【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 4章

76 年始の風習

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「宴……ですか?」

「はい。お義姉様はご存知ないかもしれませんが、毎年元旦には母が宴を開くのです。父の側妃や側妃の子どもたちも集まります。お兄様も毎年出席されていますわ」

「カナリー!それは……っ」

 無理強いするな、がマルグリットの助言である。
 レイヴンは慌てて止めようとするが、言ってしまったものは取り消せない。
 
「アリシア。嫌なら別に行かなくて良い」

 レイヴンは固唾を飲んでアリシアの様子を窺った。


 元旦に正殿で開かれる宴。
 アリシアはそれについて妃教育で教えられていた。

 この国では年に1度、王妃や王太子妃が夫の側妃にドレスを贈る習慣がある。
 側妃たちはそのドレスを着てとしの初めに正妃が開く宴に出席するのだ。

 側妃たちは正妃の居住区と同じ敷地にある別の宮に住んでいる。そこを管轄しているのも正妃だ。
 正妃が管轄する宮に住む。それは正妃に住処を与えられたということである。実際には正妃の許可がなくても側妃を迎えられるが、形式としてそうなっているのだ。
 宮の管理費や生活費も正妃が握っている為、過去には正妃に嫌われた側妃に予算が与えられずに生活が困窮することもあったらしい。

 側妃たちに正妃がドレスを贈るのは、今後1年、衣類の面倒を見るということだ。そして宴に招くのは食事の面倒を見るという意思表示となる。
 
 正妃と側妃。
 どちらが上で、どちらが下なのか。
 お互いの立場を明確にするシステムだ。

 中には寵愛を笠に着て自分が正妃の役をしようとする側妃もいるらしい。近年ではノティスの母がそうだった。
 だけど幸いなことに、これまでそれを許した国王も王太子もいない。
 もしそれを許したら正妃の実家がどう出るか。きちんとそれを把握しているのだ。

「そういえば、カナリー殿下は来年嫁がれますから、次が最後の参加になるのですね」

 降嫁してしまえば宴には出られない。カナリーが出席する最後の宴である。
 アリシアも嫁ぐ前、最後の年末年始休暇で領地に戻った時は一族中から歓迎され、別れを惜しまれた。カナリーが誘ってくれるのなら、そこに華を添える気持ちで参加するのも悪くない。
 
「レイヴン様は毎年出席されているのですね」

 アリシアがそう言うと、レイヴンの顔が引き攣った。

 妃や王子たちは、良好な関係を保ちながらも互いに優劣を競っている。
 その中でレイヴンはマルグリットの子として代表となる立場だ。母の為に出席していてもおかしくないと思うのに、なぜそんな顔をするのだろうか。

 アリシアは考える。
 
 宴には当然国王も参加するのだ。
 参加して王妃の隣に座る。
 この宮の主と女主人を示す為に。

 レイヴンがマルグリット主催の宴に参加するのは次が最後になるかもしれない。
 宴は王妃と王太子妃がそれぞれ開くものだ。

 レイヴンに側妃がいないから、アリシアはこれまで無関心でいられた。
 だけど再来年はアリシアも宴を開いているかもしれない。
 その時の為に、どんな様子か知っておくのも重要だろう。

「そうですね。私も参加したいと思います」

「お義姉様!」

 カナリーの顔がパッと輝く。
 反対にレイヴンは不安そうな表情でアリシアを見ていた。
 


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

作者の独り言。

この話の後に番外編『今年の年越しは2人で…』が入ります。
9か月…。
長かった…
(2年目の年越しも迎えそうでビビってます。書くと超ネタバレになるよ←)



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