【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 4章

24 思い出話①

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 馬車は目的地に向けて順調に進んでいた。
 懐かしそうに外を眺めるアリシアへ、レイヴンが領地のことを訊く。
 アリシアは昔を思い出しながらゆっくりと話し出した。

「父が王宮で役職をいただいていますから、私たちは王都での生活が当然のことになっています。ですが領主が領民の生活を知らないわけにはいきません。なので私たちが幼い頃から年に数回、母が私たちを連れて領地へ戻っていまし」

 レイヴンは頷いた。
 アリシアが婚約者に選ばれるよりも前に、レオナルドがレイヴンの学友として選ばれていた。
 毎週決まった曜日にレイヴンの元を訪れていたレオナルドだったが、年に数回、数週間からひと月ほど領地に戻る時があった。初めの頃は寂しくて「嫌だ」と言って困らせた覚えがある。

「領地には一族の子どもたちもいました。公爵邸で私の侍女をしていたマリアンも一族の子です。出会った頃は互いに子どもでしたから、マリアンが私の姉のように振る舞い、マリアンの母君に見つかっては怒られていましたね」

 アリシアがくすくすと笑う。
 領地にいる間はジェーンと会うことができない。
 おままごとやお人形遊びといった女の子の遊びにレオナルドは嫌がらず相手をしてくれたけれど、やはり外で遊びたがっているのは感じていた。
 一族の子どもは沢山いたけれど、その中で率先してアリシアの相手をしてくれたのがマリアンだ。
 幼い頃のアリシアは、マリアンを領地でしか会えない姉だと思っていた。

 公爵家の領地は広く、その時々で違うところへ行くのでマリアンに会えない時もあった。
 幼いアリシアはそれが理解できずにマリアンを探して泣いていたという。

 アリシアの話を聞きながら、レイヴンは公爵邸で見かけたマリアンを思い出した。

 公爵家の使用人はよく教育されていて、レイヴンをどんなに不快に思っていても態度にそれ出すすことはない。だけどアリシアの後ろに控えたマリアンからは、いつも冷ややかな視線を感じていた。
 歳を重ねて分別がつくようになり、アリシアとの身分の違いを理解するようになってからも、マリアンがアリシアを大切にしているのは間違いない。
 露見すれば酷い罰を受けるとわかっていながらデミオンに負わされた傷を隠蔽する協力までしたのだ。 
 今も心の中では妹のように思っているのかもしれない。

「兄も一族の子どもたちと遊ぶことで逞しくなったのかもしれません。子どもは遠慮を知りませんから、兄と本気で喧嘩をして、取っ組み合いになることもありました。王都ではみんな身分に縛られていて、殴り合いの喧嘩なんてできませんものね」

 相手の親は青くなっていたけれど、アダムやオレリアは多少の怪我なら何も言わない。
 喧嘩に負けて悔しくても、レオナルドが親の権力ちからを使うこともない。

 王都では公爵家の子息としてどこへ行っても丁重に扱われていた。
 レオナルドが何か嫌なことを言ったとしても、機嫌を取るよう親に言い含められた子息たちは我慢するしかない。
 それを当然として育っていれば、傲慢で嫌な大人になっていただろう。

「叔母が亡くなった後、ジェーンが一緒に領地へ来るようになり、私がレイヴン様の婚約者に選ばれて中々領地へ戻れなくなり…。それからはあっという間でしたわ」

 公爵家では子どもたちの側付きを一族の子の中から選ぶのが慣例となっている。
 10歳になった時、アリシアは迷いなくマリアンを選んだ。
 レオナルドも側付きの侍女を1人、選んでいる。


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