【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

文字の大きさ
217 / 697
3章

72 波及効果①

しおりを挟む
「サットン伯爵が昨日お父様に後継者の変更を願い出たそうですわ。これで3人目ですわね」

「――そうですか」

 あの議会の日から半月程が経っている。
 今日はアリシアとジェーンのお茶会だ。夕食後の時間なので。ノティスとカナリーも一緒にテーブルを囲んでいる。この半月の間に、2人が参加するお茶会も既に数回開かれていた。

 お茶会の間はアルスタ語であれば誰でも自由に発言して良い。
 そういう決まりになっている。

「ジェーン様が議会で話されたことが思わぬ効果を生みましたわね」

 口元に笑みを浮かべたカナリーが、昨日正殿で聞いたという話を報告してくれていた。
 アリシアは昨日の内にレイヴンから聞いていたが、ジェーンは初めて聞く話に困ったような顔をしている。

 議会は女性の継承権を認める方向へ向かっているが、まだ正式には決まっていない。
 だがジェーンが議会で話した内容が、社交界で別の波紋を呼んでいる。

 話に出ている当代のサットン伯爵は伯爵家の女婿である。
 伯爵位を継いでから既に十数年が経っており、息子を後継者として届け出て承認されていた。
 だがその息子の母親は伯爵夫人ではない。伯爵が囲っている愛人が生んだ息子である。
 伯爵と伯爵夫人の間に子どもはいない。

 サットン伯爵家の血筋は夫人の方なのでその息子は伯爵家の血を引いていないが、伯爵の子であることに違いはないので跡を継がせるのに問題はないとされている。

 だがジェーンが議会でデミオンとアンジュの企みを話したことで、合法的な家の乗っ取りを意図的に仕組むことが可能なのだと人々は認識した。



 議会があった数日後、仲間内でお茶会をしていたある侯爵夫人が、「うちも夫と愛人に家を乗っ取られる」と泣き出した。その家も女婿を迎えており、夫の愛人が生んだ息子を跡取りとして届け出ていたのだ。

 一緒にお茶会をしていた貴婦人の中に、議会を傍聴していた夫人がいた。
 その夫人は、侯爵家の血筋は侯爵夫人なのだから、これも乗っ取りに違いないと言い、夫人との間に子どもがいないのなら侯爵家の傍系から養子を取るべきだといきり立った。
 その話はあっという間に広がり、非難が集中した侯爵は、どこへ行っても白い目で見られるようになった。
 そしてそれまで次期侯爵の生母として大きな顔をしていた愛人は、社交界で爪弾きにされるようになっていた。
 結局白い目に晒され続けた侯爵は、侯爵家の遠縁から養子を迎え入れることにして、国王へ後継者の変更を願い出たのだ。

 これと同じことがサットン伯爵家でも起きていた。 
 カナリーの言う「これで3人目」とは、同様の事例が3人目ということである。


「まさかこんなことになるなんて、驚きましたわ…」

 ジェーンはずっと戸惑っているが、驚いているのはアリシアも同じだった。

「愛人が生んだ子に爵位を譲るなんて納得できないのは当然よね。そんな家の夫婦仲が上手くいっているとも思えないし、夫人の家なのに居場所が無くなっていくのだわ」

 それはアリシアが最も恐れていることである。

「ジェーン様が話をされたことで世間の風向きが変わりましたから、これからはきっと大丈夫ですわ」

 国王も以前、同様の理由で爵位を保ちながら血筋が違ってしまっている家がこれまでにもあると認めていた。
 この国の長年の問題だったのだ。




 
しおりを挟む
感想 441

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

処理中です...