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3章
109 ディアナ
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「お兄様は何故グーリッド伯爵邸へ…?」
「…先日の夜会で次女のディアナ嬢を紹介されたそうだよ。少し年は離れているけど、ディアナ嬢にはまだ婚約者がいないから、婚約者として丁度良いと思ったらしい」
「丁度良い…?ルトビア公爵家はグーリッド伯爵家と縁付きたいのですか?政略結婚としては公爵家に利がないのでは…」
グーリッド伯爵がルトビア公爵家と縁続きになりたがっているのはキャロルのことでわかっている。
だけどルトビア公爵家にはグーリッド伯爵家と繋がったところで得る利益が無い。キャロルの様に年の頃も釣り合わない。
「うーん、そうでもないみたいだよ」
レイヴンが困ったように笑う。
レオナルドと年が近くてまだ相手が決まっていない令嬢は、本人か家に問題があって嫁ぎ先が決まらない令嬢か、レイヴンの側妃を狙っていた令嬢である。
レオナルドはその中でレイヴンに恋愛感情を持っておらず、次期公爵夫人としての教育に耐えられる野心家の令嬢を、と考えていたようだが、ディアナを紹介されたことでその考えを変えていた。
ディアナにレイヴンの側妃を狙う気持ちは無いし、レイヴンに懸想もしていない。
年は離れているが、その分時間をかけて次期公爵夫人としての教育を施すことができる。そしてどんなに辛くても、キャロルのことでルトビア公爵家に借りがあるディアナは逃げることができない。
「さっき話に出ていたけれど、ルトビア公爵家の教育は他家と比べても厳しいみたいだし、数年掛けて直接次期公爵夫人としての教育を受けるのも良いんじゃないかと考えたらしい。子どもの頃からの婚約と違って準備する時間が短いのはどうしようもないことだしね」
「そうですか…」
確かに幼い頃からアダムと婚約していたオレリアさえ、嫁いできた当初は苦労したという。それに比べて短い婚約期間で婚姻を結ばなければならないレオナルドの妻が更に苦労するのは間違いない。
「…レイヴン様はディアナ様がどんな方なのか、ご存知なのですか?」
「僕は会ったことがないけど、芯が通ったしっかりしたご令嬢みたいだよ。先日のクラーク伯爵家の夜会で長男のエディ殿と一緒に紹介されたそうだけど、キャロル嬢のことを謝罪されたらしい。跡継ぎのエディ殿から謝罪があるのは当然だけど、年若い妹君が責任を感じることではないからね。だけどディアナ嬢は、妹として恥ずかしく思っていると言って頭を下げたそうだよ」
「…そうですか」
それを聞くと確かにしっかりとした令嬢だと感じる。
自分の立場や役割をしっかり理解した令嬢であれば、公爵夫人としての厳しい教育も乗り越えられるだろう。
「アリシアはその…、キャロル嬢のことが気になる?」
レイヴンに訊かれてアリシアは俯いた。
キャロルがレイヴンに会いに来ていたと聞いた時の嫌な気持ちは今も覚えている。
俯いたアリシアの旋毛にレイヴンは口づけた。
「愛している、アリシア。僕が愛してるのはアリシアだけだよ。それに…アリシアが嫌だと言ったら、レオナルドはディアナ嬢と婚約するのは止めると思うよ」
そうかもしれない。
だけどアリシアは、レオナルドが決めた相手なら誰でも仲良くすると決めている。
「伯爵家の方が公爵家に入るのは大変なことですわ。お兄様がディアナ嬢の気持ちを大切にされるなら、私はそれで良いと思います」
アリシアが妃教育で大変な時に寄り添ってくれたように、レオナルドならディアナに寄り添って支えていくだろう。
だけどレオナルドから報告を受けるまで、アリシアからこのことについて何かを言うつもりはない。
アリシアは王家に嫁いでいるので既にルトビア公爵家の者ではないのだ。
「お兄様が幸せになるのなら、相手は誰でも構いませんわ」
アリシアがそう言うと、レイヴンが笑った。
アリシアたち4人の絆は強く、其々の立場が変わっても壊れることは無い。
「ところでレイヴン様。私、他のことでもレイヴン様に相談したいことがあるのですわ」
ジェーンの補講を見てくれる家庭教師について、相談しなければならない。
表情を引き締めたアリシアをレイヴンは不思議そうに見ていた。
「…先日の夜会で次女のディアナ嬢を紹介されたそうだよ。少し年は離れているけど、ディアナ嬢にはまだ婚約者がいないから、婚約者として丁度良いと思ったらしい」
「丁度良い…?ルトビア公爵家はグーリッド伯爵家と縁付きたいのですか?政略結婚としては公爵家に利がないのでは…」
グーリッド伯爵がルトビア公爵家と縁続きになりたがっているのはキャロルのことでわかっている。
だけどルトビア公爵家にはグーリッド伯爵家と繋がったところで得る利益が無い。キャロルの様に年の頃も釣り合わない。
「うーん、そうでもないみたいだよ」
レイヴンが困ったように笑う。
レオナルドと年が近くてまだ相手が決まっていない令嬢は、本人か家に問題があって嫁ぎ先が決まらない令嬢か、レイヴンの側妃を狙っていた令嬢である。
レオナルドはその中でレイヴンに恋愛感情を持っておらず、次期公爵夫人としての教育に耐えられる野心家の令嬢を、と考えていたようだが、ディアナを紹介されたことでその考えを変えていた。
ディアナにレイヴンの側妃を狙う気持ちは無いし、レイヴンに懸想もしていない。
年は離れているが、その分時間をかけて次期公爵夫人としての教育を施すことができる。そしてどんなに辛くても、キャロルのことでルトビア公爵家に借りがあるディアナは逃げることができない。
「さっき話に出ていたけれど、ルトビア公爵家の教育は他家と比べても厳しいみたいだし、数年掛けて直接次期公爵夫人としての教育を受けるのも良いんじゃないかと考えたらしい。子どもの頃からの婚約と違って準備する時間が短いのはどうしようもないことだしね」
「そうですか…」
確かに幼い頃からアダムと婚約していたオレリアさえ、嫁いできた当初は苦労したという。それに比べて短い婚約期間で婚姻を結ばなければならないレオナルドの妻が更に苦労するのは間違いない。
「…レイヴン様はディアナ様がどんな方なのか、ご存知なのですか?」
「僕は会ったことがないけど、芯が通ったしっかりしたご令嬢みたいだよ。先日のクラーク伯爵家の夜会で長男のエディ殿と一緒に紹介されたそうだけど、キャロル嬢のことを謝罪されたらしい。跡継ぎのエディ殿から謝罪があるのは当然だけど、年若い妹君が責任を感じることではないからね。だけどディアナ嬢は、妹として恥ずかしく思っていると言って頭を下げたそうだよ」
「…そうですか」
それを聞くと確かにしっかりとした令嬢だと感じる。
自分の立場や役割をしっかり理解した令嬢であれば、公爵夫人としての厳しい教育も乗り越えられるだろう。
「アリシアはその…、キャロル嬢のことが気になる?」
レイヴンに訊かれてアリシアは俯いた。
キャロルがレイヴンに会いに来ていたと聞いた時の嫌な気持ちは今も覚えている。
俯いたアリシアの旋毛にレイヴンは口づけた。
「愛している、アリシア。僕が愛してるのはアリシアだけだよ。それに…アリシアが嫌だと言ったら、レオナルドはディアナ嬢と婚約するのは止めると思うよ」
そうかもしれない。
だけどアリシアは、レオナルドが決めた相手なら誰でも仲良くすると決めている。
「伯爵家の方が公爵家に入るのは大変なことですわ。お兄様がディアナ嬢の気持ちを大切にされるなら、私はそれで良いと思います」
アリシアが妃教育で大変な時に寄り添ってくれたように、レオナルドならディアナに寄り添って支えていくだろう。
だけどレオナルドから報告を受けるまで、アリシアからこのことについて何かを言うつもりはない。
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「お兄様が幸せになるのなら、相手は誰でも構いませんわ」
アリシアがそう言うと、レイヴンが笑った。
アリシアたち4人の絆は強く、其々の立場が変わっても壊れることは無い。
「ところでレイヴン様。私、他のことでもレイヴン様に相談したいことがあるのですわ」
ジェーンの補講を見てくれる家庭教師について、相談しなければならない。
表情を引き締めたアリシアをレイヴンは不思議そうに見ていた。
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