まれたようなものですから、ジェーンも気に病んでいましたわ」
ジェーンはアリシアとレイヴンの仲も気にしていた。
夫が愛人の為に法を変えようとしているなんて言われては、妻として立つ瀬がない。
最近やっと上手くいきだしている2人の関係に影が差すのではないかと酷く気にしていた。
「ジェーン嬢との噂を軽く考えすぎていたんだ。事あるごとに持ち出されるとは考えてもいなかった。そもそも学生時代に噂になるようなことをしなければ良かったんだ。アリシアにもジェーン嬢にも申し訳ない」
「…学生時代のことは、レイヴン様は私のことを思ってして下さったことですもの。ですがこれからはジェーンの名誉の為にも噂を増長させることは慎まなければなりません」
「…それはわかっている」
レイヴンは自室に戻る前に執務室へ寄っていた。
そこで数人の者に会い、噂について知っていることを尋ねた。
皆気まずそうな顔をしていたが、それでも王太子からの質問に答えないわけにはいかず教えてくれた。
主にはレイヴンとジェーンが恋仲であるというものだったが、空白となっているジェーンの婚約者についての噂もあった。
ジェーンの婚約者はキャンベル侯爵家より身分が低く、王家に追従していて間違っても反逆心を持たない家から選ばれる。
何故なら結婚後、ジェーンはレイヴンの公妾となるからだ――。
侯爵家の跡を継ぐ為、ジェーンはレイヴンの側妃になることはできない。
それならば形だけの結婚をして、夫に侯爵位を継承させる。
その後、ジェーンがレイヴンの公妾となり、2人の間にできた子どもを侯爵家の跡取りとする。
そんなことが言われているそうだ。
それを聞いた時、レイヴンは吐き気がした。
話してくれた文官はレイヴンの機嫌を損ねたと青褪めていたけれど、噂を教えただけの彼には非のない話だ。
「…母上が、噂を打ち消す為にはこれまで以上にアリシアとの仲睦まじい姿を見せて、皆に認めさせなければならないと」
「そうですわね。王妃様が正しいと思いますわ」
アリシアがそっと手を伸ばし、レイヴンの頬に触れる。
レイヴンはその手に手を重ねてアリシアを見つめた。
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レイヴンはそのままそっと唇を重ねた。
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