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第2部 4章
23 出発②
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房飾りも腕輪も、いわゆる「御守り」だ。
剣につける房飾りは勝利を、身に着ける腕輪は持ち主の無事を願う意味を持つ。
戦争があった頃には女たちが戦場へ向かう夫や婚約者の無事を願い、房飾りや腕輪を贈っていたという。
願いを籠めれば籠めただけ強い加護の力を持つ。
いつの頃からかそう信じられるようになり、どちらも手作りされる様になっていった。
もちろん戦争が激しくなると王太子や国王が戦場に立つこともある。
アリシアが妃教育で作り方を教えられたのは、万が一そんな状況になった時に正妃として立派な―要するに見栄えが良い―「御守り」を贈ることができるように、ということだった。
とはいえ、アナトリアでは先代国王の時代から戦争は起きていない。
今でも騎士の妻や婚約者たちは房飾りや腕輪を作っているし、騎士の剣や腕についているのを見ることができる。
だけどそれ以外では、年に一度行われる剣術大会の出場者に贈られるくらいである。
この剣術大会には学生時代のレイヴンも出場し、まずまずの成績を収めていた。
ただ学生時代の参加は義務的なものであり、そこで就職先を探す必要もないレイヴンは、卒業と同時に出場するのを止めている。
レイヴンの部屋で昔贈った房飾りや腕輪を見たアリシアは、今度こそ心を込めて作ろうと心に決めた。
だけど今のレイヴンに必要なのか、不安でもあった。
それがレイヴンはこの旅の途上で何かあればアリシアを守ろうと鍛錬を重ねているという。
それならばアリシアも、レイヴンの勝利と無事を願う「御守り」を贈ろうと思ったのだ。
馬車がようやく王都の街を抜けた。
街道に出ると一気に人家が減って人通りが少なくなる。ここからすれ違うのは街へ行商に向かう馬車がほとんどであり、商人たちは王家の馬車と行き会うと端に寄って頭を下げ、行列が通り過ぎるのを待つ。沿道に出てくる民衆とは違って2人が手を振る必要もない。
レイヴンはホッと息を吐いた。
「次の町までしばらくあるから、疲れてるなら眠っても大丈夫だよ」
「私なら大丈夫ですわ。外の景色を見ていてもよろしいですか?」
「そうだね、アリシアが王都を出ることなんてないもんね」
王都では孤児院や病院へ毎月慰問に行っているし、そこで聞いてきた問題点を確かめに現地へ足を運ぶこともある。だけど王都の外へ出ることはない。
都会に慣れた人には単調で退屈に見える風景でもアリシアには新鮮で珍しく映るのだろう。
そう思っていたレイヴンだが、アリシアは窓の外へ目を向けたまま嬉しそうな微笑みを浮かべた。
「はい。本当に、懐かしくて」
ここでレイヴンはハッとした。
王都から続くこの道は、ルトビア公爵家の領地へも続いているのだ。
休憩を取ることになっている町から少し行くと二股に別れる道が出てくる。そこで今回とは違う方の道を選べばいずれルトビア公爵家の領地へたどり着く。
アリシアはレイヴンと婚姻を結ぶ前も妃教育の為にあまり王都を離れることができなかった。
だけど年に一度、年越しの時は領地へ戻って一族と新年を迎えることができる。
アリシアはその時のことを思い出しているのだ。
レイヴンはアリシアの視線を追って窓の外を見た。
向かっている領地はこれまで何度も訪れたことがある場所だ。この道を通るのも、この景色を見るのも初めてではない。
だけど今見るこの景色は、レイヴンにとって特別なものになった。
剣につける房飾りは勝利を、身に着ける腕輪は持ち主の無事を願う意味を持つ。
戦争があった頃には女たちが戦場へ向かう夫や婚約者の無事を願い、房飾りや腕輪を贈っていたという。
願いを籠めれば籠めただけ強い加護の力を持つ。
いつの頃からかそう信じられるようになり、どちらも手作りされる様になっていった。
もちろん戦争が激しくなると王太子や国王が戦場に立つこともある。
アリシアが妃教育で作り方を教えられたのは、万が一そんな状況になった時に正妃として立派な―要するに見栄えが良い―「御守り」を贈ることができるように、ということだった。
とはいえ、アナトリアでは先代国王の時代から戦争は起きていない。
今でも騎士の妻や婚約者たちは房飾りや腕輪を作っているし、騎士の剣や腕についているのを見ることができる。
だけどそれ以外では、年に一度行われる剣術大会の出場者に贈られるくらいである。
この剣術大会には学生時代のレイヴンも出場し、まずまずの成績を収めていた。
ただ学生時代の参加は義務的なものであり、そこで就職先を探す必要もないレイヴンは、卒業と同時に出場するのを止めている。
レイヴンの部屋で昔贈った房飾りや腕輪を見たアリシアは、今度こそ心を込めて作ろうと心に決めた。
だけど今のレイヴンに必要なのか、不安でもあった。
それがレイヴンはこの旅の途上で何かあればアリシアを守ろうと鍛錬を重ねているという。
それならばアリシアも、レイヴンの勝利と無事を願う「御守り」を贈ろうと思ったのだ。
馬車がようやく王都の街を抜けた。
街道に出ると一気に人家が減って人通りが少なくなる。ここからすれ違うのは街へ行商に向かう馬車がほとんどであり、商人たちは王家の馬車と行き会うと端に寄って頭を下げ、行列が通り過ぎるのを待つ。沿道に出てくる民衆とは違って2人が手を振る必要もない。
レイヴンはホッと息を吐いた。
「次の町までしばらくあるから、疲れてるなら眠っても大丈夫だよ」
「私なら大丈夫ですわ。外の景色を見ていてもよろしいですか?」
「そうだね、アリシアが王都を出ることなんてないもんね」
王都では孤児院や病院へ毎月慰問に行っているし、そこで聞いてきた問題点を確かめに現地へ足を運ぶこともある。だけど王都の外へ出ることはない。
都会に慣れた人には単調で退屈に見える風景でもアリシアには新鮮で珍しく映るのだろう。
そう思っていたレイヴンだが、アリシアは窓の外へ目を向けたまま嬉しそうな微笑みを浮かべた。
「はい。本当に、懐かしくて」
ここでレイヴンはハッとした。
王都から続くこの道は、ルトビア公爵家の領地へも続いているのだ。
休憩を取ることになっている町から少し行くと二股に別れる道が出てくる。そこで今回とは違う方の道を選べばいずれルトビア公爵家の領地へたどり着く。
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だけど年に一度、年越しの時は領地へ戻って一族と新年を迎えることができる。
アリシアはその時のことを思い出しているのだ。
レイヴンはアリシアの視線を追って窓の外を見た。
向かっている領地はこれまで何度も訪れたことがある場所だ。この道を通るのも、この景色を見るのも初めてではない。
だけど今見るこの景色は、レイヴンにとって特別なものになった。
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