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番外編・処罰の後
26 処罰の後(16-①)
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ジョッシュはマーサから叱責を受けた日に伯爵家の招待客を書き出したリストを持ち帰っていた。
侯爵家のものに比べれば少ないが、それでも結構な数の名前が書かれている。この数を期限までに仕上げる為には家の者に協力を頼むしかない。
ジョッシュはそれと同時に結婚式を挙げる為に必要な準備を教えて欲しいと頼むことにした。
話を聞いた家族は皆顔を青くしていた。
確かに我が家の使用人たちが結婚式の準備をしているような気配はなかった。
だけどジョッシュは結婚式の準備があるからと、毎日侯爵邸へ通っていたのだ。まさかすべての準備をジェーンに押し付け、エミリーと遊んでいたとは思ってもいなかった。
「何か手伝うことはないのか、と訊かなかったわたしたちが悪いのか…?」
カルヴィエ伯爵が呟いた途端、ローガンの妻であるミシェルが音を立てて立ち上がり、部屋を出て行った。
ローガンが慌てて後を追う。
部屋を出ていく兄嫁と長兄をジョッシュは皆と同じ青い顔で見送った。
自室に駆け込んだミシェルは悲嘆に暮れていた。
あの処罰の日のことは社交界で知れ渡り、伯爵家は既にその影響を受けている。
伯爵夫人である義母もミシェルもどこのお茶会にも呼ばれなくなった。
学生からの友人を訪ねようと先触れを出すと、「しばらく距離を置かせて欲しい」と断られてしまった。
実家の親からは「しばらく戻ってこないか」と文が届いている。
だけどミシェルはこれまでそれほど悲観してはいなかった。
表向き2人は罰を受けたわけではない。
それでも国王夫妻や王太子夫妻の不興を買ったことに違いはなく、問題を起こした家として他の貴族から距離を取られるのは仕方のないことだ。
だけど結婚した2人は其々の家を出ていく。もう社交界に顔を出すこともない。
しばらく時間を置けば、とミシェルは思っていた。
だけどこうして聞いた話はあまりにも酷い。
結婚式の準備をしている婚約者を無視して同じ邸の中でその義妹と関係を持っていたなんて、その時のジェーンの気持ちを思うと胸が苦しくなる。
同じ女としてジョッシュがしたことを許すことはできない。
そして王太子妃の怒りが解けることもないだろうと思えた。
「実家の父から、戻ってくるように言われています…!」
絞り出した声にローガンが衝撃を受けた顔をした。
ミシェルだってローガンと離れたくはない。
ローガンとミシェルも政略結婚だ。だけどこれまで2人の仲は上手くいっていた。
お互いを気遣い合い、支え合い、これから伯爵家を盛り立てていくのだと思っていた。
だけど今はその将来が見えない。
国王夫妻や王太子夫妻に睨まれた伯爵家が浮かび上がることは二度となく、実家に影響を与えない為にはミシェルが離縁して実家に戻るか実家と縁を切るしかない。
「…両親と、話をさせてくれ…」
項垂れたローガンが弱弱しい声でそう言った。
それからしばらくして、カルヴィエ伯爵が爵位をローガンに譲って隠居することになった。
伯爵は自身が伯爵位を退き、領地に引き籠ることで伯爵家に慈悲を与えて欲しいとアリシアへ願い出ていたのだ。
ジョッシュは己の行いが父を引退させ、兄夫婦の離婚危機を招いたことに大きなショックを受けていた。
侯爵家のものに比べれば少ないが、それでも結構な数の名前が書かれている。この数を期限までに仕上げる為には家の者に協力を頼むしかない。
ジョッシュはそれと同時に結婚式を挙げる為に必要な準備を教えて欲しいと頼むことにした。
話を聞いた家族は皆顔を青くしていた。
確かに我が家の使用人たちが結婚式の準備をしているような気配はなかった。
だけどジョッシュは結婚式の準備があるからと、毎日侯爵邸へ通っていたのだ。まさかすべての準備をジェーンに押し付け、エミリーと遊んでいたとは思ってもいなかった。
「何か手伝うことはないのか、と訊かなかったわたしたちが悪いのか…?」
カルヴィエ伯爵が呟いた途端、ローガンの妻であるミシェルが音を立てて立ち上がり、部屋を出て行った。
ローガンが慌てて後を追う。
部屋を出ていく兄嫁と長兄をジョッシュは皆と同じ青い顔で見送った。
自室に駆け込んだミシェルは悲嘆に暮れていた。
あの処罰の日のことは社交界で知れ渡り、伯爵家は既にその影響を受けている。
伯爵夫人である義母もミシェルもどこのお茶会にも呼ばれなくなった。
学生からの友人を訪ねようと先触れを出すと、「しばらく距離を置かせて欲しい」と断られてしまった。
実家の親からは「しばらく戻ってこないか」と文が届いている。
だけどミシェルはこれまでそれほど悲観してはいなかった。
表向き2人は罰を受けたわけではない。
それでも国王夫妻や王太子夫妻の不興を買ったことに違いはなく、問題を起こした家として他の貴族から距離を取られるのは仕方のないことだ。
だけど結婚した2人は其々の家を出ていく。もう社交界に顔を出すこともない。
しばらく時間を置けば、とミシェルは思っていた。
だけどこうして聞いた話はあまりにも酷い。
結婚式の準備をしている婚約者を無視して同じ邸の中でその義妹と関係を持っていたなんて、その時のジェーンの気持ちを思うと胸が苦しくなる。
同じ女としてジョッシュがしたことを許すことはできない。
そして王太子妃の怒りが解けることもないだろうと思えた。
「実家の父から、戻ってくるように言われています…!」
絞り出した声にローガンが衝撃を受けた顔をした。
ミシェルだってローガンと離れたくはない。
ローガンとミシェルも政略結婚だ。だけどこれまで2人の仲は上手くいっていた。
お互いを気遣い合い、支え合い、これから伯爵家を盛り立てていくのだと思っていた。
だけど今はその将来が見えない。
国王夫妻や王太子夫妻に睨まれた伯爵家が浮かび上がることは二度となく、実家に影響を与えない為にはミシェルが離縁して実家に戻るか実家と縁を切るしかない。
「…両親と、話をさせてくれ…」
項垂れたローガンが弱弱しい声でそう言った。
それからしばらくして、カルヴィエ伯爵が爵位をローガンに譲って隠居することになった。
伯爵は自身が伯爵位を退き、領地に引き籠ることで伯爵家に慈悲を与えて欲しいとアリシアへ願い出ていたのだ。
ジョッシュは己の行いが父を引退させ、兄夫婦の離婚危機を招いたことに大きなショックを受けていた。
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