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第2部 4章
63 牧場①
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レイヴンとアリシアは馬車で揺られていた。
今日はメトワの生産を担う農場や果樹園を訪れることになっている。
レイヴンの視察にアリシアも付き合う形だが、様々な土地や人々の暮らしを見てみたいアリシアは王都を出る前からこの視察を楽しみにしていた。
「さっきの林檎、すごく美味しかったね」
「はい。すごく甘くて美味しかったです。アップルパイもジャムも、これまで食べた中で一番美味しいと思いました」
レイヴンとアリシアは最初に訪れた林檎農園を出て来たところである。
林檎園では林檎樹の中を歩きながら農園主から今年の生産状況について説明を受けた。
害獣のハタネズミから林檎樹を守るフクロウにも会わせてもらい、収穫したばかりの林檎やアップルパイ、林檎ジャムを振る舞われた。
振舞われた林檎やお菓子を美味しそうに食べるアリシアを見て、レイヴンは今後王宮にこの農園の林檎を仕入れようと決めていた。
これから向かうのは牧場だ。ここからは少し距離がある。移動が長くなってしまうのは其々の敷地が広いから仕方がない。
アリシアは窓から外を眺めながら楽しそうに微笑んでいる。去年まではこんな時も1人きりだったことを思えば、アリシアが隣にいる今日は移動時間も楽しく感じられた。
牧場に着くと、ここでも2人は歓迎を受けた。
アリシアは内心でホッとする。
やはり田舎では王家の慣習など知られていないのだと思ったが、どうやらそれだけではないようだ。牧場を歩いている時に、行き会った従業員に礼を言われたのだ。
「妃殿下が故郷の村に新しい医者を派遣して下さると聞きました。今の先生はもう御年なので……。先生に何かあったらどうなるのかと不安だったのです。村には今も両親がいますから」
村の名前を訊くと、昨日訪れた村の1つだった。
年老いた医者の夫妻が診療所を開いていた。
すぐに医者を派遣することはできないかもしれない。
だけど数年後には、と希望が持てれば、それまで頑張ることができると夫婦揃って涙を流していた。
昨日見た村の様子を話すと、その従業員も嬉しそうに顔を綻ばせる。辻馬車を乗り継いでもかなりの距離があるので、中々故郷には帰れないようだ。
昨日見送りに出てくれた村人の中に、この従業員の両親もいたのかもしれない。
彼が次に帰る時まで健やかに。
アリシアは心の中でそう祈った。
柵に囲われた放牧地で草を食む牛を眺めながら、牛の放牧地を通り過ぎる。
次にある羊の放牧地へ向かう途中で、アリシアは木の麓に集まる子どもたちを見つけた。
子どもたちは、皆同じ方向を向いて座っている。
その子どもたちと向かい合うように立つ青年が、木に取り付けた小さな黒板の様なものに何かを書いている。
その様子に興味を引かれたアリシアは、案内に立つ牧場主に、あれは何をしているのかと訊いてみた。
「ああ、あれは子どもたちに字を教えているのですよ」
「まあ!」
牧場主の当然といった態度にアリシアは驚いた。
この国で平民の子どもたちが字を学ぶというのは、当然のことではないのだ。
今日はメトワの生産を担う農場や果樹園を訪れることになっている。
レイヴンの視察にアリシアも付き合う形だが、様々な土地や人々の暮らしを見てみたいアリシアは王都を出る前からこの視察を楽しみにしていた。
「さっきの林檎、すごく美味しかったね」
「はい。すごく甘くて美味しかったです。アップルパイもジャムも、これまで食べた中で一番美味しいと思いました」
レイヴンとアリシアは最初に訪れた林檎農園を出て来たところである。
林檎園では林檎樹の中を歩きながら農園主から今年の生産状況について説明を受けた。
害獣のハタネズミから林檎樹を守るフクロウにも会わせてもらい、収穫したばかりの林檎やアップルパイ、林檎ジャムを振る舞われた。
振舞われた林檎やお菓子を美味しそうに食べるアリシアを見て、レイヴンは今後王宮にこの農園の林檎を仕入れようと決めていた。
これから向かうのは牧場だ。ここからは少し距離がある。移動が長くなってしまうのは其々の敷地が広いから仕方がない。
アリシアは窓から外を眺めながら楽しそうに微笑んでいる。去年まではこんな時も1人きりだったことを思えば、アリシアが隣にいる今日は移動時間も楽しく感じられた。
牧場に着くと、ここでも2人は歓迎を受けた。
アリシアは内心でホッとする。
やはり田舎では王家の慣習など知られていないのだと思ったが、どうやらそれだけではないようだ。牧場を歩いている時に、行き会った従業員に礼を言われたのだ。
「妃殿下が故郷の村に新しい医者を派遣して下さると聞きました。今の先生はもう御年なので……。先生に何かあったらどうなるのかと不安だったのです。村には今も両親がいますから」
村の名前を訊くと、昨日訪れた村の1つだった。
年老いた医者の夫妻が診療所を開いていた。
すぐに医者を派遣することはできないかもしれない。
だけど数年後には、と希望が持てれば、それまで頑張ることができると夫婦揃って涙を流していた。
昨日見た村の様子を話すと、その従業員も嬉しそうに顔を綻ばせる。辻馬車を乗り継いでもかなりの距離があるので、中々故郷には帰れないようだ。
昨日見送りに出てくれた村人の中に、この従業員の両親もいたのかもしれない。
彼が次に帰る時まで健やかに。
アリシアは心の中でそう祈った。
柵に囲われた放牧地で草を食む牛を眺めながら、牛の放牧地を通り過ぎる。
次にある羊の放牧地へ向かう途中で、アリシアは木の麓に集まる子どもたちを見つけた。
子どもたちは、皆同じ方向を向いて座っている。
その子どもたちと向かい合うように立つ青年が、木に取り付けた小さな黒板の様なものに何かを書いている。
その様子に興味を引かれたアリシアは、案内に立つ牧場主に、あれは何をしているのかと訊いてみた。
「ああ、あれは子どもたちに字を教えているのですよ」
「まあ!」
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この国で平民の子どもたちが字を学ぶというのは、当然のことではないのだ。
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