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第2部 4章
49 1日の報告を②
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晩餐へ向かう為、レイヴンはアリシアをエスコートして部屋を出た。
客人を招いた晩餐は左側の建物で行われるので少し距離がある。
レイヴンはアリシアの表情が硬いことが気になっていた。
他の者にはわからなくても、レイヴンにはわかる。
少し歩いたところで、付き従う侍女たちには聞こえない様に小声でアリシアに話し掛けた。
「今朝のことは聞いたよ。トーマスとリアーナから謝罪も受けた。トーマスは何とか処罰を軽くできないかと言っていたけど、僕はアリシアの決定が正しいと思うから、処罰に変更はないと答えた」
レイヴンはアリシアの同行が決まった時から使用人たちの反応が予想できていた。
だから城に着いてすぐに、アリシアを女主人として接するよう皆の前で言い渡したのだ。そしてその後も、アリシアを愛していると態度で示してきた。
だけど使用人たちは、そんなレイヴンの様子を見ても驚くだけでアリシアへ向ける態度を改めようとはしなかった。
そしてレイヴンが傍を離れたタイミングで事件は起きた。
「そのメイドは悪質だと思う。僕がアリシアの傍を離れるのを待っていたんだろう。僕がいなければ、アリシアに無礼を働いても咎められないと思ったんだ。不敬であること以上に僕はそれが許せない。アリシアが言う通り、この城で働くのに適していない人物だ」
レイヴンは、トーマスが処罰の減刑をレイヴンに求めて来たのも許せなかった。
アリシアがメイドへ告げた通り、滞在中の人事権はアリシアが握っている。処罰を決めたのもアリシアだ。
その内容に不服があるならアリシアへ嘆願し、減刑を求めるべきである。
それなのにトーマスはレイヴンに直訴することで、レイヴンからアリシアへ減刑するよう申し付けさせようとした。
あまりにもアリシアを軽く見た行いだ。
今のレイヴンは、メイドを減刑するどころかトーマスを罰したいとすら思っている。
「リアーナにはそのメイドの部屋を今日中に片付けるよう言ってある。メイドは既に城を出たはずだ」
「……そうですか」
レイヴンはアリシアの決定を全面的に支持している。そう伝えたのに、アリシアから返って来たのは鈍い反応だ。
レイヴンの不安が募る。
アリシアが浮かない顔をしているのは、メイドのことが原因だと思っていた。
だけど他に理由があるのだろうか。
「他にも、何かあった……?」
レイヴンがメイドの件を知っているのは、アリシアにつけた侍従が知らせを寄越したからだ。
だけどそれ以降は、侍従からも護衛からも何の報告も受けていない。
「何もありませんわ」
アリシアが笑った。
感情を隠した王太子妃の笑顔だ。
だけどレイヴンは、その瞳が動揺を隠すように揺れているのに気がついた。
「アリシア」
「本当に何でもありません。これからの晩餐会に緊張しているだけですわ」
普段会うことのない方たちばかりですから。
そう言って笑うアリシアに、レイヴンは言葉を返せなかった。
どんな相手であってもアリシアが臣下との晩餐会で緊張するとは思えない。だけど憂鬱な時間が待っていることに気がついているようだ。
それを思えば、これから行われる晩餐会に動揺しているのかと思われた。
「愛しているのはアリシアだけだよ」
レイヴンがそう言うと、アリシアはやっと本当の笑顔を見せた。
客人を招いた晩餐は左側の建物で行われるので少し距離がある。
レイヴンはアリシアの表情が硬いことが気になっていた。
他の者にはわからなくても、レイヴンにはわかる。
少し歩いたところで、付き従う侍女たちには聞こえない様に小声でアリシアに話し掛けた。
「今朝のことは聞いたよ。トーマスとリアーナから謝罪も受けた。トーマスは何とか処罰を軽くできないかと言っていたけど、僕はアリシアの決定が正しいと思うから、処罰に変更はないと答えた」
レイヴンはアリシアの同行が決まった時から使用人たちの反応が予想できていた。
だから城に着いてすぐに、アリシアを女主人として接するよう皆の前で言い渡したのだ。そしてその後も、アリシアを愛していると態度で示してきた。
だけど使用人たちは、そんなレイヴンの様子を見ても驚くだけでアリシアへ向ける態度を改めようとはしなかった。
そしてレイヴンが傍を離れたタイミングで事件は起きた。
「そのメイドは悪質だと思う。僕がアリシアの傍を離れるのを待っていたんだろう。僕がいなければ、アリシアに無礼を働いても咎められないと思ったんだ。不敬であること以上に僕はそれが許せない。アリシアが言う通り、この城で働くのに適していない人物だ」
レイヴンは、トーマスが処罰の減刑をレイヴンに求めて来たのも許せなかった。
アリシアがメイドへ告げた通り、滞在中の人事権はアリシアが握っている。処罰を決めたのもアリシアだ。
その内容に不服があるならアリシアへ嘆願し、減刑を求めるべきである。
それなのにトーマスはレイヴンに直訴することで、レイヴンからアリシアへ減刑するよう申し付けさせようとした。
あまりにもアリシアを軽く見た行いだ。
今のレイヴンは、メイドを減刑するどころかトーマスを罰したいとすら思っている。
「リアーナにはそのメイドの部屋を今日中に片付けるよう言ってある。メイドは既に城を出たはずだ」
「……そうですか」
レイヴンはアリシアの決定を全面的に支持している。そう伝えたのに、アリシアから返って来たのは鈍い反応だ。
レイヴンの不安が募る。
アリシアが浮かない顔をしているのは、メイドのことが原因だと思っていた。
だけど他に理由があるのだろうか。
「他にも、何かあった……?」
レイヴンがメイドの件を知っているのは、アリシアにつけた侍従が知らせを寄越したからだ。
だけどそれ以降は、侍従からも護衛からも何の報告も受けていない。
「何もありませんわ」
アリシアが笑った。
感情を隠した王太子妃の笑顔だ。
だけどレイヴンは、その瞳が動揺を隠すように揺れているのに気がついた。
「アリシア」
「本当に何でもありません。これからの晩餐会に緊張しているだけですわ」
普段会うことのない方たちばかりですから。
そう言って笑うアリシアに、レイヴンは言葉を返せなかった。
どんな相手であってもアリシアが臣下との晩餐会で緊張するとは思えない。だけど憂鬱な時間が待っていることに気がついているようだ。
それを思えば、これから行われる晩餐会に動揺しているのかと思われた。
「愛しているのはアリシアだけだよ」
レイヴンがそう言うと、アリシアはやっと本当の笑顔を見せた。
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