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3章
137 食事②
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暫く抱き合った後、食事をすることにした。
目が覚めてから少し時間が経ったことで空腹を感じるようになっていたけれど、レイヴンのぬくもりが離れていくことを寂しく感じて7しまう。
レイヴンもそれは同じだった様で、2人が離れたのは「食事をしよう」と口にしてから随分経ってからだった。
レイヴンがアリシアに夜着を着せてくれる。
アリシアが眠っている間に用意されていたようで、そう思えば眠る前より体がさっぱりしている。
レイヴンが体を拭いてくれたのだと思うと恥ずかしい。
事後ではあってもエレノアがアリシアの世話を嫌がることはないだろうが、それをしてくれたのがエレノアだとは少しも思わなかった。
「レイヴン様…!」
アリシアに夜着を着せた後、レイヴンはガウンを着ようと背中を向ける。
その背中を見たアリシアは悲鳴のような声を上げた。
レイヴンの背中に幾筋もの赤い傷が見えたのだ。
左右の肩甲骨の辺りに並んだ傷は誰かに引っかかれた跡に見える。
間違いなくアリシアがつけたものだった。
「も、申し訳ありません、レイヴン様。私、なんということを…」
レイヴンの白い背中にくっきりついたその傷は見るからに痛そうだ。
だけど青くなって狼狽えるアリシアにレイヴンは笑顔を見せた。
「もしかして傷になってる?大丈夫、全然痛くないよ」
「そんなはずがありません。こんな、いくつも、赤くなてしまって…」
肌が白いだけに痛々しい。
正直なところ、先程レイヴンに請われるまでレイヴンを抱き締めたことがないなんて気がついていなかった。
だけどこれまでレイヴンがこんな怪我をしているところは見たことがない。それを思うと、やはりレイヴンの背に腕をまわしたのはあれが初めてだったのだ。
アリシアは自身の爪を見る。
レイヴンに怪我を負わせてしまうことなんて、考えたこともなかった。
レイヴンはそんなアリシアの手を両手でそっと包み込む。
「本当になんともないんだ。…ううん、本当はちょっと痛いよ。だけど嬉しいんだ。傷があるのはアリシアが抱き締めてくれた証だから。本当にアリシアに抱き締められたんだって実感することができる。傷が痛む度にアリシアに抱き締められた感触を思い出すことが出来てすごく嬉しい。だから本当に気にしないで」
そう言って笑うとレイヴンはアリシアの唇にちゅっと口づけた。
これでこの話は終わり、ということのようだ。
また背中を向けてガウンを纏おうとするレイヴンの背中へアリシアは手を伸ばした。
そっと傷に触れる。
動きを止めたレイヴンの背中へアリシアは口づけた。
「アリシアっ?!」
レイヴンが慌てた声を出す。
レイヴンを抱き締めたことがなかっただけではない。
これまでアリシアがレイヴンの肌へ触れたことはほとんどなかった。
アリシアは王太子妃だから、レイヴンから閨を求められれば応えるのが義務だった。
だけど形式的な関係だから、王太子殿下の肌に触れるのは不敬の様な気がしていた。
アリシアは嫁ぐ前、最後の妃教育として「閨では従順に、王太子殿下のなさることに従いなさい」と教えられていた。
初夜を迎えても詳しい作法がわからないアリシアは、レイヴンから許可されるまで触れない方が良いと思った。
だけどレイヴンから許可が出ることはなく、いつの間にか許可を待っていたことさえ忘れて、それが無意識の習慣となっていたのだ。
本当は初めから許可などいらなかったのだろう。
アリシアはいくつもある傷へ、痛くないようにそっと口づける。
口づける度に「痛みませんように」、「早く治りますように」と祈りを籠める。
アリシアが肩を鞭で打たれたと知った後、レイヴンはアリシアの肩へ何度も口づけるようになった。
アリシアの怪我は既に治っているけれど、怪我のあとに何度も口づけるレイヴンの気持ちがわかる様な気がした。
「アリシア、ごめん、ちょっと待って…」
レイヴンの背中へ夢中で口づけていたアリシアは、レイヴンの声にハッとなった。
振り向いたレイヴンは苦しそうに見える。
痛かったのかと慌てるアリシアに、レイヴンは申し訳なさそうな、情けないような表情を見せた。
「アリシアが口づけてくれるのはすごく嬉しいけど、このままじゃ食事ができなくなる…」
目を伏せたレイヴンの視線を追うと、下着をつけたそこが大きく膨らんでいた。
アリシアの顔が赤く染まった。
目が覚めてから少し時間が経ったことで空腹を感じるようになっていたけれど、レイヴンのぬくもりが離れていくことを寂しく感じて7しまう。
レイヴンもそれは同じだった様で、2人が離れたのは「食事をしよう」と口にしてから随分経ってからだった。
レイヴンがアリシアに夜着を着せてくれる。
アリシアが眠っている間に用意されていたようで、そう思えば眠る前より体がさっぱりしている。
レイヴンが体を拭いてくれたのだと思うと恥ずかしい。
事後ではあってもエレノアがアリシアの世話を嫌がることはないだろうが、それをしてくれたのがエレノアだとは少しも思わなかった。
「レイヴン様…!」
アリシアに夜着を着せた後、レイヴンはガウンを着ようと背中を向ける。
その背中を見たアリシアは悲鳴のような声を上げた。
レイヴンの背中に幾筋もの赤い傷が見えたのだ。
左右の肩甲骨の辺りに並んだ傷は誰かに引っかかれた跡に見える。
間違いなくアリシアがつけたものだった。
「も、申し訳ありません、レイヴン様。私、なんということを…」
レイヴンの白い背中にくっきりついたその傷は見るからに痛そうだ。
だけど青くなって狼狽えるアリシアにレイヴンは笑顔を見せた。
「もしかして傷になってる?大丈夫、全然痛くないよ」
「そんなはずがありません。こんな、いくつも、赤くなてしまって…」
肌が白いだけに痛々しい。
正直なところ、先程レイヴンに請われるまでレイヴンを抱き締めたことがないなんて気がついていなかった。
だけどこれまでレイヴンがこんな怪我をしているところは見たことがない。それを思うと、やはりレイヴンの背に腕をまわしたのはあれが初めてだったのだ。
アリシアは自身の爪を見る。
レイヴンに怪我を負わせてしまうことなんて、考えたこともなかった。
レイヴンはそんなアリシアの手を両手でそっと包み込む。
「本当になんともないんだ。…ううん、本当はちょっと痛いよ。だけど嬉しいんだ。傷があるのはアリシアが抱き締めてくれた証だから。本当にアリシアに抱き締められたんだって実感することができる。傷が痛む度にアリシアに抱き締められた感触を思い出すことが出来てすごく嬉しい。だから本当に気にしないで」
そう言って笑うとレイヴンはアリシアの唇にちゅっと口づけた。
これでこの話は終わり、ということのようだ。
また背中を向けてガウンを纏おうとするレイヴンの背中へアリシアは手を伸ばした。
そっと傷に触れる。
動きを止めたレイヴンの背中へアリシアは口づけた。
「アリシアっ?!」
レイヴンが慌てた声を出す。
レイヴンを抱き締めたことがなかっただけではない。
これまでアリシアがレイヴンの肌へ触れたことはほとんどなかった。
アリシアは王太子妃だから、レイヴンから閨を求められれば応えるのが義務だった。
だけど形式的な関係だから、王太子殿下の肌に触れるのは不敬の様な気がしていた。
アリシアは嫁ぐ前、最後の妃教育として「閨では従順に、王太子殿下のなさることに従いなさい」と教えられていた。
初夜を迎えても詳しい作法がわからないアリシアは、レイヴンから許可されるまで触れない方が良いと思った。
だけどレイヴンから許可が出ることはなく、いつの間にか許可を待っていたことさえ忘れて、それが無意識の習慣となっていたのだ。
本当は初めから許可などいらなかったのだろう。
アリシアはいくつもある傷へ、痛くないようにそっと口づける。
口づける度に「痛みませんように」、「早く治りますように」と祈りを籠める。
アリシアが肩を鞭で打たれたと知った後、レイヴンはアリシアの肩へ何度も口づけるようになった。
アリシアの怪我は既に治っているけれど、怪我のあとに何度も口づけるレイヴンの気持ちがわかる様な気がした。
「アリシア、ごめん、ちょっと待って…」
レイヴンの背中へ夢中で口づけていたアリシアは、レイヴンの声にハッとなった。
振り向いたレイヴンは苦しそうに見える。
痛かったのかと慌てるアリシアに、レイヴンは申し訳なさそうな、情けないような表情を見せた。
「アリシアが口づけてくれるのはすごく嬉しいけど、このままじゃ食事ができなくなる…」
目を伏せたレイヴンの視線を追うと、下着をつけたそこが大きく膨らんでいた。
アリシアの顔が赤く染まった。
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