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第2部 4章
26 思い出話③
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2人はしばらく抱き合ったまま無言で馬車に揺られていた。
ゴトゴトという音だけが聞こえている。
アリシアはもうあの時のことを気にしなくて良いと言う。
だけどあの出来事は、アリシアの気持ちを傷つけたこと以外にも問題があった。
それはあの時、レイヴンは自分が正しいと信じていたことである。
そして実際のところ貴族の結婚に感情が必要ないことも、妃教育の間にアリシアが婚約者に相応しくないと判断されれば別の者に変えられたということも間違いではなかいのだ。
だけど正しいことだからといって何でも言って良いわけではない。
それがわかっていなかったレイヴンは、事実を告げてアリシアを傷つけた。
それではレイヴンが傷つけたのは、アリシアだけなのだろうか。
……いや、きっと無自覚に傷つけた相手は他にもいる。
レオナルドには何度も注意をされていたのだから。
そのことに気がついてから、レイヴンはその場だけで人を判断するのを止めた。
口に出す前に言って良いことかどうか考えるようになった。
そうしたらいつの間にか身分を鼻にかけない公平で優しい王子だと言われる様になっていた。
学園に入る頃には、レイヴンとアリシアの仲が表面的なものだと誰もが知っていた。
在学中には他の令嬢から密かに言い寄られたこともある。
愛情のない関係ならばすぐに壊せると思ったのか、妖艶な仕草で体を使って落とそうとする令嬢もいた。
純情そうな令嬢に気持ちを打ち明けられたこともあった。
だけど彼女が「身分を鼻にかけない、誰にでも公平で優しいレイヴン」を好きだと言うのなら、それはアリシアが変えてくれたレイヴンだ。
レイヴンがふっと笑った。
折角2人きりで出掛けているのに、暗い空気のまま過ごしたくはない。
アリシアはレイヴンに抱き着いたまま、外の風景を見ることもできずにいる。
レイヴンはアリシアの旋毛に口づけると、できるだけ明るい口調になるよう心がけながら口を開いた。
「僕もおままごとや人形遊びはしたことがあるよ」
「え?」
アリシアが顔を上げると、レイヴンは微笑んでいた。
気まずくなった雰囲気を変えようとしているのが伝わってくる。だからアリシアも笑顔を見せた。
「どなたとお人形遊びを?」
「カナリーだよ。立太子するまでは僕も正殿に住んでいたから、よくカナリーの相手をしていたんだ。アイビスがおままごとや人形遊びをするようになった頃は僕も学園に入学するところだったから、あまり一緒に遊べなかったかな。その代わりジェイがよく相手をしていたね」
アリシアはそこでハッとした。
レイヴンは立太子すると1人で王太子宮に移らなければならなかった。きっとそれまでとは生活が一変しただろう。
夕食や夜の時間は家族と一緒に過ごせるとしても、それはとても僅かな時間だ。
初めて会った時、レイヴンは自分の立場をしっかり自覚していた。
それは幼い時から王太子として扱われ、王太子として教育を受けていたからだ。
その頃のアリシアは、両親や兄に守られて自由に伸び伸びと過ごしていた。
アリシアはレイヴンの背中へまわした腕に僅かに力を込めた。
レイヴンが変えようとしている明るい雰囲気を壊すことはできない。レイヴンが思い出話をしてくれているのはその為だ。
「レイヴン様もお兄様ですものね。優しいお兄様がいて、私たちは幸せですわ」
「僕もアリシアと遊びたかったな」
そうすることもできたのに、その可能性を潰したのは自分自身である。
わかっていうのについ言葉にしてしまう。
アリシアがきょとんとした顔をした。
「私のお兄様になりたかったのですか?」
「違うよ!!旦那様にしかなりたくない!!」
「まあ」
レイヴンが慌てて否定するとアリシアがコロコロと笑う。
そうしている内にも馬車はゴトゴトと進んでいた。
ゴトゴトという音だけが聞こえている。
アリシアはもうあの時のことを気にしなくて良いと言う。
だけどあの出来事は、アリシアの気持ちを傷つけたこと以外にも問題があった。
それはあの時、レイヴンは自分が正しいと信じていたことである。
そして実際のところ貴族の結婚に感情が必要ないことも、妃教育の間にアリシアが婚約者に相応しくないと判断されれば別の者に変えられたということも間違いではなかいのだ。
だけど正しいことだからといって何でも言って良いわけではない。
それがわかっていなかったレイヴンは、事実を告げてアリシアを傷つけた。
それではレイヴンが傷つけたのは、アリシアだけなのだろうか。
……いや、きっと無自覚に傷つけた相手は他にもいる。
レオナルドには何度も注意をされていたのだから。
そのことに気がついてから、レイヴンはその場だけで人を判断するのを止めた。
口に出す前に言って良いことかどうか考えるようになった。
そうしたらいつの間にか身分を鼻にかけない公平で優しい王子だと言われる様になっていた。
学園に入る頃には、レイヴンとアリシアの仲が表面的なものだと誰もが知っていた。
在学中には他の令嬢から密かに言い寄られたこともある。
愛情のない関係ならばすぐに壊せると思ったのか、妖艶な仕草で体を使って落とそうとする令嬢もいた。
純情そうな令嬢に気持ちを打ち明けられたこともあった。
だけど彼女が「身分を鼻にかけない、誰にでも公平で優しいレイヴン」を好きだと言うのなら、それはアリシアが変えてくれたレイヴンだ。
レイヴンがふっと笑った。
折角2人きりで出掛けているのに、暗い空気のまま過ごしたくはない。
アリシアはレイヴンに抱き着いたまま、外の風景を見ることもできずにいる。
レイヴンはアリシアの旋毛に口づけると、できるだけ明るい口調になるよう心がけながら口を開いた。
「僕もおままごとや人形遊びはしたことがあるよ」
「え?」
アリシアが顔を上げると、レイヴンは微笑んでいた。
気まずくなった雰囲気を変えようとしているのが伝わってくる。だからアリシアも笑顔を見せた。
「どなたとお人形遊びを?」
「カナリーだよ。立太子するまでは僕も正殿に住んでいたから、よくカナリーの相手をしていたんだ。アイビスがおままごとや人形遊びをするようになった頃は僕も学園に入学するところだったから、あまり一緒に遊べなかったかな。その代わりジェイがよく相手をしていたね」
アリシアはそこでハッとした。
レイヴンは立太子すると1人で王太子宮に移らなければならなかった。きっとそれまでとは生活が一変しただろう。
夕食や夜の時間は家族と一緒に過ごせるとしても、それはとても僅かな時間だ。
初めて会った時、レイヴンは自分の立場をしっかり自覚していた。
それは幼い時から王太子として扱われ、王太子として教育を受けていたからだ。
その頃のアリシアは、両親や兄に守られて自由に伸び伸びと過ごしていた。
アリシアはレイヴンの背中へまわした腕に僅かに力を込めた。
レイヴンが変えようとしている明るい雰囲気を壊すことはできない。レイヴンが思い出話をしてくれているのはその為だ。
「レイヴン様もお兄様ですものね。優しいお兄様がいて、私たちは幸せですわ」
「僕もアリシアと遊びたかったな」
そうすることもできたのに、その可能性を潰したのは自分自身である。
わかっていうのについ言葉にしてしまう。
アリシアがきょとんとした顔をした。
「私のお兄様になりたかったのですか?」
「違うよ!!旦那様にしかなりたくない!!」
「まあ」
レイヴンが慌てて否定するとアリシアがコロコロと笑う。
そうしている内にも馬車はゴトゴトと進んでいた。
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