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番外編・処罰の後
11 処罰の後(6-②)
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侍女がテーブルに乗せられた子ども用のカトラリーに手を伸ばす。
普段銀食器は執事が厳しく管理していて、侍女が触れるなど許されることではない。
だけど今日だけは同じ苦難を乗り越えた仲間として自由に触れることを許していた。
「お嬢様がこれで食事をしていたところを思い出しますね」
「本当に。作法の先生に教えられたことを、誇らしげに披露されていました」
「見守られる奥様も、大奥様もそれは楽しそうにしておられた」
楽しそうに語る侍女たちに、一際年配の女中がエプロンで涙を抑える。
「私なんかは、奥様が幼い頃にその食器を使われているところも見ていますから…。失われずに済んで本当に良かった…」
「お嬢様のお子様にも使っていただけるのですから、それまで元気でお仕え致しませんと」
「本当に、その通りですね」
微笑み合って頷き合う。
こんな穏やかな時間を過ごすのはサンドラが亡くなって以来、実に13年ぶりのことだ
「それは、お義姉様が使っていた食器なの?」
エミリーが声を掛けた途端、和やかな空気は一変した。
ハッとした使用人たちが食器を背中に庇い、隠そうとする。
彼女たちはこれまでエミリーがジェーンのものを奪い、失くしてしまったりぼろぼろにして捨ててしまったりしたのを知っているのだ。
ただこれまでとは違ってエミリーの絶対的な庇護者だったデミオンとアンジュがその権力を失い、ジェーンの側に立つロバートが今この邸で権力を握っている。
だから侍女たちは臆することなくエミリーを睨みつけていた。
これまでのエミリーなら使用人のそんな態度は絶対に許せなかった。
それなのに今は不思議と腹が立たない。
静かな気持ちで使用人たちを見つめていた。
エミリーは昨日までこの邸の中にジェーンの味方がいるなんて思ってもいなかった。
邸の者がジェーンに優しくしているところなど、もうずっと見ていない。そういった者たちは両親が早々に辞めさせてしまった。
だから彼女たちはこの邸に留まる為に、表面上ジェーンに辛く当たりながらこっそり守っていたのだ。
この邸に残されたのは、すべてそういった者たちなのだろう。
「大丈夫。羨ましいとは思うけれど、もうお義姉様のものを取ったりしないわ」
そう言ってエミリーはテーブルの上に並べられた子ども用のカトラリーへ目を向けた。
エミリーはキャンベル侯爵家の娘だ。
この国の制度上、それは正式に認められている。
だけどこの家にエミリーの両親が幼い頃から使っていたようなものはない。
もしかしたらルトビア公爵邸やアンジュの実家の男爵邸には何か残っているかもしれない。
だけどこの邸にあるのはジェーンの母が使っていたものだけだ。
「キャンベル侯爵家の血筋」というのがどういうことなのか、今ようやくわかった気がした。
「私は侯爵家の娘だけど、キャンベル侯爵家の一族ではないのだわ」
エミリーの呟きに使用人たちが微妙な顔をする。
使用人たちが当然だと思っていることが、今初めて―――理解できた。
普段銀食器は執事が厳しく管理していて、侍女が触れるなど許されることではない。
だけど今日だけは同じ苦難を乗り越えた仲間として自由に触れることを許していた。
「お嬢様がこれで食事をしていたところを思い出しますね」
「本当に。作法の先生に教えられたことを、誇らしげに披露されていました」
「見守られる奥様も、大奥様もそれは楽しそうにしておられた」
楽しそうに語る侍女たちに、一際年配の女中がエプロンで涙を抑える。
「私なんかは、奥様が幼い頃にその食器を使われているところも見ていますから…。失われずに済んで本当に良かった…」
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「本当に、その通りですね」
微笑み合って頷き合う。
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「それは、お義姉様が使っていた食器なの?」
エミリーが声を掛けた途端、和やかな空気は一変した。
ハッとした使用人たちが食器を背中に庇い、隠そうとする。
彼女たちはこれまでエミリーがジェーンのものを奪い、失くしてしまったりぼろぼろにして捨ててしまったりしたのを知っているのだ。
ただこれまでとは違ってエミリーの絶対的な庇護者だったデミオンとアンジュがその権力を失い、ジェーンの側に立つロバートが今この邸で権力を握っている。
だから侍女たちは臆することなくエミリーを睨みつけていた。
これまでのエミリーなら使用人のそんな態度は絶対に許せなかった。
それなのに今は不思議と腹が立たない。
静かな気持ちで使用人たちを見つめていた。
エミリーは昨日までこの邸の中にジェーンの味方がいるなんて思ってもいなかった。
邸の者がジェーンに優しくしているところなど、もうずっと見ていない。そういった者たちは両親が早々に辞めさせてしまった。
だから彼女たちはこの邸に留まる為に、表面上ジェーンに辛く当たりながらこっそり守っていたのだ。
この邸に残されたのは、すべてそういった者たちなのだろう。
「大丈夫。羨ましいとは思うけれど、もうお義姉様のものを取ったりしないわ」
そう言ってエミリーはテーブルの上に並べられた子ども用のカトラリーへ目を向けた。
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だけどこの家にエミリーの両親が幼い頃から使っていたようなものはない。
もしかしたらルトビア公爵邸やアンジュの実家の男爵邸には何か残っているかもしれない。
だけどこの邸にあるのはジェーンの母が使っていたものだけだ。
「キャンベル侯爵家の血筋」というのがどういうことなのか、今ようやくわかった気がした。
「私は侯爵家の娘だけど、キャンベル侯爵家の一族ではないのだわ」
エミリーの呟きに使用人たちが微妙な顔をする。
使用人たちが当然だと思っていることが、今初めて―――理解できた。
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