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第2部 4章
88 議会の動き①
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「それじゃあ今日は、この資料を整理して終わりにしましょうか」
「はい。マルグリット様」
アリシアはこの日、マルグリットの執務室を訪れていた。
月に数回一緒に職務を行い、少しずつ王妃の仕事を引き継いでいくのだ。
王妃の仕事は重要なものばかりで、身が引き締まる思いがする。
だけどマルグリットはいつも優しく教えてくれるので、アリシアはこの時間が苦痛ではなかった。
そして仕事が終われば一緒にお茶をするのも恒例になっている。
この日はもう他にするべき職務がなく、レイヴンが戻るまでに自室へ帰れば良いだけだ。資料整理を終えたアリシアは安心してテーブルに着いた。
一方その頃、レイヴンは今日の執務を早めに切り上げ、アリシアを迎えに向かっていた。
今日の仕事が完全に終わったわけではないが、始めてしまえば半日はかかるものしか残っていない。だから明日へまわすことに決めた。その辺の裁量を自分で決められるのが王太子の良いところである。
アリシアがマルグリットのところへ行っているのは知っているので、向かっているのはマルグリットの執務室だ。
因みにマルグリットの執務室は、執務棟ではなく「本殿」と呼ばれるところにある。国王の執務室や謁見室がある建物で、プライベートな時間を過ごす正殿とは渡り廊下で繋がっている。
その本殿の向こうから見知った人が近づいてくるのが見えて、レイヴンは礼を取った。
レイヴンが礼を取る人物はこの国に2人しかいない。
「ご機嫌麗しく、陛下」
まだ執務中の時間である。
息子ではなく、臣下として頭を下げたレイヴンに、国王は思いがけず柔和な笑顔を見せた。
「楽にして良い。今日は珍しく早く仕事を終えられたのだ。久しぶりにマルグリットのところを訪ねようと思ってな」
なんと、国王も仕事を終えたと言う。しかも行き先はレイヴンと同じ、マルグリットの執務室である。
早めに仕事を終えて向かう先が、側妃ではなく母のところだということが、レイヴンにも嬉しく感じられた。
「実は僕も母上のところへ向かう途中なのです。今日はアリシアが母上のところへ行っていますから」
「なんだ、そうか。では一緒に行こう」
こうしてレイヴンは、国王と一緒にマルグリットの執務室へ向かうことになった。
マルグリットの執務室では、マルグリットとアリシアがいつもの様にお茶を飲んでいた。
ただひとついつもと違うのは、人払いがされているということだ。
マルグリットが人払いを命じた時、アリシアもアリシアの侍女たちも驚いた。
だけどマルグリットの命令に逆らうことはできない。
エレノアたちは戸惑いながらも一礼して部屋を出て行った。
マルグリットが命じた人払いは、徹底したものだった。
通常であれば人払いされていても部屋の外に護衛の騎士が立っているし、侍女たちも続き部屋へ移動するだけである。だけどマルグリットは騎士も下がらせ、侍女たちは数部屋離れた控室まで戻らされた。
国王や王妃、それに王太子と王太子妃の部屋は便利な作りになっていて、1本の紐が下がっている。その紐を引っ張れば数部屋離れた侍女の控室で鈴が鳴るのだ。
国王たちは常に誰かが傍に控えている生活だが、本当に内密の話をしたい時もある。
そんな時は侍女を控室まで下がらせ、話が終わると紐を引っ張り、部屋へ戻るよう知らせるのだ。
そこまでしたのだから、余程重大な話なのだろう。
そう思うのに、良いあぐねているのかマルグリットは中々口を開かない。
アリシアは戸惑いながらも、マルグリットが話し始めるのを待っていた。
マルグリットの執務室の近くまで来た国王とレイヴンは、違和感に顔を見合わせた。
扉の前に立っているはずの騎士がいない。それにいつもであれば侍女の1人や2人は廊下を歩いているものだ。
それが誰もいないのである。
これは人払いをしているとしか考えられなかった。
だけど人払いをしてまで話すようなことがあるだろうか?
怪訝に思いながらも、2人は扉へ近づいた。
話を聞こうとしていたわけではない。
だけど聞こえてきた話に、2人は動けなくなってしまったのだ。
「はい。マルグリット様」
アリシアはこの日、マルグリットの執務室を訪れていた。
月に数回一緒に職務を行い、少しずつ王妃の仕事を引き継いでいくのだ。
王妃の仕事は重要なものばかりで、身が引き締まる思いがする。
だけどマルグリットはいつも優しく教えてくれるので、アリシアはこの時間が苦痛ではなかった。
そして仕事が終われば一緒にお茶をするのも恒例になっている。
この日はもう他にするべき職務がなく、レイヴンが戻るまでに自室へ帰れば良いだけだ。資料整理を終えたアリシアは安心してテーブルに着いた。
一方その頃、レイヴンは今日の執務を早めに切り上げ、アリシアを迎えに向かっていた。
今日の仕事が完全に終わったわけではないが、始めてしまえば半日はかかるものしか残っていない。だから明日へまわすことに決めた。その辺の裁量を自分で決められるのが王太子の良いところである。
アリシアがマルグリットのところへ行っているのは知っているので、向かっているのはマルグリットの執務室だ。
因みにマルグリットの執務室は、執務棟ではなく「本殿」と呼ばれるところにある。国王の執務室や謁見室がある建物で、プライベートな時間を過ごす正殿とは渡り廊下で繋がっている。
その本殿の向こうから見知った人が近づいてくるのが見えて、レイヴンは礼を取った。
レイヴンが礼を取る人物はこの国に2人しかいない。
「ご機嫌麗しく、陛下」
まだ執務中の時間である。
息子ではなく、臣下として頭を下げたレイヴンに、国王は思いがけず柔和な笑顔を見せた。
「楽にして良い。今日は珍しく早く仕事を終えられたのだ。久しぶりにマルグリットのところを訪ねようと思ってな」
なんと、国王も仕事を終えたと言う。しかも行き先はレイヴンと同じ、マルグリットの執務室である。
早めに仕事を終えて向かう先が、側妃ではなく母のところだということが、レイヴンにも嬉しく感じられた。
「実は僕も母上のところへ向かう途中なのです。今日はアリシアが母上のところへ行っていますから」
「なんだ、そうか。では一緒に行こう」
こうしてレイヴンは、国王と一緒にマルグリットの執務室へ向かうことになった。
マルグリットの執務室では、マルグリットとアリシアがいつもの様にお茶を飲んでいた。
ただひとついつもと違うのは、人払いがされているということだ。
マルグリットが人払いを命じた時、アリシアもアリシアの侍女たちも驚いた。
だけどマルグリットの命令に逆らうことはできない。
エレノアたちは戸惑いながらも一礼して部屋を出て行った。
マルグリットが命じた人払いは、徹底したものだった。
通常であれば人払いされていても部屋の外に護衛の騎士が立っているし、侍女たちも続き部屋へ移動するだけである。だけどマルグリットは騎士も下がらせ、侍女たちは数部屋離れた控室まで戻らされた。
国王や王妃、それに王太子と王太子妃の部屋は便利な作りになっていて、1本の紐が下がっている。その紐を引っ張れば数部屋離れた侍女の控室で鈴が鳴るのだ。
国王たちは常に誰かが傍に控えている生活だが、本当に内密の話をしたい時もある。
そんな時は侍女を控室まで下がらせ、話が終わると紐を引っ張り、部屋へ戻るよう知らせるのだ。
そこまでしたのだから、余程重大な話なのだろう。
そう思うのに、良いあぐねているのかマルグリットは中々口を開かない。
アリシアは戸惑いながらも、マルグリットが話し始めるのを待っていた。
マルグリットの執務室の近くまで来た国王とレイヴンは、違和感に顔を見合わせた。
扉の前に立っているはずの騎士がいない。それにいつもであれば侍女の1人や2人は廊下を歩いているものだ。
それが誰もいないのである。
これは人払いをしているとしか考えられなかった。
だけど人払いをしてまで話すようなことがあるだろうか?
怪訝に思いながらも、2人は扉へ近づいた。
話を聞こうとしていたわけではない。
だけど聞こえてきた話に、2人は動けなくなってしまったのだ。
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