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第2部 4章
56 アリシアの取り組み
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レイヴンを見送ると、アリシアはトーマスに馬車の用意を頼んだ。
トーマスが怪訝な顔をする。
「失礼ですが、どちらへ行かれるのでしょうか?」
警備のことがあるので、トーマスが行き先を気にするのは仕方がない。
だけどこれは初めから予定されていた外出なので、王都から連れて来ている護衛の騎士たちも了解しているのだ。
だからアリシアは簡潔に答える。
「町よ」
「街?」
トーマスは更におかしな顔をした。
「街には妃殿下がご満足されるような店はないと思いますが……」
トーマスはアリシアが買い物に行くとでも思っているのだろう。確かにアンジュやエミリーなら、街へ出掛けるといえば買い物だったかもしれない。
だけどそもそもアリシアは買い物に出掛けたりしない。買い物をしたい時は商人を城へ呼ぶ。
「買い物は王都ですれば十分よ。今日は病院をまわる予定なの」
アリシアには嫁いでから力を入れていることがあった。
それが医師の育成だ。
医者というのは、貴族の次男や三男が体面を損なわずに就ける職である。その為、王都にある王立病院には貴族出身の医師が多い。
だけど平民出身の医師がまったくいないわけではなく、同じ院内で治療にあたっている。
家を出ている以上、彼らは貴族籍を持っているとはいえ平民と同じ立場だ。それなのに平民出身の医師たちを下に見ていて何かと辛く当たる。貴族出身の者たちと平民出身の者たちでは出ている学校が違うことも原因だった。
平民出身の医師たちも、生まれながらに貴族には逆らえないという意識が植え付けられているので肩身の狭い思いをしていた。
そこでアリシアが考えたのが、貴族出身の医師と平民出身の医師が働く場所を分けることだ。
患者は同じ入り口から入っても、貴族出身の医師に診てもらいたい者は右へ行き、平民出身の医師に診てもらいたい者は左へ行くようにした。
当初は「平民の医者に診てもらいたい者なんていないだろう」とせせら笑っていた貴族出身の医師たちだったが、結果は反対だった。
彼らは見落としていたが、軽症で病院へ掛かるのはほとんどが平民だ。貴族にはお抱えの専属医がいる。
貴族が病院へ来る時は手術が必要な程の大病や大怪我の時だけで、その時は確かに貴族出身の医師に診てもらいたがるようだ。
だけどそんな患者はそう多くない。
病院へ来る患者の大半が平民で、彼らは平民の医師に診てもらうことを選んだ。
貴族出身の医師たちの横柄で高圧的な態度や、嫌々平民を診ている、といった態度に辟易していたのだ。
結果的に左側の診察室には連日大勢の患者が並び、右側の診察室は閑古鳥といった有様になった。
そこでアリシアは平民の医師が働く建物を同じ病院の敷地内に建てることにした。
だが患者が行列になるのは医師が足りていないからで、問題が解決したとはいえない。だからアリシアは、医者になる為の平民用の学校を新しく作ったのだ。
学校は3年制と6年制になっていて、3年制の課程を修了しただけでは手術などの大掛かりな治療はできない。
だけど王立病院だけではなく、町や村にある診療所に来る患者はほとんどが軽症者で、手術が必要な患者には大きな病院へ移ってもらっている。その小さな診療所さえ田舎の村では不足していて、村民は診療所のある近くの町まで歩いて行かなくてはならないのだ。
その状況を改善する為にも、診療所は3年制の課程を修了した時点で開けるようにした。
本人たちが希望すれば、卒業して数年経ってからでも6年制へ編入し、続きの課程を学べるようにしている。
その学校の、初めの生徒たちが卒業するまであと1年と少し。
出身の村や町で診療所を開きたいと望んでいる者もいるが、決まった希望地のない者たちもいる。
医師の派遣を望む診療所がどれ程ああるのか確認するのが今回の目的である。
トーマスが怪訝な顔をする。
「失礼ですが、どちらへ行かれるのでしょうか?」
警備のことがあるので、トーマスが行き先を気にするのは仕方がない。
だけどこれは初めから予定されていた外出なので、王都から連れて来ている護衛の騎士たちも了解しているのだ。
だからアリシアは簡潔に答える。
「町よ」
「街?」
トーマスは更におかしな顔をした。
「街には妃殿下がご満足されるような店はないと思いますが……」
トーマスはアリシアが買い物に行くとでも思っているのだろう。確かにアンジュやエミリーなら、街へ出掛けるといえば買い物だったかもしれない。
だけどそもそもアリシアは買い物に出掛けたりしない。買い物をしたい時は商人を城へ呼ぶ。
「買い物は王都ですれば十分よ。今日は病院をまわる予定なの」
アリシアには嫁いでから力を入れていることがあった。
それが医師の育成だ。
医者というのは、貴族の次男や三男が体面を損なわずに就ける職である。その為、王都にある王立病院には貴族出身の医師が多い。
だけど平民出身の医師がまったくいないわけではなく、同じ院内で治療にあたっている。
家を出ている以上、彼らは貴族籍を持っているとはいえ平民と同じ立場だ。それなのに平民出身の医師たちを下に見ていて何かと辛く当たる。貴族出身の者たちと平民出身の者たちでは出ている学校が違うことも原因だった。
平民出身の医師たちも、生まれながらに貴族には逆らえないという意識が植え付けられているので肩身の狭い思いをしていた。
そこでアリシアが考えたのが、貴族出身の医師と平民出身の医師が働く場所を分けることだ。
患者は同じ入り口から入っても、貴族出身の医師に診てもらいたい者は右へ行き、平民出身の医師に診てもらいたい者は左へ行くようにした。
当初は「平民の医者に診てもらいたい者なんていないだろう」とせせら笑っていた貴族出身の医師たちだったが、結果は反対だった。
彼らは見落としていたが、軽症で病院へ掛かるのはほとんどが平民だ。貴族にはお抱えの専属医がいる。
貴族が病院へ来る時は手術が必要な程の大病や大怪我の時だけで、その時は確かに貴族出身の医師に診てもらいたがるようだ。
だけどそんな患者はそう多くない。
病院へ来る患者の大半が平民で、彼らは平民の医師に診てもらうことを選んだ。
貴族出身の医師たちの横柄で高圧的な態度や、嫌々平民を診ている、といった態度に辟易していたのだ。
結果的に左側の診察室には連日大勢の患者が並び、右側の診察室は閑古鳥といった有様になった。
そこでアリシアは平民の医師が働く建物を同じ病院の敷地内に建てることにした。
だが患者が行列になるのは医師が足りていないからで、問題が解決したとはいえない。だからアリシアは、医者になる為の平民用の学校を新しく作ったのだ。
学校は3年制と6年制になっていて、3年制の課程を修了しただけでは手術などの大掛かりな治療はできない。
だけど王立病院だけではなく、町や村にある診療所に来る患者はほとんどが軽症者で、手術が必要な患者には大きな病院へ移ってもらっている。その小さな診療所さえ田舎の村では不足していて、村民は診療所のある近くの町まで歩いて行かなくてはならないのだ。
その状況を改善する為にも、診療所は3年制の課程を修了した時点で開けるようにした。
本人たちが希望すれば、卒業して数年経ってからでも6年制へ編入し、続きの課程を学べるようにしている。
その学校の、初めの生徒たちが卒業するまであと1年と少し。
出身の村や町で診療所を開きたいと望んでいる者もいるが、決まった希望地のない者たちもいる。
医師の派遣を望む診療所がどれ程ああるのか確認するのが今回の目的である。
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