【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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3章

112 補講①

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 アリシアたちが応接間へ入ると、マルグリットが笑顔で迎えてくれた。

 あれからレイヴンはアリシアを気遣い、気持ちが落ち着くまで待ってくれていた。
 応接間へ続く廊下に備え付けらえたソファに長い間2人で座っていたのだ。
 通りかかった侍女が正殿の廊下で寄り添う王太子夫妻に驚いていた。その内の何人かは応接間へ入っていったので、マルグリットは何かを聞いたかもしれない。
 だけどマルグリットはそんな素振りを少しも見せなかった。

 部屋にはマルグリットの子どもたちとノティスが揃っている。
 カナリーたちは、レイヴンとアリシアが大切な話をする為に訪ねて来ると聞いていたようで、2人の姿を見ると自然に会話を止めて離れたところへ移っていった。
 
 カナリーはノティス、ジェイはアイビスが取り組んでいる課題を一緒に見ることにしたようだ。
 同じ本やノートを覗き込む兄妹の姿に、アリシアは昔を思い出す。

 アリシアやジェーンが子どもの頃は、同じ様にロバートとレオナルドが2人の課題を見てくれていた。
 同じ本やノートを覗き込む4人の子どもたちとそれを見守る3人の母親。
 キャンベル侯爵邸の応接間でもそんな平和な光景が見られたのだ。

「アリシア?」

 カナリーたちに目を止めたままのアリシアへ、レイヴンが気づかわし気な声を掛ける。
 腰にまわされた腕に力が籠るのを感じたアリシアは、レイヴンを安心させるように微笑んだ。

「なんだか懐かしくて」

 アリシアがそう言うと、レイヴンもアリシアが何を思い出しているのか気がついたようだ。

「昔はレオが羨ましかったよ」

「レイヴン様は長男ですものね」

 アリシアの言葉にレイヴンは曖昧に笑う。
 アリシアは、レオナルドに勉強をみてもらっていたアリシアが羨ましいのだと思っているが、レイヴンが羨ましいのはアリシアと仲が良くて頼られていたレオナルドの方だ。
 昔を思い出して微笑むアリシアとは違って、レイヴンは昔を思い出すと淋しくなってしまう。
 だけど今、アリシアはレイヴンの隣にいて、少しずつ家族になろうとしてくれている。

 
 マルグリットは、部屋へ入って来たアリシアの様子がおかしいことに気がついていた。
 感情を表に出さない様にと厳しく教えられたアリシアは、表情を上手く隠すことができる。
 それでも隠しきれない感情の揺れが僅かに表れていた。

 それがレイヴンと話している内に消えていく。アリシアの顔に自然な笑顔が浮ぶのを見て、マルグリットは目を瞬いた。
 今アリシアが見せているのは、王太子妃としての作られた笑顔ではなく、心からの笑顔だ。
 アリシアは随分とレイヴンに心を開いてきたようだ。
 息子の気持ちが通じたのを感じて、マルグリットは嬉しくなった。

 アリシアとレイヴンは、マルグリットにすすめられてソファへ座る。
 その頃にはアリシアの緊張も解けていて、和んだ雰囲気になっていた。

 だけど本題はこれからである。
 アリシアは一呼吸ついた後、ここへ訪ねて来た理由を話しだした。



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