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第2部 4章
44 収穫①
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「要するに、これまで子を生まずにここへ来た妃はいないということよ」
ドナとジーナが目を見合わせた。
それは初めからわかっていたことである。2人共アリシアが何を言いたいのかわからない、という表情だ。
「子を生まずにここへ来た妃はいない……。つまり妾はいた、ということですか」
「!!」
エレノアがそう言うと、ドナとジーナが一斉にアリシアの顔を見た。
アリシアがゆっくりと頷く。
「歴代の王太子の中には避暑に妾を連れて来た方がいるのでしょうね」
妃であろうと妾であろうと、視察に女性を同行した王太子はレイヴンが初めてである。だからこそアリシアの同行を認める・認めないの騒ぎが起きた。
だけど夏の暑さを避け、ひと時の休暇を楽しみに王都を離れた王太子が妾を連れていても、それを表立って咎める者はいないだろう。
そもそも公的な決まりがあるわけでもないのに、妃が避暑に赴くのは子を生んでから、という慣例になっていたので、レイヴンが避暑に女性を同行したいと思えば愛人を連れて行くしかなかったのだ。
因みにレイヴンは、婚姻以来まだ一度も避暑に出掛けていない。
「その女性がなぜ側妃にならなかったのか、それともなれなかったのか、詳しいことはわからないけれど、妃を差し置いて同行するような女性が真面な令嬢だったとは思えないわ。きっとその城の者たちに多大な迷惑を掛けていたのでしょうね」
王領の者たちが国王や王太子が連れて来た妾や愛人を嫌うのは理解できる。
そしてメトワの者たちにとって、アリシアはかつての国王や王太子が連れて来た妾や愛人と同じなのだ。
王太子が子を生んでいない妃を同行させることはない。それでも同行するのは、王太子の寵愛を笠に着て好き勝手振舞う愛人だけである。
だけど王家に仕える者たちの認識では、レイヴンとアリシアは形だけの夫婦だ。
その関係が変わったのは、王都から離れたこの地までまだ伝わっていない……。
「私が振りかざしたのは、レイヴン様の寵愛ではなく公爵家の権力かしら。結婚してもうすぐ3年経つのに、私にはまだ子どもがいない。レイヴン様が私やルトビア公爵家の目を離れるのはこの視察の間だけ。つまり、レイヴン様がこの視察の間に側妃にする娘を選ぶのが怖くて強引について来た、といったところでしょうね」
皆、そう思っているのでしょう?と問い掛けると、アンナは青くなって俯いた。
わかりやすい答えである。
それがわかれば、使用人たちがこれまで見せてきた態度にも納得できた。
この城の者たちは、アリシアが嫌がるレイヴンを押し切り無理矢理ついて来たと思っていた。
それなのにレイヴンは皆の前でアリシアを女主人として従うよう言い渡し、寵愛している素振りを見せる。
アリシアも皆が思っていたような傲慢な態度を見せることはなく、派手な格好をするわけでもない。
あのアリシアに絡みつくような視線や、レイヴンがアリシアへ愛情を示す度にざわついたのは、皆の戸惑いの現れだったのだ。
「アニーが言う『地味な衣装』というのも、皆が想像していたより地味な衣装、ということでしょうね。皆が想像していたのはそう……、きっとアンジュのような衣装でしょう」
ドナとジーナが目を見合わせた。
それは初めからわかっていたことである。2人共アリシアが何を言いたいのかわからない、という表情だ。
「子を生まずにここへ来た妃はいない……。つまり妾はいた、ということですか」
「!!」
エレノアがそう言うと、ドナとジーナが一斉にアリシアの顔を見た。
アリシアがゆっくりと頷く。
「歴代の王太子の中には避暑に妾を連れて来た方がいるのでしょうね」
妃であろうと妾であろうと、視察に女性を同行した王太子はレイヴンが初めてである。だからこそアリシアの同行を認める・認めないの騒ぎが起きた。
だけど夏の暑さを避け、ひと時の休暇を楽しみに王都を離れた王太子が妾を連れていても、それを表立って咎める者はいないだろう。
そもそも公的な決まりがあるわけでもないのに、妃が避暑に赴くのは子を生んでから、という慣例になっていたので、レイヴンが避暑に女性を同行したいと思えば愛人を連れて行くしかなかったのだ。
因みにレイヴンは、婚姻以来まだ一度も避暑に出掛けていない。
「その女性がなぜ側妃にならなかったのか、それともなれなかったのか、詳しいことはわからないけれど、妃を差し置いて同行するような女性が真面な令嬢だったとは思えないわ。きっとその城の者たちに多大な迷惑を掛けていたのでしょうね」
王領の者たちが国王や王太子が連れて来た妾や愛人を嫌うのは理解できる。
そしてメトワの者たちにとって、アリシアはかつての国王や王太子が連れて来た妾や愛人と同じなのだ。
王太子が子を生んでいない妃を同行させることはない。それでも同行するのは、王太子の寵愛を笠に着て好き勝手振舞う愛人だけである。
だけど王家に仕える者たちの認識では、レイヴンとアリシアは形だけの夫婦だ。
その関係が変わったのは、王都から離れたこの地までまだ伝わっていない……。
「私が振りかざしたのは、レイヴン様の寵愛ではなく公爵家の権力かしら。結婚してもうすぐ3年経つのに、私にはまだ子どもがいない。レイヴン様が私やルトビア公爵家の目を離れるのはこの視察の間だけ。つまり、レイヴン様がこの視察の間に側妃にする娘を選ぶのが怖くて強引について来た、といったところでしょうね」
皆、そう思っているのでしょう?と問い掛けると、アンナは青くなって俯いた。
わかりやすい答えである。
それがわかれば、使用人たちがこれまで見せてきた態度にも納得できた。
この城の者たちは、アリシアが嫌がるレイヴンを押し切り無理矢理ついて来たと思っていた。
それなのにレイヴンは皆の前でアリシアを女主人として従うよう言い渡し、寵愛している素振りを見せる。
アリシアも皆が思っていたような傲慢な態度を見せることはなく、派手な格好をするわけでもない。
あのアリシアに絡みつくような視線や、レイヴンがアリシアへ愛情を示す度にざわついたのは、皆の戸惑いの現れだったのだ。
「アニーが言う『地味な衣装』というのも、皆が想像していたより地味な衣装、ということでしょうね。皆が想像していたのはそう……、きっとアンジュのような衣装でしょう」
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