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第2部 4章
99 話し合いが必要なのは①
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「陛下。レイヴン様……」
アリシアが呆然と呟く。
なぜ2人がここにいるのだろうか。
混乱したままその姿を見つめていると、2人はゆっくりとこちらへ近づいて来た。
アリシアがハッとして立ち上がろうとする。それを国王が手振りで止めた。
座り直したアリシアが動揺したまま視線を彷徨わせると、レイヴンの後ろに誰もいない扉が見える。
人払いをしていたのが仇になってしまったのだ。
誰も控えていなかったから、国王たちの訪問を知らせてくれる者がいなかった。
どこから聞いていたのかしら。
アリシアは恐る恐るレイヴンの顔を窺う。
マルグリットもそうだけれど、アリシアも聞かれたくない話をしていた。
レイヴンは辛そうな顔のままアリシアを見つめている。
「訪問に気がつかず、申し訳ありませんでした。すぐにお茶の用意をさせますわ」
緊迫した空気の中、ふいにマルグリットが腰を上げた。
いつもと同じ朗らかな表情で、侍女を控室から呼び寄せようとする。
いつも通りに振舞うことで、何事もなかったことにしようとしている。
そうしてこれまでと同じ日常に戻ろうとしているのだ。
それが平和を保つ方法なのだと、アリシアも思ったのだけれど。
「お茶は必要ない。それよりちゃんと話をしよう。話を、聞いてくれ」
どうやら国王は違ったようだ。
侍女を呼ぼうと立ち上がったマルグリットを止め、その手を握る。
真剣な表情でマルグリットを見つめていた。
国王の目にはマルグリットしか映っていない。
ここにアリシアやレイヴンがいることさえ忘れてしまったようだ。
戸惑うアリシアの肩にレイヴンが触れた。
「父上と母上は、お2人で話をした方が良いと思う。僕たちは帰ろう」
「え?ですが……」
2人きりにして大丈夫なのだろうか。
躊躇うアリシアに、マルグリットも頷いた。
「そうしなさい。あなたたちも話し合うことがあるでしょう。お互いに思っていることをちゃんと伝えるのよ」
「っ!!」
「はい。……ご心配をお掛けして申し訳ありません」
レイヴンが頭を下げる。
アリシアはアリシアで、レイヴンと話し合わなければいけないことがある。
そう言われてしまえば、いつまでもここに留まることはできない。
アリシアは躊躇いながらも立ち上がった。
一礼して退室する2人を見送ったマルグリットは、国王に席を薦める。
国王はマルグリットの手を握ったまま、マルグリットのすぐ隣に腰を下ろした。
アリシアたちに退室するよう促したマルグリットだが、この後何を話せば良いのかわからない。
何も聞かなかったことにしれくれれば良いのに、国王は話がしたいと言う。
側妃にのめり込んだ時の背景を知られたくなかったのは容易に想像がつく。
隠された気持ちに気付いていたことを、謝れば良いのだろうか。
逡巡したまま何も言うことができないマルグリットに、国王が重い口を開いた。
「先程告げた言葉は本心だ、マルグリット。其方を恨んだことなど一度もない。例え何があったとしても、結婚するのは其方だと、ずっと思っていた。サンドラ殿を傍に迎えようと思ったことは一度もない。サンドラ殿へ向けた気持ちは………、一時のことだと思っていた。思い込もうと、していたのだ」
それが其方にそんな思いをさせていたなんて……と、国王は項垂れた。
アリシアが呆然と呟く。
なぜ2人がここにいるのだろうか。
混乱したままその姿を見つめていると、2人はゆっくりとこちらへ近づいて来た。
アリシアがハッとして立ち上がろうとする。それを国王が手振りで止めた。
座り直したアリシアが動揺したまま視線を彷徨わせると、レイヴンの後ろに誰もいない扉が見える。
人払いをしていたのが仇になってしまったのだ。
誰も控えていなかったから、国王たちの訪問を知らせてくれる者がいなかった。
どこから聞いていたのかしら。
アリシアは恐る恐るレイヴンの顔を窺う。
マルグリットもそうだけれど、アリシアも聞かれたくない話をしていた。
レイヴンは辛そうな顔のままアリシアを見つめている。
「訪問に気がつかず、申し訳ありませんでした。すぐにお茶の用意をさせますわ」
緊迫した空気の中、ふいにマルグリットが腰を上げた。
いつもと同じ朗らかな表情で、侍女を控室から呼び寄せようとする。
いつも通りに振舞うことで、何事もなかったことにしようとしている。
そうしてこれまでと同じ日常に戻ろうとしているのだ。
それが平和を保つ方法なのだと、アリシアも思ったのだけれど。
「お茶は必要ない。それよりちゃんと話をしよう。話を、聞いてくれ」
どうやら国王は違ったようだ。
侍女を呼ぼうと立ち上がったマルグリットを止め、その手を握る。
真剣な表情でマルグリットを見つめていた。
国王の目にはマルグリットしか映っていない。
ここにアリシアやレイヴンがいることさえ忘れてしまったようだ。
戸惑うアリシアの肩にレイヴンが触れた。
「父上と母上は、お2人で話をした方が良いと思う。僕たちは帰ろう」
「え?ですが……」
2人きりにして大丈夫なのだろうか。
躊躇うアリシアに、マルグリットも頷いた。
「そうしなさい。あなたたちも話し合うことがあるでしょう。お互いに思っていることをちゃんと伝えるのよ」
「っ!!」
「はい。……ご心配をお掛けして申し訳ありません」
レイヴンが頭を下げる。
アリシアはアリシアで、レイヴンと話し合わなければいけないことがある。
そう言われてしまえば、いつまでもここに留まることはできない。
アリシアは躊躇いながらも立ち上がった。
一礼して退室する2人を見送ったマルグリットは、国王に席を薦める。
国王はマルグリットの手を握ったまま、マルグリットのすぐ隣に腰を下ろした。
アリシアたちに退室するよう促したマルグリットだが、この後何を話せば良いのかわからない。
何も聞かなかったことにしれくれれば良いのに、国王は話がしたいと言う。
側妃にのめり込んだ時の背景を知られたくなかったのは容易に想像がつく。
隠された気持ちに気付いていたことを、謝れば良いのだろうか。
逡巡したまま何も言うことができないマルグリットに、国王が重い口を開いた。
「先程告げた言葉は本心だ、マルグリット。其方を恨んだことなど一度もない。例え何があったとしても、結婚するのは其方だと、ずっと思っていた。サンドラ殿を傍に迎えようと思ったことは一度もない。サンドラ殿へ向けた気持ちは………、一時のことだと思っていた。思い込もうと、していたのだ」
それが其方にそんな思いをさせていたなんて……と、国王は項垂れた。
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