395 / 697
第2部 4章
19 旧友との再会③
しおりを挟む
「レイヴン様」
「これはレイヴン殿下」
アリシアとマルセルが同時に立ち上がって礼をする。
マルセルは平静を装っているが、駆けつけて来たレイヴンに驚いているようだ。
それはレイヴンにもわかったようで、アリシアの腰に腕をまわしながら気まずそうな顔をしている。
「…アリシアを待ってたんだ」
それは苦しい言い訳だった。
アリシアはレイヴンと待ち合わせなどしていない。大体今は執務中の時間である。
だけどマルセルは信じたようで、「それは妃殿下をお引止めして申し訳ありませんでした」と言って改めて頭を下げた。
レイヴンの後ろにはエレノアがいる。
先程エレノアが傍を離れたのは、アリシアが遅れることを知らせる為だと受け取ったらしい。
マルセルは以前アリシアが抱いていた気持ちなど知らないのだから、特別なことがあるとは思っていないのだ。
「マルセル殿は壮行会の時、広場でジェーンのスピーチを聞いておられたそうですわ。素晴らしい淑女となったジェーンを見て、その感動を伝えて下さったのです」
「そうか。確かにあの日のジェーン嬢は素晴らしかった」
そう言ってレイヴンは笑顔を見せる。
それは作られた笑顔だとアリシアにはわかったけれど、気分を害してはいないようだ。
アリシアはホッとした。
「それにしても、マルセル殿が王宮にいるのは珍しいことですわ。今日は何かあったのでしょうか?」
それは素朴な疑問だった。
マルセルと顔を合わせることがあまりないのは、マルセルが貴族院の議員であり、宮廷で役職に就いていないからだ。議員は通常議場の傍にある議員会館で執務をしているか、議場で議会を開いている。
アリシアと会ったのは偶然で、アリシアに会いに来たわけではない。それならば王宮へ来た理由が他にあるはずなのだ。
「今日は国王陛下に招かれたのですよ。陛下とは執務室でお話をさせていただきました。実は壮行会の後、度々招いて下さっているのです」
そう言ってマルセルは笑顔を見せた。
誇らしそうな笑顔だった。
「壮行会で素晴らしいジェーン嬢の姿を見て、陛下は改めてあの年の卒業生に注目して下さっているようです。それでわたしにも声が掛かったのですよ」
「まあ」
アリシアは思わずレイヴンの顔を見た。レイヴンは気まずそうに視線を逸らす。
レイヴンはマルセルが国王に度々招かれていることを知っていたようだ。
学園ではいつも4人でトップを争っていた。
その内の2人は王太子と王太子妃であり、ジェーンはアルスタへ旅立った。
そうなれば残りの1人であるマルセルへ国王の関心が向かうというのも頷ける。
「陛下は議員としてのわたしの活動もお調べになったようでお褒めの言葉をいただきました。いずれは宮廷で仕事をすることを考えて欲しいとも仰ってくださいましたが、有難いことです」
「これはレイヴン殿下」
アリシアとマルセルが同時に立ち上がって礼をする。
マルセルは平静を装っているが、駆けつけて来たレイヴンに驚いているようだ。
それはレイヴンにもわかったようで、アリシアの腰に腕をまわしながら気まずそうな顔をしている。
「…アリシアを待ってたんだ」
それは苦しい言い訳だった。
アリシアはレイヴンと待ち合わせなどしていない。大体今は執務中の時間である。
だけどマルセルは信じたようで、「それは妃殿下をお引止めして申し訳ありませんでした」と言って改めて頭を下げた。
レイヴンの後ろにはエレノアがいる。
先程エレノアが傍を離れたのは、アリシアが遅れることを知らせる為だと受け取ったらしい。
マルセルは以前アリシアが抱いていた気持ちなど知らないのだから、特別なことがあるとは思っていないのだ。
「マルセル殿は壮行会の時、広場でジェーンのスピーチを聞いておられたそうですわ。素晴らしい淑女となったジェーンを見て、その感動を伝えて下さったのです」
「そうか。確かにあの日のジェーン嬢は素晴らしかった」
そう言ってレイヴンは笑顔を見せる。
それは作られた笑顔だとアリシアにはわかったけれど、気分を害してはいないようだ。
アリシアはホッとした。
「それにしても、マルセル殿が王宮にいるのは珍しいことですわ。今日は何かあったのでしょうか?」
それは素朴な疑問だった。
マルセルと顔を合わせることがあまりないのは、マルセルが貴族院の議員であり、宮廷で役職に就いていないからだ。議員は通常議場の傍にある議員会館で執務をしているか、議場で議会を開いている。
アリシアと会ったのは偶然で、アリシアに会いに来たわけではない。それならば王宮へ来た理由が他にあるはずなのだ。
「今日は国王陛下に招かれたのですよ。陛下とは執務室でお話をさせていただきました。実は壮行会の後、度々招いて下さっているのです」
そう言ってマルセルは笑顔を見せた。
誇らしそうな笑顔だった。
「壮行会で素晴らしいジェーン嬢の姿を見て、陛下は改めてあの年の卒業生に注目して下さっているようです。それでわたしにも声が掛かったのですよ」
「まあ」
アリシアは思わずレイヴンの顔を見た。レイヴンは気まずそうに視線を逸らす。
レイヴンはマルセルが国王に度々招かれていることを知っていたようだ。
学園ではいつも4人でトップを争っていた。
その内の2人は王太子と王太子妃であり、ジェーンはアルスタへ旅立った。
そうなれば残りの1人であるマルセルへ国王の関心が向かうというのも頷ける。
「陛下は議員としてのわたしの活動もお調べになったようでお褒めの言葉をいただきました。いずれは宮廷で仕事をすることを考えて欲しいとも仰ってくださいましたが、有難いことです」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,708
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる